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鉄砲コラム:『トミー・ワイズガイ』の独白①【拳銃を携帯するということ】

【序説】

ハロー、諸君。私だ、トミーだ。東洋のハリウッド・ブールバードは午後の日差しが眠りの神の微笑みのごとく降り注いでいる。私は大通りを見下ろすアパルトマンの3階の突き当たりにある事務所で肘掛け椅子に座り、通りのイタリア人商店で買ったパニーニを齧りつつ、マキネッタを電熱器にかけて苦み走ったエスプレッソが薫香を放ちつつ噴き出してくるのを、今か今かと待っていた。私がパニーニを食べるペースの方が早過ぎ、どうもこの分ではエスプレッソができるより早く、パニーニを食べ切ってしまいそうだった。

私は食欲に任せてパニーニの最後の一欠片を口に押し込むと、両手を摩ってパンの欠片を払い捨て、ゴチャゴチャの事務机に手を伸ばすと、四つ折りの業界紙『ガンズ・アンド・パウダーズ』の粗末なわら半紙を両手で広げた。

ほう、初心者のワガママに耳を傾ける目安箱か。私は紙面に書かれた文字に目を走らせ、誰とも知らない変わり者の奇行に目を見張った。何も知らない初心者に情報を売りつける。蛮勇としか言いようがない。少なくとも私なら頼まれても絶対にやりたくない。まあ、どうなるか見守っていくとしよう。

私は紙面の広告に目を凝らし、探偵に持たせるべき拳銃と題され、例として20世紀初頭のセミオートマチック拳銃、事実上はブローニング拳銃の歴史の解説と化した文面を半ば呆れながら読み進め、彼が『銃の大きさ』について口酸っぱいまでにしつこく何度も言い聞かせている様に声を低めて唸った。


『キャリーガン』か。拳銃を持ち歩くということ、携帯に適した拳銃を選ぶということ……真実は残酷なまでに明快だが、掘り下げると奥が深い話だ。

成る程、今日はそのことについて、もう少し掘り下げて語ってもいいか。



【人と拳銃との関係性の概説】

私は『ガンズ・アンド・パウダーズ』の紙面を捲ると、6面から7面に跨って所狭しと並ぶ、『ジョエル・フォスターズ・ブラザーズ』のオークションに出品された中古銃セカンド・ハンドの数々に目移りした。今週の目玉商品はこれらしい。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Webley_pryse.jpg より転載されています。

酷く旧式の拳銃だった。ウェブリー・プライス №.4リボルバー。わら半紙に転写された粗末な写真で見ても美しいことが分かる。実用性よりデザインを優先した、優美な弧を描く棒切れじみたグリップはさぞ使い辛いだろう。

ニッケル仕上げ、中折れ式、口径 .455ウェブリー、6連発、完動品、美品。紙面に踊る値段は100万を優に超えていた。一体誰が買うのだろうか。どう考えても、私のようなアパルトマンの3階に引きこもり、こそこそ売れない仕事をしているような男に向けて売っているわけでないことだけは確かだ。

一見するとウェブリー&スコットのリボルバーと似ているが、シリンダーの後方に付いたレバー型のカンヌキの構造が違う。プライス拳銃は写真に映る銃の左側面だけでなく右側面にも同様のレバーを持ち、フレームの左右両側からさながら洗濯バサミのように閂を挿入して押さえつけることで、フレームとバレルエクステンションの結合を保っている。ウェブリー&スコットならば前後動する文字通りのレバーであり、これよりもう少し洗練された機構だ。


そう。例えば、オークション欄の片隅に身を縮こめるようにして窮屈そうに小さな写真を掲載した、イギリス軍が第二次大戦時代に使用していた、この 非力な .38/200口径を使うウェブリー&スコット MkIVリボルバーのように。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Webley_MkIVandCartridges.JPG より転載されています。

戦後のリブルー仕上げの放出品、中折れ式、口径 .38/200、6連発、完動品、良品。オマケとしてイギリス軍が放出したカイノック製・.38/200 Mk IIz弾が1箱/12発付属、値段は73,000と買い求めやすく、こちらの方が私向けだ。


さて、.455口径のプライス №.4と .38口径のウェブリー MkIV、持ち歩くならどちらの銃が良いだろうか。銃に対して対人殺傷力を重視するなら、有無を言わさずプライス拳銃だろう。だが私は、この2挺であれば迷わず .38口径のウェブリー拳銃を手に取るだろう。それが現実的な選択だ。金が足りなくて買えない、という話をしているわけではない。この見るからにグラマラスな銀色のフロイラインをどうやって隠し持つべきか、見当もつかないからだ。

