見出し画像

「努力は報われる」は正しい?間違っている?

どもども、椛です。

今回は数学の「命題と論理」の範囲を扱い、題名にあるような世の中に浸透している名言が正しいかどうかを考えていきます。

これから「命題と論理」の説明をしますが、読まなくてもいいという方は【名言に応用してみよう】まで飛ばしてもらって構いません。

命題とは

命題とは普遍的に正しいか間違っているか判断できる文章のことです。

そして正しい文章を「真の命題」、間違っている文章を「偽の命題」と言います。

例えば

①富士山は日本一高い山だ。

これは「真の命題」です。

②富士山は世界一高い山だ。

これは「偽の命題」です。

③富士山は高い山だ。

これは人に依りますね。つまり普遍的な判断ができないので命題ではありません。

さて、少し演習してみましょう。

以下の3つの文のうち、命題を1つ選んでみましょう。

a.1日が24時間なのは短すぎる。
b.円と楕円は似ている。
c.無理数には分数で書けるものがある。

分かりましたか?

正解はcです。a,bは普遍的に正しいか間違っているか判断できません。cは判断できて、今回は「偽の命題」ですね。

a,bは共に「短すぎる」「似ている」という曖昧な言葉がありますね。これが命題でない目印です。

cは無理数の中で分数で書けるものは存在しないので、間違っていると判断でき、「偽の命題」となります。

数学での命題の書き方

次は、上で扱った「命題」の書き方を整えていきます。

先程の①〜③の文を「〜ならば、〜である。」と書き換えてみましょう。(全ての文が書き換えられるとは限りません。)

すると、

①富士山ならば、日本一高い山である。
②富士山ならば、世界一高い山である。
③富士山ならば高い山である。

となります。

相変わらず③は命題ではないですね。

今、上で書き換えられた文は「AならばBである。」という形ですよね。

これを数学では

A → B

と書きます。

つまり、

①富士山 → 日本一高い山
②富士山 → 世界一高い山
③富士山 → 高い山

となります。

命題の逆・裏・対偶

次に命題の「逆」「裏」「対偶」というものを考えていきましょう。

先に定義を書いておきます。

命題「A → B」において、

逆の命題は「B → A」

裏の命題は「Aでない → Bでない」
(または「﹁A → ﹁B」)
※「﹁」は命題の"否定"を表します。

対偶の命題は「Bでない → Aでない」
(または「﹁B → ﹁A」)

となります。

①の文で考えていきましょう。

①の文の逆は
「日本一高い山 → 富士山」

①の文の裏は
「富士山でない → 日本一高い山でない」

①の文の対偶は
「日本一高い山でない → 富士山でない」

となります。

このとき、①の文と①の対偶の真偽は一致するという性質があります。
※①の文と①の逆(または裏)の真偽は一致するとは限りません。


名言に応用してみよう

さて、以上のことを踏まえて、題名にある「努力は報われる」について考えてみましょう。

これを分かりやすい命題に書き直すと

「努力をする → 良い結果が出る(受験で志望校に合格する。試合に勝つ。など。)」

これは一見正しく見えるかもしれません。しかし、本当に正しいかどうか、判断が難しいと思います。

そこで対偶をとってみましょう。元の命題と命題の対偶は真偽が一致するという性質があるので、対偶をとってみると、

「良い結果が出ない → 努力していない」

これは間違っているでしょうか。

受験の話にするときっと分かりやすいと思うので受験で例えると、志望校に合格しなかった人は努力していない、ということになります。

そんなことはありません。努力した人たちの中で、募集人数分が選び抜かれているのです。

選ばれなかった人の努力が足りなかったのだという意見があるかもしれませんが、それは違うと思います。

人は好きなことはすぐに覚えますが、嫌いなことはあまり覚えられません。そのため、例えば数学が好きな人の中には、授業を聞くだけで問題の解き方を習得する人もいます。しかし、苦手な人は授業後に問題演習を通して段々と問題が解けるようになってくるわけです。

つまり、

「良い結果が出ない → 努力していない」

は間違っていると言えるわけです。そして、対偶が偽(間違っている)なので、元々の、

「努力は報われる」は間違っている。

という結論が出せます。

「数学的にはね。」という人がいるかもしれません。しかし、学問は日常生活と矛盾が生じては学問の意味がありません。「数学的に正しい」ということは「日常生活(人間社会)的に正しい」ということです。

最後に

この「命題と論理」の範囲は日常でもよく使えると思います。皆さんも是非、日常生活で利用してみてください。

例えば、先程投稿されたRickさんの記事の「行けたら行く」について考えてみて、「行けたら行く」の真偽を考えるのもいいと思います。


#日常で使える勉強

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?