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ガジェット:10年前のAMD製リテールCPUクーラーを、サイズ『虎徹 Mark Ⅱ』に換装を試みて自爆した男の記録

よく来たな。おれはslaughtercult、10年前の自作PCで粘り続ける貧乏人……いや倹約家と敢えて自称しよう。唐突に聞くが、お前はPCを持っているか。スマホやタブレットONLY、或いは常に最新型のPCを持っていなければ気が済まない、流行に敏感な人間であれば、今回のおれの話は聞く必要がない。

お前がもし数年以上前のPCを持っていて……買い替えるか部品交換の延命か悩んでいるのであれば、素直に買い替えた方がいい、とおれは言っておく。

お前がもし数年以上前のPC……それもAMD製のCPUで、かつCPUクーラーの脱着・交換を検討しているならば、作業には細心の注意を払うべきだ。

おれが直面し、これからこの記事で記す話は、以前より多くの数え切れないPC自作者が直面し、辛酸を味わってきた普遍的なケーススタディである。


1.CPUクーラー交換・現状確認

仕事を半ドンで上がり、喜び勇んで買った社外製CPUクーラー。
この行動が悲劇の始まりであることを、おれはまだ知る由もない……。


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先ずは現状確認だ。CPUはAMD製『PhenomⅡX6 1090T Black Edition』。

定格 3.2GHz、ブースト作動時 3.6GHzまでオーバークロックするが、負荷を最高にかけた場合のクロック上限は 3.2GHzに制限される。このCPUは手動でオーバークロック(※故障しても自己責任!)した場合、4.0~4.1GHz程度の力を発揮することができる。先達のオーバークロッカーたちの情報では。

BIOS画面の上部『Clock Ratio』は通常『Auto』であるが、おれは安全装置を解除して、通常のブースト上限である 3.6GHzまでオーバークロックした。
全開で回した時は 3.2GHzに抑えられるクロックの天井値を、3.6GHzまでに引き上げたわけだ。これで発熱と引き換えに、CPUの処理性能が向上する。

4.0GHzまで上げなかった理由は、余りにも激しい発熱によって、CPU付属のクーラー(いわゆるリテールクーラー)では排熱が追い付かなかったから。これが10年選手のCPUクーラーを社外品に交換したくなった理由である。

X6 1090Tは物理 6コア、論理 6コアでハイパースレッディング無しの構成。TDP値は125Wのぶっちゃけ大”電気”喰らいだ。電子機器の食った電気が熱に変換されるのは周知の事実で、ゆえに電気を食う機械は発熱量も大きい。

BIOS画面の下部『CPU Voltage Control』を見てほしい。最下部の水色文字で記された『Normal CPU Vcore』に付記された1.4750Vというのが通常運転で要求する電圧だ。おれはこの電圧を、意図的に1.3500Vまで下げている。

CPU電圧をAuto設定のままでオーバークロックすると、電圧は1.5Vを軽々と超えて1.55Vくらいまで上がる。このCPUは発熱を 67℃まで許容するもののリテールクーラー装着時は、3.6GHzですら余裕で 67℃以上に発熱する。

それがCPU電圧の上限をを1.35Vにまで制限した結果、発熱が覿面に抑えられリテールクーラーでも冷やしきれる程度に落ち着いたというわけだ。

以下にCPU-Zでの全コア負荷テスト(負荷100%・10分間)を載せておく。

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テスト前のCPU温度(アイドル時)は24度。10分間負荷をかけると……。

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3.6GHzで全開×10分。6コアとも温度は47℃安定。実際にはマザーボードの観測点 2か所で、それぞれ56℃と57℃を記録しているので、部分的に排熱が追い付いていないが、100%負荷を続行しない限り大きな問題は無い。


2.CPUクーラー交換・PC分解

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というわけで、分解してCPUクーラーを取り外す。PCを分解するというのは骨が折れる作業であり、ぶっちゃけ余り気が進まないわけだが、排熱問題を解決せねば、基板ごとお釈迦になりかねないので手抜きはできない。


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全部外す。電源コネクタからメモリからPCIスロットのグラボから、一切合切全ての配線を外す。この時点でおれは、このCPUクーラーを無事に外せると何の疑いもなく信じ込んでいた。それが最後の姿となることも知らずに。


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10年選手のリテールクーラーだ。ファンにもフィンにも埃が付着し変色して非常に汚い。この10年、掃除らしい掃除といえば、ブローガンの圧縮空気を基盤全体に吹き付ける程度だったし、おれがこいつと同じ時を過ごしていた大半の時間は、同じ部屋でタバコを吸っていたため、汚れも宜なるかなだ。


やりました。CPUクーラーの掛け金を外す時から、違和感のは既にあった。おれは手から伝わる兆候を無視し、強引にクーラーを外した。するとCPUの固定レバーを跳ね除け、クーラーにCPUがスッポンしてついてきたわけだ。