まず、前提知識を共有しよう。我々が住んでいるのが文明国家だとすれば、軍人や警察官でもない一般市民が、装薬拳銃の所持許可が下りたとしても、外から見える位置に拳銃をぶら下げて身に着け、街を歩いて良い訳がない。


一旦、プライス拳銃に話を戻す。この銃は通常、 .450アダムスや .476/.455ウェブリーなど、イギリスで一般的な軍用弾薬を6発装填できたが、 少数の特別モデルとして大口径の .577ボクサー(スナイダー・エンフィールド用の .577スナイダー弾の薬莢を、拳銃サイズに短縮した弾薬)が撃てる、5連発のスケールアップ版が少数造られ、植民地での猛獣狩りの護身用に使われた。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ElephantbackTigerHunt.jpg より転載されています。

こういった『猟場:ハンティング・フィールド』では、一般的に剥き出しで銃を携帯して良いものとされ、狩猟用の護身用拳銃はヒップ・ホルスターやハーネス・ホルスターなど、必要な時は直ぐに抜ける服の上にホルスターを露出させて携帯するのが普通だ。そうでないと、野獣に襲われてライフルを叩き落された時、わざわざ服の内側に手を突っ込んで銃を引っ張り出さねばならないことになる。狩猟用の拳銃というのは大体、強力な弾を撃てるよう大きく作られているので、服の内側から取り出そうものなら、引っかかって取り出すのも覚束ず、そうこうするうちに野獣に頭から齧られて終わりだ。


スケールの違いこそあれど、これと同じことが、軍隊や警察向けの拳銃にも言えるだろう。仮想敵を打ち倒せる程度の威力を持ち、必要な時には直ぐに抜けないと命が無いため、拳銃を納めたホルスターは服の外側に剥き出しでぶら下げるのが普通だ。剥き出しの銃は、軍人や警察官と一目見れば分かるアイコンともなり、路上で悪事を企むヤツらを威圧する抑止力にもなる。

軍・警察用の『フルサイズ』拳銃は文字通り大きく、全長は200mm超の物も珍しくはない。これは大きい方がより外見が威圧的だとかいうしょうもない話ではなく、特に対人の殺傷能力にある程度は傾注する以上、機能的制約で銃がある程度は大きくならざるを得ないからだ。とはいえ近頃はこういった拳銃にも、ダウンサイジング化の波が押し寄せているが、それは後述する。

こういう理由で、猟師・軍人・警察官などは銃を剥き出しにして携帯しても良いのだ。命がかかっているし、公僕の場合は銃を公衆に見せびらかすことそれ自体に、連中の職務に資する意味を持つ。猟師は現代的な価値観ならば一般人の延長線上にいる存在と考えてもおかしくないが、森の管理人という立場である彼らは本来、山林を知り尽くし、人知の及ばぬ獣を力で制圧する頼もしい勇者であったと同時に、金属薬莢式の銃器が発達し軍隊が成立する以前の前近代、職業上の必然で弓矢や銃砲に親しんでいた彼らは、民間人でありながら時には外敵と戦闘する、民兵や準軍事組織的な役割も果たした。

これが現代の軍隊における尊称『猟兵:イェーガー』の語源であり、古より狩猟という武力行使の一形態は、軍事と密接に関わっていたのが分かる。


話を狩猟用の大口径拳銃に戻そう。俗に『ハウダー・ピストル』と呼ばれたこの手の銃器は先込め式の時代より存在しており、早くから産業が発達したヨーロッパでは特に、貴族向けのブティック・ガン製造企業が手間をかけて美しく仕上げ、アフリカなんかで貴族が狩猟するのに使われた。この狩猟は猟兵の元となった職業猟師が『やらざるを得ず』やる殺しとは違い、完全に自分たちの『楽しみのために』やる殺しだということは言い添えておく。

先込め式の黒色火薬では性能もたかが知れていたが、金属薬莢式の時代へと移ると、単発や水平2連拳銃でライフル仕様の .577弾を撃てる銃や、他には .476/.455口径弾の4連発ペッパーボックス拳銃を基本に、.577口径弾を使う上下2連拳銃も特別モデルに誂えた、ランカスター・ピストルの例もある。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lancaster_pepperbox.jpg より転載されています。

これらは .577口径拳銃とは言えど、19世紀末の黒色火薬を使用する弾であり現代の基準で見れば、9mm×19~.45ACPより少し強力で、.357マグナムより少し弱い程度の常識的な『ちょっと強力な』威力しか発揮できない。しかし19世紀末から20世紀初頭の当時には、それこそ現代で言う .357マグナムとか .44マグナムみたいなマグナム拳銃と同等の、メインウェポンを失った場合の最終手段で『猛獣を制する脇差』の性能を期待され、所持されていたのだ。

