コロナ脳を増産するメディアの闇

 ここ数日「感染者数」の記録更新がマスコミやネットを賑わわせている。しかし実際にどれだけの問題が生じるのかについてはあまり報じられていない印象で、しかも感染していない「大丈夫な」事例について話題になることはほとんどない。こうした状況を見るに、ネットによる情報化社会において多くのことがわかるようになったのは錯覚で、むしろ本質が見失われているように思っている。


「感染者数」の問題


 11月下旬に入り、日本国内における「感染者数」が最多となったという報道が連日続いている。確かにこれは事実である。しかし本当に考えるべきなのは、「増えた」ないし「最多」という話ではなく、現在の感染状況が具体的にどういう問題を引き起こすかということではなかろうか。メディアで言われているのは、欧米の現状を踏まえて、日本でも同様の医療崩壊や社会インフラの混乱が生じるかもしれないという「予想」であり、正確な現状把握はないがしろにされているような印象だ。
 もちろん将来的なことは誰にもわからないが、欧米が最初にロックダウンを実施した時、かの地では1日万単位の感染者が出ていた。日本も緊急事態宣言に踏み切ったけれども、感染者数はせいぜい千人単位であった。直近では2~3千人の感染者が出ているようだが、感染者数だけで見ると、欧米もかつてのいわゆる第1波よりも増大している。すなわち、少なくとも欧米の状況と比べれば全く危機的状況とは言えないのである。また、特にヨーロッパでは感染者自体は増えているものの、死亡者数は抑えられていて、日本は桁違いに少ない。冬場にインフルエンザや風邪を含めた感染症全体が増えるのは当然であり、例年と比べて危険であると報道するのは全く筋違いとしか思えない。


「夜の街」や「GoToトラベル」は本当に悪なのか?

 緊急事態宣言により、多くの店が休業に追い込まれた。夏場や最近も「感染拡大」によって、特に飲み屋や旅行が批判される風潮が根強い。キャバクラやホストクラブにおけるクラスタ感染や、帰省による地方への感染拡大などが殊更に非難されることも多い。しかしここで注意しなければならないのは、「感染した」事例だけでなく、「感染しなかった」事例である。
 例えば「GoToトラベル」利用者の感染は、全体で1~2割と言われている。飲み屋に関しては恐らくデータを出してはいないと思うが、都内の居酒屋で感染が起こった割合はどれほどなのだろうか。新型ウイルスの報道で一番問題なのは、「感染者数」という絶対的な数字によって危機を煽る一方で、「感染率」といった相対的な統計によって全体的な状況を見せないことではなかろうか。


9年前の悲劇:放射能の風評被害

 危機を煽る報道で思い出されるのは、2011年の福島原発の事故である。連日のように「放射線量」が報道されたが、その数値がどれほど危険なのかについては結局はっきりしなかった。確かに当時の原発周辺は線量が著しく上がったが、首都圏での放射線量は危機レヴェルに達していなかった。その後一部地域を除けば福島県内でも世界標準で全く問題ない数値だったにもかかわらず、メディアは安全については報じず、原発の危険性を過剰に強調したように思われる。これによって何も関係のない人々が言わば洗脳され、言い方は悪いが過剰に恐れる「放射脳」とまでなってしまった。
 つい先日、宮城県の女川原発の再稼働が容認されるという話題が出てきた。普段はテレビを見ないのだがたまたまNHKのニュースを見ていたら、南相馬の住民に再稼働は怖くないかとインタビューする場面があった。当然現地では原発事故を経験したので、恐怖感は強く残っているはずである。しかし福島原発と女川原発をごちゃ混ぜにするのはいかがであろうか。女川は震災当時津波の大被害を受けた場所であるが、原発事故は起こらなかった。福島原発は、電源を地下に設置していたといった設計上の欠陥があったわけであるが、全ての原発が危険であるという議論は全く持って無根拠である。福島の被災者を利用して印象操作とも言えるような報道をするのは、被災者に対する冒涜でしかない。

広いようで狭いネット社会の視野

 近年ではマスメディアよりもSNSが情報拡散の役割を担っている。いずれにせよメディア(媒体)として多くの情報を伝えているわけであるが、問題なのは情報過多ではないかと思う。メディアが発達する前は、噂話をはじめとした「身の回りの」情報が重要であった。もちろんそこには利害関係が絡むなど、客観性に欠けるものが多かったとは思う。しかし今回のような感染症や、少し前の放射能といった自然災害に関しては、身の回りの「肌感覚」が大事ではなかろうか。毎年のインフルエンザでは、恐らくほとんどの人が、自分ないし知人・友人や同僚、家族の中でかかる人がいたと思う。今回のウイルスは、自分の周りで流行っているという話を聞かない方も多いのではないか。放射能による障害などは、ついぞ聞いたことがない。
 結局メディアが伝えるのは自分から遠く離れた場所の話がほとんどなのであって、関わる必要のない話題ばかりである。自分と全く関わりがないのに過度に恐怖を抱く「コロナ脳」は、現代社会における病理と言っていい。最後に持論となるが、オンライン時代だからこそ、オフラインないし生身で触れる情報に着目すべきだと切に思う。

 最近ようやく週刊新潮でまともな報道が出ていた。微かな希望を抱きながら、前を向いて生きてゆきたい。


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