この状況を例えるならアレと同じだな、アレが痙攣してナニが抜けなくなる例の症状(超下ネタ)だ。強引に外そうとすると危険なのも同様である。


死期は近い。ボトルのメチルアルコール(有毒)。ボウルに全部ぶちまけてCPUクーラーごとドブ漬けにして、グリスを溶かして剥がそうかと考えたが流石に面倒なので止めた。室内で有毒蒸気をバラまく勇気もなかったしな。


やりました。インターネッツの未確認情報に飛びつき、ヒートスプレッダとCPUの狭間をこじって殻割りした結果、殻と身の間のグリスも固着していてスッポン症状を起こしており……CPU本体がベロッと逝ってDEAD END

嗚呼……CPUをオーバークロックしようなどと思わなければ。嗚呼……CPUがスッポンした時点で、せめて一晩待って冷静になってから作業しておけば。何もかも後悔してももう遅い。死んだX6 1090Tはもう帰ってこないのだ。

よく見ておけ。こうしてトライ&エラーで金を無駄にするのが自作PCだ。


で、記事のヘッダー画像に戻る。CPUのデザインは左右ほぼ同じだが、左は後年に発売された、1090Tより更に強力な物だ。耐熱温度も67℃から71まで向上している。この爆熱CPUにとっては気休め程度のライン変更だが。


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虎徹 MarkⅡSCKTT-2000。社外製サイドフロー型クーラーに換装し、CPUを再び取り付けだ。4,158円で済むお手軽工事は、CPUの代金7,250円を含めて11,408円となって、既に最近の良コスパCPUと同程度の金額になっている。


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取り付けた。この時点ではファンの向きが前後逆で、メモリスロットの方に風を吹き付けていたので、後で放熱フィンに吹くよう向きを変えている。

サラッと登場したドライバー『VESSEL 2200 P.2×100』は、ラチェット軸を採用しており、柄を握ったまま締め/緩め作業が行える優れ物の新兵器だ。軸の黄色いリングは、左右に動かすことでラチェットの固定を締め/緩めと逆転させることができる。気づいたのは記事を書いている今の時点でだが。値段は1,000円を少し超える程度だが、このドライバーは滅茶苦茶有能なのでハッキリ言って速攻で元が取れる。ねじ回しのラチェット機能はいいぞ。


マザーボードを付けなおし、配線も頑張ってやり直し。これを直ぐ外す時が来るなどと、この時のおれは知る由もなかった。ともかく、起動確認だ。


3.CPUクーラー交換・効果観測

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デフォルトではこんな感じだ。定格 3.3GHz……付け替える前の1090Tよりも見た目クロック周波数が下がっているが、あれはオーバークロックした上の数値なので、通常値は 3.2GHzから 3.3GHzと 0.1GHz強くなっているのだ。


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で、色々試したが、これが現状のおれの限界と言える。これ以上クロックを上げたら、電圧を下げようがAutoで運を天に任せようが、起動・再起動した瞬間にブツリと電源が落ちる音がして、かなり危険な感じだ。BIOS画面へと入る前に、『オーバークロックしてるから正常に起動できないよ、クロック周波数を下げてね』と警告表示が出るし、起動しても挙動が安定しない。

挙動が安定しない? どうせプログラムが途中で強制終了する程度でしょ?

そう言うお前は考えが甘い。何度もオーバークロックを試験した中、軽度の障害では警告のダイアログボックスと共に、ベンチマークするプログラムが強制終了する程度で済んだが、重度の障害ではPC自体が闇落ちしてしまう。

まあそういうクソ面倒臭いタッチアップを重ねた末に、当初目標としていたクロック 4.0GHz越えには遠く及ばず、ブースト上限の 3.7GHzで妥協した。電圧は1.4Vまで下げて安定したが、1090Tの1.35Vと比べて0.05V増えた。

……フムン。交換前が 3.6GHzで、交換後が 3.7GHzなので、有意義な性能差は得られていない。寧ろ治すために銭を無駄にした、という見方まである。


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ともかく、まずは10分間の負荷テストで発熱量の安全を確認だ。テスト前はCPU温度が22℃安定。交換前より 0.1GHzクロックが上がっているが、温度は寧ろ下がっている。CPUクーラーを虎徹に変えた効果が早くも出ているか。


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10分間負荷をかけた結果は、44℃安定。CPU自体の温度も然ることながら、マザーボードの温度も49℃と50℃……56℃&57℃から 7℃も下がっている。この点に関しては、確実にクーラー交換の効果が出ていると言えるだろう。


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冷えの良さに気をよくしたおれは、定番ベンチマーク『Cinebench R20』を実行して……その信じ難い数値に愕然とした。1100Tに交換した後の数値は、10番(オーバークロック時)と13番(通常時)に表示されたスコアだ。

は?(威圧)