ここまで、理解できただろうか。翻って我々のような一般人は、こういった銃器を(それが強力であるか否かに関わらず)公衆の眼前で剥き出しにして持ち歩くことは、一般的に禁じられている。紛争地帯ならまた違った状況になるのだが、紛争地帯は誰がいつ撃たれて死んでもおかしくない常在戦場の環境であるがゆえに、万人が万人に対しての軍人であり警察官になり得ると言っても決して過言ではないだろう。私がこれから話をするのは、そういう特殊な社会においてではなく、『例え護身用でも、他人には見えないように隠して拳銃を持ち歩かねばならない』文明的な社会と前提づけておこう。


こういう言い方をすると、一部の人間は『銃を持ち歩くことを許される社会それ自体がもはや文明的ではない』と反論するだろうが、貴方が望むまいが現実として、少なくない文明社会に銃器が流通し、何の公的な権限も犯罪の意思も持たない一般市民が、娯楽として銃を手にすることが許されている。

アメリカという、石を投げる格好の分かり易い『罪深い女』が我々の眼前に存在しているだけで、我々の注意から外れた場所に存在する他の文明社会の多くでも、同じ娯楽に励む者たちがいる。貴方は、栄えあるスポーツの祭典オリンピックの、近代では第1回である1896年アテネ大会より、拳銃射撃のスポーツが存在することをご存じだろうか。貴方が望むまいが銃と射撃にはヨーロッパ人たちの血と汗と涙の饐えた臭いと歴史が詰まっているのだ。

よって、多くの先進国の人間が想像し得る『文明社会』と、潜在的に人獣を殺傷することを宿命づけられた『銃砲』が併存し得ることは証明された。


さて、前置きが随分と長くなったが、ここからが本題だ。こういった強力な拳銃を持ち歩く……現実世界で携帯が許される場合に持ち歩くという話より今回は、創作物のキャラの武器として、彼ら彼女らにこういった非現実的に強力な銃を……強力な『拳銃』を持たせるのはどうか、という思考実験だ。



【昔の拳銃は大きかった】

百聞は一見に如かず。俺の銃を見てもらえば話は早い。どれもがお世辞にも持ち歩きたいとは言えない銃ばかり。現実感のある話をしようじゃないか。

お前が何を言いたいか俺にも分かるが、皆まで言うな。セミオートマチック(エアコッキング)3挺が東京マルイ製、リボルバー(エアコッキング)はクラウンモデル製、全て数千円で買える安価な玩具だ。サイズは概ね実物に準拠しており、一先ずここでは実銃の代替品として考えてもらうとしよう。

コルト・M1911A1、全長212mm、口径 .45ACP (6mmBB)、鋼鉄フレーム、単列弾倉の軍用拳銃。

M1911A1拳銃は、アメリカ軍が1924年から1985年まで長く採用していた。USP拳銃は口径9×19mm版を、ドイツ軍がP8拳銃として1994年から採用。

H&K・USP。全長198mm、口径 .40S&W (6mm BB)、ポリマーフレーム、多弾数の軍用拳銃。

USPの構造は、大雑把に言うとM1911A1を近代化したものだ。2挺の銃には大体70年ほど設計年代に差があり、近代的なUSPは、旧型のM1911A1よりも全長で15mmほど短縮化されている(短くなったのは主に銃身の長さだ)。

視覚的にも物理的にも知覚できるぐらい差があるにも関わらず、2挺の銃は現代の尺度で見ると、両者ひっくるめて『フルサイズ』と見做される。

これは先ほどの序説でも話した、『公然と銃を携帯してよい』職種の人間に向けて基本的に造られた、戦闘的な意図をもって設計された拳銃と言える。

これは『探偵が持つべき銃』の記事で説明されていたように、特に隠し持つ目的の拳銃としては余りうまくない。そういう目的では、記事で紹介されたブローニング・デザインの中型~小型拳銃を持った方が都合が良いだろう。

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( ↑ ブローニング・№.1/FN・M1910、口径7.65×17mm SR/.32ACP)

1900年の昔より小型な拳銃があったのは、FN・M1900を見れば明らかだ。しかし現実に、20世紀初頭に世界各国の軍用拳銃として主流であったのは、C96やM1911を始め、全長200mmを超える巨大な銃たちばかりであった。

なぜか? 拳銃を持ち歩くなら、小さくて軽い銃の方が決まっているのに?

