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アスリートとして結果を出すために必要なメンタルとは?

職業柄、よく学生に聞かれる事がある。

勝つためのメンタルを教えてくださいと。

自分は大学から水上スキーというスポーツを始め、現在も現役選手として活動している。水上スキーと聞くと小型ボートのジェットスキーやウェークボードとよく間違えられる事があるが、水上スキーとはいわば水の上でやるスキー(雪山)といえばすぐ分かると思う。しかしレジャーで夏にやる水上スキーとは訳が違って、自分たちがやっているのは競技の水上スキーだ。

競技水上スキーには3種目ある。スラローム、トリック、ジャンプ。

簡単に説明すると、スラロームは雪山のアルペンスキーに非常に近い。フラッグを左右交互にターンして速さを競うように、水上に浮かんでいるブイを左右交互にターンしてその獲得ブイ数を競う。トリックはフィギュアスケートと似ている。水上で回転系の技を行い、その技の難易度ごとに割り振られた得点の総合計点を競う。ジャンプはノーマルヒル・ラージヒルで飛距離を競うように、水上に浮かばせてあるジャンプ台へ加速して侵入し、着水点までの飛距離を競う。

水上スキーは日本だとかなりマイナースポーツの部類に入るが、自分が入部していた大学の部活や全日本大会の歴史は意外にも長く、60年以上続いている。

そんな水上スキーという珍しいスポーツをしている訳だが、学生時代からそれなりの情熱を注いで今まで続けてきた。

水上スキーはその名の通り水上で競技を行う訳だが、そこにこのスポーツの難しさが隠れている。一般の人からしたら、水は水。と思うかもしれないが、水上スキーヤーからしたら水ごとに特徴がある。硬い、柔らかい、走る、走らないなど。どれも滑る場所の環境によって、水の感触が大きく変化するのである。泥水なら柔らかい。水温が低かったら硬い。水温が高いと走らない。など、非常に色々な要素が絡み合う事で、滑る時に感じる水の感触は大きく変化する。

大会で競技を行う時には会場の水の特徴を把握しつつ、その時の風向きや牽引しているボートの種類によっても、一瞬のタイミングや姿勢、力の入れ具合を調整しながら競技を行わなければならない。それにボートに引っ張られながら滑るため、スキーヤーは瞬間的に80km/hに近いスピードになる。そんな中でこれだけのことを考え判断しながら滑るので、水上スキーは非常に面白く難しい。

さて、随分と前置きが長くなってしまった。

水上スキーの事を少し知ってもらったところで、本題に入りたい。

自分自身が水上スキーヤーとしてのアスリートであるので、もちろん大会では優勝を目標としている。水上スキーは牽引するボートに対して、その後ろを1人のスキーヤーが引っ張られ演技するので、個人スポーツにあたる。競技が始まれば、チームスポーツのようにサポートしてくれる仲間はいない。それに競技のルール上、ビギナーでもプロでも競技中に一度転んでしまったらその時点で競技終了してしまう。一発勝負だからこそ、全てのスキーヤーが同じように緊張する。ただ、そのプレッシャーを押しのけて成績を出せる人と、出せない人がいる。

自分が大会に出場した学生の演技や話を聞いていて、ある傾向があることに気がついた事がある。それは、”大会だから”と理由づけて普段とは違う事を意識して大会に臨んでいた事だ。スポーツに限らず、常に優勝や上位に入る選手というのは、どの大会でも自身の持つ実力を出し切っていると感じる。試合で火事場の馬鹿力でその一瞬に実力以上の力や成績が出るとは思わないし、出たとしてもそれは非常に稀な事である。その為、勝てる人というのは毎回100%に限りなく実力を本番で出せる人だと自分は思っている。もちろんスポーツの種類や、個人スポーツ、チームスポーツによって差はあるが、少なくとも水上スキーではそうだと思う。

よく聞く言葉で、練習は本番のように、本番は練習のようにと言ったりするが、本当にその通りだと思う。水上スキーで出しきれなかった選手の話を聞くと、普段とは違った事を意識してしまったという声をよく聞く。普段と違う事を意識してしまっては、普段の実力が出し切れないという事になってしまう。それにそれは競技中だけではなく、試合前日から影響してくると自分は思う。

試合前日に願掛けで"勝つ”ために普段食べないカツ丼を食べたりする人もいるかもしれない。しかし、普段の食生活とは違ったものを試合の前にわざわざ食べるということは、その時点から普段の自分とは違う体の調子やリズム、反応を起こしてしまうのではないだろうか。それに大会だからという理由づけて普段より入念にストレッチしたり、ウォーミングアップしたりするというのも普段のリズムを崩す要因になりかねない。

100%に限りなく近い実力を出すためには、試合当日も無意識に普段の自分を意識し、普段通りで試合に臨むことで実力を出し切りやすくなると自分は思う。意識的に無意識で普段通りの自分で臨む。パッとすぐ出来るものではないが、周りの環境に影響されず試合に臨む事ができれば実力を出せ、結果成績もついてくるはずだ。

メンタルの作り方は人それぞれ違うので、自分のやり方をやれば成績を出せるわけではないと思うし、ネットにある有名人が実践しているものも鵜呑みにしてはいけないと思う。自分の普段のルーティンだったり、大会時の気持ちをよく振り返り、自分に合ったメンタルの整え方を見つけるべきだと思う。

しかしどれも目的は100%に限りなく近い実力を出すためのメンタル作りであって、そうすれば自然と勝ちに直結すると自分は思う。


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