終 了 。


4.怒りの電源&ケースファン交換

こうなったらもう自棄だ。明日やろうは馬鹿野郎。新しいPC部品を買っても掛け替え可能な基幹部品は、この機に乗じて新調してやろうという魂胆だ。

前々から欲しかったニプロン電源・定格 822W/ピーク時 1,000WのATX電源『みなもっとさん』。値段は実に、一般的な外国製電源の3倍以上である。


グラフィックボードが再起動時に愚図って、PC自体の起動すらをも阻害する壮大な症状が起こっていた時分に、『電源が壊れているんじゃないの?』とグラボの会社のサポート部門から指摘を受けてたわけですな。だから今回のCPUが本来の性能を発揮できてない疑惑も、おれは電源を疑ったわけだ。


ケースファンは壊れてはいなかったが、騒音がデカすぎて集中力を阻害するレベルだったので、この機に一新することに。ノクチュアのCPUクーラーは高いが、ケースファンは1基2,000円程度だったので、これにした。サイズのファンなどより格安だったのだが、余り評価が芳しくなかったのもある。


んで、またバラス。何ならマザーボードまで引っぺがしてな。容積に自信のATXケースの割に、取り付け部上端と上面ファンとの間隙に余裕がないため鬱陶しくなってマザボを外して。ファンは新しいケースに流用が効くので、新調しても問題ないと判断。つか騒音が耳に与える影響は馬鹿にならん。


今時の電源とゆーのは、ハーネス(部品と電源筐体を繋ぐケーブルだな)が取り外し式になっていて素晴らしい。10年前の安物・玄人志向は取り外しができなかったから、余分なハーネスがケース内で余って大変だったのだ。


どーにかこーにか、だ。2つ目の12cmファンは、前面部のHDDマウンタから側面パネルへと移設した。外面が掃気、内面が排気である。周辺に装着したグラボなんかに、外気を吸い込んでぶつける感じだな。CPUクーラーの上と左に配した14cmと12cmは、どちらもケース外へ排気するようにしている。


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よせばいいのにクロックアップ。とは言え、0.1GHz刻んで 3.8GHzにしたに留まる。50,000円の追加出費にしちゃあしょぼい上昇幅だが、仕方ない。


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マルチスコア 1,060が、電源交換&クロックアップで 1,200弱まで上がった。電源交換は一先ずいい影響を与えたと言えるだろう。ファンの回転も以前と比較して非常に静かになった。これ以上の静けさを求めるなら、密閉型とかファンレスとかそういうアプローチが必要になるが、おれには必要ない。


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シングルスコアは相変わらずしょぼい。まあ1090Tからの性能向上とはいえたかが 0.1GHzなので、劇的な変化を期待する方が同化しているかも知れぬ。


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MPレシオはこの程度。まあ、10年前でさえAMD PhenomⅡX6というCPUはintel Core i7に比べてコスパが良いという評価であり、別に取り立てて性能が高いというわけではなかった(加えて電気も大食いだ)。これで、新PCへの以降がもう暫く遅らせられたら……とおれは期待を込めている。

一応、今回のパーツ換装にはいくつかルールがあって、その最たるルールが『メモリ(DRAM)は交換しない』ことだった。このマザーボードに着けたメモリは第3世代のDRAMで、現時点では互換性の無い第4世代が主流であることを考えると、次世代に繰り越せないメモリを買うのは悪手なのだ。

いっそマザーボード周りも取り替えてしまえば……となると、丸まる一個のPCを作り変えてしまう大作業となる。OSのWindowsはDSP版であるがゆえにWindowsも買い直さにゃならん。ちな手持ちは7だ。10年前だからな……。

良かれと思ってクーラーを交換しようと思い立ち、些細な過ちの積み重ねでCPUに止めを刺してしまうというハプニングは想定外で、マジで焦ったが。

こういうのも、年一とか頻繁なスパンで日頃からちゃんと手入れしていれば避けられたトラブルだったはずなので、今後は気を付けていきたいと思う。グリスの固着でCPUオシャカにするとかマジしょーも無さ過ぎるかんな……。


てなわけで。パルプアドベントカレンダー2020の執筆を優先して、すっかり後回しにしていたPC改装のあらましであったが、ここに書き残しておこう。

まあ、賢明な自作erの諸氏は、しっかりリサーチをするだろうから、おれと同様の愚かな間違いは冒さないだろうと考えている。全く今回のトラブルは金と時間を大量に使わされた。今までの機械を維持するために、だ。

一つ明確に言えることは、ラチェット付きドライバーはマジで仕事が捗る。YOUTUBERの『熊五郎お兄さん』が使ってて、便利そうだなーと思ったのが買ったきっかけだが、これは実際に便利。お前たちにもおススメしておく。

別に特定の商品が優れているということは一切ないので、ホームセンターで目に入った好きなメーカーの、好きなラチェットドライバーを買うといい。

今回はひとまず、そんなところだ。お前にPCの神のご加護があらんことを。


From: slaughtercult
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