それは当時の技術的制約からくる止むを得ない事情として、対人の殺傷力をある程度持つ弾が必要なら、それを撃つ銃もまたある程度大きくならざるを得なかった。拳銃にどれほどの威力を求めるかは国にもよるが、それ以前に20世紀初頭の近代国家は、国家の兵力の基幹であった歩兵に持たせる武器の自国製造に拘って試行錯誤しており、現代の価値観では合理的とは言えない複雑な設計をして、無闇に大きな国産拳銃を軍隊が使う場合も多々あった。

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( ↑ サンテティエンヌ造兵廠・モデル1892、口径8.3×27.5mm R ルベル)

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( ↑ ツーラ造兵廠・ナガン・M1895(1941年製)、口径7.62×38mm R)

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( ↑ マウザー・C96、口径7.63×25mmマウザー)

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( ↑ ルガー・モデル1900、口径7.65×21mmルガー)

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( ↑ FN・モデル1903、口径9×20mm SR ブローニング・ロング)

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( ↑ ルガー・P08、口径9×19mmルガー)

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( ↑ グリセンティ・モデル1910、口径9×19mmグリセンティ)

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( ↑ コルト・M1911、口径11.43×25mm/.45ACP)

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( ↑ ステアー・ハーン・M1912、口径9×23mmステア―)

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( ↑ 東京砲兵工廠・南部式大型自動拳銃(1915年製)、口径8×22mm南部)

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( ↑ ウェブリー&スコット・MkVI、口径11.55×19.3mm R/.455ウェブリー)

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( ↑ カンポ・ヒロ・モデロ1913-16、口径9×23mmラルゴ/ベルグマン)

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( ↑ ベルグマン・ベヤード・M1910/21、口径9×23mmベルグマン)

この中には、結果的にFN・M1900が使う .32ACP並みの殺傷力しか持たずに威力の低い弾を使う銃が幾分混じっているが、銃自体は押し並べて大きい。

当時はあらゆる機構が様々の技術者に試された混沌の世情で、これらの銃は信頼性が低かったり、製造コストが高くついたりして、新型に交代されたり他国から輸入した優秀な銃に交代されたりする末路を辿り、そのままの形で現代まで残った拳銃はほぼ存在せず、最終的には博物館に終の棲家を得た。

コルト・M1911、ただ1種類を除いては(とっくに時代遅れではあるが)。



【拳銃は再び小ささを目指した】

歴史の一時、軍用ピストルにせよ軍用ライフルにせよ、大きさを良しとする時代が存在した。翻って現代は、ダウンサイジング化の波が顕著だ。拳銃に限らず小さ過ぎる銃は扱い難いが、軍隊・警察用の『官給品』と一般向けを問わず、拳銃は着実に、以前より小型な物が好まれるようになりつつある。

100年前と異なるところは、当時フルサイズで使っていた強力な弾を、今は技術革新でコンパクトサイズに押し込めている点にある。銃の威力と反動の強さは比例し、銃の大きさと反動の強さは反比例する関係にある。小型化と威力の強化を両立すると、ちょっと常識的でない(一般人や初心者向けとは言えない)反動の拳銃が出来上がるわけだが、ここ暫く市場傾向を観察する限りでは、概ね顧客は強い威力を求め、強い反動は我慢する傾向にある。

現代の小型拳銃は恐ろしく強力だ。1発の威力も装弾数も、そのどちらとも100年前の銃とは比べ物にならないほど。連中は一体何と戦っているんだ?


私は『ガンズ・アンド・パウダー』紙をパラパラと捲り、この話に丁度良い拳銃の広告を見つけた。近頃の『マイクロ・コンパクト』市場を説明するに当たり、界隈の先駆者であるカー・アームズに言及しない訳には行くまい。

画像は https://www.kahr.com/wp-content/uploads/2021/05/M9093_H0A5035.jpg より転載されています。

カー・MK9。決して写真の遠近法の影響で小さく見えるわけでなく、全長は5.3インチ≒135mmと、FN・M1906の5インチ≒127mmに肉薄する極小ぶり。オールステンレス製なので重量22.1オンス≒627gと、見た目の印象ほど軽いわけではない。弾は口径9×19mmルガー、装弾数6+1発。ダブルアクションオンリーのためトリガーは重く、全体的に口径 .357マグナムのスナブノーズリボルバー、S&W・モデル649 ”ボディガード”(重量22.2オンス≒629g)を連想するスペックだ。だが、カーにはポリマーフレーム版のピストルであるカー・PM9もあり、こちらは重量14オンス≒397gと他の追随を許さない。

画像は https://www.kahr.com/wp-content/uploads/2021/05/PM9094N_H0A1282.jpg より転載されています。

大丈夫か? 話にちゃんとついてこれてるか? カー・アームズの強い所はダブルアクションオンリーという、ややもすればオワコンな安全性最優先で簡便で信頼性の高い設計を敢えて採用したことにより、FN・M1906などの小口径ポケットピストルと、S&W・モデル36 "チーフ・スペシャル" とかの大口径スナブノーズリボルバーを、同時にぶん殴りに行っているところだ。

カー社の品質は折り紙付きなのだが、その理由は価格にある。ポリマー製のPM9は$795≒91,679円、オールステンレス製のMK9は$1,067≒123,046円もの高価格ぶりだ。MK9の夜光照準器付きでは、実に$1,200≒138,384円の高値が付けられ($1=115.32円の為替相場により計算)、いくら品質が高かろうがたかだか装弾数6+1発の豆鉄砲のためにこの金額を払える人間は限られる。

アメリカでは好評なグロック43(装弾数6+1発)や43X(装弾数10+1発)、S&W・M&Pシールド2.0(装弾数7+1発)などであれば、新品か中古かでも変わるが$400~600≒46,128~69,192円で買える。下手をするとカーの半額になるので、品質も無論それ相応とはいえども、多くは安価な方を選ぶ。

画像は https://www.sigsauer.com/media/catalog/product/cache/a3db8ca85b9f26a85c601248a3f4f74b/p/3/p365-9-bss-left_1_1.jpg より転載されています。

アメリカシグザウアー・P365 ”ナイトロン・マイクロコンパクト”。天下のシグだからお高いんでしょう? と思うだろうが、$500≒57,660円の価格はグロックやM&Pなんかを買う層に刺さる、購買訴求力に優れた価格設定だ。

全長は148mm、重量500gと、カーのマイクロコンパクトより一回り大きくなっており、弾は口径9×19mmルガー、装弾数は10+1発。100年前の拳銃がFN・モデル1910、全長152mm、重量570g、装弾数は口径 .32ACPで7+1発、 .380ACPなら6+1発だった。9mmで10発入れば、100年前は兵士が使用する拳銃だったレベルだ。撃発構造は100年前と同じストライカー、但し構造はプリコックのセミダブルアクション式*で、シングルアクションほど危険でも無いし、全くのダブルアクションほど扱い辛くもない現代的な使い勝手。

*セミダブルアクション……グロックが『セーフ・アクション』の名で現代の銃器市場に流行らせた撃発構造。シングルアクションの100%コックとも、ダブルアクションの撃つたび0⇒100%でコックする構造とも異なり、両者の間を取る位置(厳密な50%コックというわけではない)までストライカーをコックした状態でシアにかける。撃つ時は毎回、往復経路の途中でコックを始めるので、大雑把に言って移動量は50⇒100%ぐらいとなり、0⇒100%のフルダブルアクションより毎回の射撃に必要な指の力やトリガーの移動量が少なくて済み、落下・衝撃による暴発に対するダブルアクションの安全性を取り入れつつも、フルダブルアクションよりは銃として撃ち易くなる構造。

図示した方が分かり易いと思いますが、面倒なんでそこまでしません。

そろそろ目が回ってきたかもしれないが、話はここで終わりではない。

恐ろしいことに、現代の市場最強なマイクロコンパクトは……他に居る……。

極小拳銃のミルコ・クロコップ! 出てこいや!

画像は https://hs-produkt.hr/wp-content/uploads/2020/03/H11_IZO-_150dpi.png より転載されています。

クロアチアから来襲きたれり、マイクロコンパクト界のミルコ・クロコップ!

HSプロダクト・H11。アメリカの商標管理会社(笑)スプリングフィールドアーモリーでは『ヘルキャット』の名で売られている。ポリマーフレームの軽量小型・多弾数化の急先鋒と言うべき拳銃だ。どこの馬の骨とも知れない外国製品と思ったら大間違いで、要するにアメリカ名『XD』、クロアチア名HS2000/HS9拳銃をベースにマイクロコンパクト化した、しっかり既製品の延長線上にある銃なのだ。価格も$500~600ぐらいと実際抜かりが無い。

全長153mm、重量は11連マガジンを付けた場合に513.5g、13連マガジンを付けた場合でも523.5g。無論、実弾の分だけ重量は増えるが、このサイズで9×19mm弾が11+1発だとか13+1発だなどとは、殆ど常軌を逸している。

画像は https://www.browning.com/content/dam/browning/product/firearms/pistols/hi-power/pre-2016/Browning-Hi-Power-Mark-III-051001-1289hr.jpg/_jcr_content/renditions/original.img.jpg より転載しています。

13+1発と言えばFN・ハイパワー。原型は1935年に発表され、イギリス軍が近頃まで使っていた、カナダ軍は今でも使っている拳銃。鋼鉄フレーム製で全長196mm、重量907g。装弾数は13+1発。90年前の技術の生きた化石だ。厳密には1回死んだ。最近スプリングフィールドアーモリーがコピーであるSA-35を出したことに触発され、FNも負けじと墓場から蘇らせたようだが。

画像は https://fnamerica.com/wp-content/uploads/2022/01/2201_HP__0028_FN_HighPower_Blk_side_right_gripBlack_-1074x850.png より転載しています。

( ↑ 生っ粋のハイパワー好きにはゴミカス評価の、新生・FNハイパワー)

この時点で既にコルト・M1911A1の全長212mmから20mmほど短縮され、過去のコルト・M1903 ”ポケット・ハンマー” と同じ程度には、H&K USPの198mmとも同じぐらいには、フルサイズの拳銃でありつつも短くなった。

ハイパワーと、コルト・ポケットハンマー、USPとの3挺は、9mm/.38口径を使う限り威力に差は無いが、装弾数は20世紀初頭のコルトの7+1発に比べてハイパワーは13+1発、USPは15+1発と、この時点でも2倍近い増え具合だ。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:GLOCK_17_Gen_4_Pistol_MOD_45160305.jpg より転載されています。

( ↑ イギリス軍もFN・ハイパワーから交換したグロック17。全長202mm、重量708g、装弾数17+1発。装弾数がハイパワーより4発、USPより2発多い)

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Glock_19_Gen_4.JPG より転載されています。

( ↑ グロック19。現代ではグロック17と共に、世界中のありとあらゆる軍や警察・特殊部隊まで使う、現代拳銃のキホンのキの字で、現代最強の拳銃と言える。全長183mm、重量630g。装弾数はこのサイズで驚異的な15+1発)

翻って、現代はどうだ。ハイパワーと同等の『火力:ファイア・パワー』を有するH11拳銃は、同時にハイパワーより40mm……M1911からハイパワーの20mm短縮よりも実に2倍の長さを、一足飛びに縮めてしまっているのだ。

例えば、鉛筆が20mm縮んでも気が付かない鈍感な人間でも、40mm縮めばさすがに何かがおかしいと気づくだろう。M1911からすれば60mmの縮小で100年前とは隔世の感がある。極端な例とはいえ、銃の小型化は凄まじい。



【現実を取るか、理想(オモイ)を取るか】

考えても見ろ、時代はもう2022年だぞ。1994年に実用化されたUSP拳銃とてアラサーであり、10年前の1985年に米軍へ採用されたベレッタM9拳銃などいい加減アラフォーだ。だから米軍はM9を捨て、シグザウアーM17拳銃へ2017年に乗り換えたわけだが。M17/P320拳銃もグロック拳銃の亜流だ。

画像は https://commons.wikimedia.org/wiki/File:M1911A1_and_M9_DA-SC-91-10188.jpg より転載されています。

アルミ合金フレームのM9拳銃ですら捨てられた。いわんや鋼鉄フレームのM1911A1拳銃をや。「だけど、海兵隊はMEUピストルを……」とか言ってるヤツは甘いぞ。MEUのカスタム1911も、グロック19に置き換えられる運命が決まって久しい。陸軍も海軍も特殊部隊も、今や全員ポリマーフレームだ。

画像は https://www.sigsauer.com/media/catalog/product/cache/a3db8ca85b9f26a85c601248a3f4f74b/p/3/p320-m17-left-web-21.jpg より転載されています。

アメリカ軍はP320、イギリス軍はグロック、自衛隊すらSFP9に更新した。

画像は https://www.heckler-koch.com/typo3temp/_processed_/csm_SFP9_re__02_5b387c6a4c.png より転載されています。

アニメや映画に影響されて中二病を拗らせたギークが、デザートイーグルコルト・パイソンでウホウホ、ブンドドしてる間にも、時代は進んでいた。

デザートイーグル、全長267mm、口径 .44Mag (6mm BB)、鋼鉄フレーム、単列弾倉の大型拳銃。

なぜこうなってしまったのか? 誰もが、腰にぶら下げた重く大きな拳銃にウンザリしてしまったからだろう。M1911A1の伝統への郷愁は過去の物だ。


いいか。拳銃は『苦痛なく』持ち運べることが最優先事項だ。確かに慣れは重要だろう。だが持ち歩くのに慣れを上回る苦痛を伴うような、重く大きな拳銃では、歩いてナンボの職業……例えば歩兵や警官、あるいは探偵だ……の人間が好んで身に着け、持ち歩きたいと思うだろうか? 多くの一般市民が知らないであろう警察官の職業病が腰痛だ。腰に警棒だとか、手錠だとか、無線機だとか、拳銃だとか、色んなオモリをぶら下げまくっているせいだ。

軽い拳銃は、少なくともそれだけで現場仕事のヤツらに喜ばれる。仕事上の必要に迫られて、否応なくケツに拳銃を下げてるヤツらだ。日夜悪党と戦う妄想をしてタクトレに励むギークと違い、実際に悪党と戦っている連中だ。

ワルサー・PPKとかマカロフあたりでワイワイしてた一般人のエンスー共も実際に銃を携帯するなら、軽くて火力のあるポリマーフレームの方がいいに決まってる。マカロフは鉄で重いとはいえ、特に軍払い下げの中古だったら価格が安い分だけ優位性があるが、PPKは中古も新品も価格が高いとマジで救いようがない。恐らくワルサーも新型のPPSを売りたいと思ってるはず。

画像は https://f8x7p3b6.ssl.hwcdn.net/wp-content/uploads/2019/05/Walther_PPS-M2_LS_6rd-Mag_L.png より転載されています。

( ↑ ワルサー・PPS M2。全長161mm、重量600g、装弾数6/7/8+1発。今となっては物足りないスペックだが、実は早い時期から極小拳銃を製品化してマイクロコンパクト市場の流行を牽引した、地味に界隈の立役者である)

まあ、あんまりポリマーフレームをヨイショし過ぎると、面倒臭いギークの恨みを買って粘着されそうなんだが、私がかれこれ数年界隈をウォッチして得た結論がこれなので、文句があるなら海の向こうで実際鉄砲を買っている連中に言ってくれとしか言いようがない。ここまで喋っておいてこんなこと言うのもなんだが、勘違いされては困るので一応言っておくと、個人的にはポリマーフレームは好きでも何でもないし、ストライカー拳銃は嫌いだ。


ま、それ以上に1911系の拳銃が嫌いなんだけどね☆彡(爆弾投下)

私、1911よりハイパワーの方が好きなんよ。とはいえ、近頃FNが復興させたおデブっちょなハイパワーは好みじゃないのは確かだが。最近は自分の銃の好みが良く分からなくなった。リアルの深淵を覗き過ぎて闇に呑まれたか。

話が脇道に逸れたが、『拳銃を持ち歩くこと』について改めて考えよう。


問いは実にシンプルだ。

なぜ軽く、持ち運び易い拳銃でなければならないか?

鉄砲が重くて持ち歩くのがしんどいし、家に置いてきちゃった……となれば意味がないからだ! 銃を持っていない時、刺客に襲われたらどうする?

「悪いが今日は、家に銃を置いて来たんで丸腰だ。お前も男だろう、丸腰の相手を狙うなんて卑怯じゃないか。今回は一先ず見逃してくれ、お互い銃を持っている時、男らしく正々堂々戦おうじゃないか」とでも言うつもりか?

冷酷な刺客の瞳が、ホールドアップするお前を射抜き、お前は固唾を呑んで半歩後退った。刺客は容赦なくトリガーを弾き、サイレンサー拳銃が無音で硝煙を噴き、お前は弾丸に胸を貫かれ……エンド・オブ・HOLLYWOOD……。


どうしてこうなってしまったのか? お前が武器屋の主人の忠告も聞かずに身の丈に合わない銃を手にしたからだ。喜び勇んで買い、酒場に繰り出すと飲み友達に新しい相棒を一通り自慢して満足し、下宿に引っ込むとベッドに腰掛け、真新しい鋼鉄の地肌を撫ぜて溜め息をこぼす。満ち足りた気持ちでお前は布団を被り、眠りについて翌朝。清々しい心持ちで腰のホルスターに新たな相棒を意気揚々と納めた時、お前は初めて『違和感』に気づくのだ。

コルト・パイソン、全長295mm、口径 .357Mag (6mmBB)、鋼鉄フレームの6"銃身リボルバー。

「~~~~~ッ! ……こんな、こんなはずではなかったッッッッッ!」

お前は腰に垂れ下がる銃の重みのせいで重心が偏り、ヨタヨタと酔っ払いの千鳥足のように覚束ない足取りで入り口のドアまで歩くと、ふと考え直してダイニングに踵を返し、ホルスターから拳銃を抜いてテーブルに横たえた。

果たしてお前は、武器屋の主人の忠告通りデカブツを持て余し、家に置いて外に出かけてしまい、刺客に丸腰で遭遇して討ち取られた。お前が大人しく等身大の武器で満足しておけば、こんな悲劇には遭わなかったことだろう。


「武器は装備しなければ意味がない」とよく言うが、もっと厳密に言うなら「武器は装備し続けられなければ意味がない」。常に持ち歩く物なのだから背伸びは禁物だ。自分の命を守る用心棒を持て余して、投げ捨てるようではどうしようもない。無理は長続きしないと思った方がいい。重量級の武器に憧れを抱くのは誰しもあることだが、実際それを手にして使いこなせるかは別の話だ。厳しい鍛錬を重ね、己の理想とする重量級武器に相応しい肉体へ己自身を作り変える剛の者は稀に居るが、お前がそうなれるとは限らない。

考えろ。私は口やかましいお袋のようにお前にしつこく言い聞かせ、敢えてリアルの枷に嵌める。何故か? その方が単純に合理的だし、合理的ならば多くの人により受け入れられやすく、受け入れられやすければお前の物語がより売れやすいということだ。たった1挺の武器のために、余計な枷を自ら進んで嵌める必然性は無い。両手武器を事も無げに持ち歩き、そいつで敵を軽々と薙ぎ払えるのは、主人公がガッツやシュワルツェネッガーだった時に限られる。傷だらけで鍛え抜かれた巨大な鋼の身体だ。だからデカい武器を持つことに説得力が出る。いいか? 武器は道具だ。お前が武器を持たせるキャラクターは筋肉モリモリマッチョマンか? お前が目指すのはリアルとファンタジーのどっちだ? この問いを、常に心の片隅に置いておけ。

別にファンタジーならファンタジーで構わない。但し、そのファンタジーを受け手に納得させる、ファンタジーの中のリアルな理屈ぐらい、お前自身で何とか考え出して描いて見せろ。デカい武器をフィクションなりにキッチリ筋道立てて活躍させられれば、それは格好良いものだ。お前もそうなれ。



【総括】

分かるまで何度でも教えてやる。現代の拳銃の流行はポリマーフレームで、なおかつフルサイズなんて流行らない。流行の中心はコンパクトやそれより小さいサブコンパクト、マイクロコンパクトまで視野に入れるべきだ。

現代劇を書くなら、余程の作劇的な必要性が無い限り、お前が創作キャラに持たせるべき拳銃はストライカー式のポリマーフレーム拳銃だ。要するに、鉄砲のことなど何も分からない馬鹿でも、一先ずマガジンに弾を詰め込んで銃に叩き込み、スライドを引いてトリガーを引けば、目の前を相手に大量の弾をそれも簡単に叩き込める武器。それが今風の軽量小型拳銃なのだ。

分かったな。

それを理解した上で銃器設定を構築するなら、まあ……好きにすればいい。

私も精々、好きなように書かせてもらうとしよう……。

画像は https://www.beretta.com/assets/0/15/DimLarge/MR731.jpg より転載されています。

私は『ガンズ・アンド・パウダー』紙に燦然と輝く、マニューリン・MR73リボルバーの美しさに恍惚の溜め息をつき、415,000円の値段に眉を顰めて溜め息をこぼした。ゴミ箱にはクシャクシャの宝くじが捨てられていた。

415,000円の拳銃を買う金が用立てられるなら、走行200,000kmを超えた車をそろそろ新調することを考えた方が得策かもしれない。現実は常に残酷だ。

私は勝手に電源が切れた電熱器から、アルミの筐体がくすんだマキネッタを取り上げ、すっかり温くなったエスプレッソをデミタスカップに注いだ。

わら半紙の新聞を丸めて雑巾みたいに絞ると、ゴミ箱へぽいと投げ捨てた。

そうだ、新しい拳銃を買おう。そういえばつい最近、初めて顔を出した店のショーケースに、古い .22口径のコルト・ウッズマン・マッチターゲットが売っていた。決して煌びやかなグッチ・ガンと実用的なポリマーフレームのどちらでもないが、一目見ただけで惚れこみ、衝動買いの誘惑に負けまいと思わず逃げ帰ってしまった、魔性を秘めたオールド・レディだ。多分私にはそういう銃が相応しいんだろう。今度行ってまだ売っていれば引き取ろう。

そうだ、そろそろ新しい銃を買おう。古いけれど、私には新しい銃を。

M1911は好きではないが、それでも私は、まだ鉄と木で出来た銃が好きだ。

そんなことを考えつつ、私は通帳をそっと開いて残高に目を凝らした。

今度あの店を訪れた時も、まだ彼女はそこに居るだろうか。

出会いとは常に予測不可能な一期一会である。


【鉄砲コラム:『トミー・ワイズガイ』の独白①【拳銃を携帯するということ】 おわり】



From: slaughtercult
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