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ルヴァンカップ札幌戰~勝利によるよき循環

2022年6月4日 ルヴァンカップ・プレーオフステージ 北海道コンサドーレ札幌 vs サンフレッチェ広島 札幌ドーム


 足の重い序盤だった。

 後ろから繋ごうにも縦パスをカットされ、クリアをするとセカンドボールを拾われる。中2日の連戦の影響も考えられるが、連戦じゃない選手にもミスが見られる。エンジンが掛からない。スタジアムの観客の少なさが影響してるのだろうか。

 もはや札幌はゴールに迫ることしか念頭にない。実際にサンフレッチェはその圧力から抜け出せないので理にかなった戦いだった。大きく蹴っても前線で孤立してるサントスやベン・カリファは収めることができない。後ろで繋ごうとすると連携が取れない。どうやっても抜け出せないこの状況で最初にそれを打ち破ったのが右サイド藤井だった。単純にスピードだけで縦へ上がっていく。それだけで相手陣内の深いエリアまで上がれるので押し上げができる。そのプレーを皮切りに徐々にサンフレッチェの攻撃シーンも出てくるようになるのだった。

 それでもまだ札幌は自らの優勢を確信してるが如く攻め上がってくる。最終ラインでは積極的にシュートを放ってくる。決められてもおかしくない場面はあった。ペナルティエリア内で荒木が滑ってこけてしまった場面もあった。それでも決まらなかったのはGK川浪のボジショニングが安定してたからだろう。だがそれ以上に札幌の決定力のなさに助けられた面もあった。

 サンフレッチェも悪いが札幌も行き詰まってる。バイタルエリアまでは持ってこれるけどその先の迫力に欠ける。それは選手の問題もあるけどミシャの行き詰まりでもあった。かつてサンフレッチェも味わった閉塞状況。大体5年くらい経つと袋小路に陥ってしまうのがミシャの特徴だった。

 それに引き換えサンフレッチェはスキッベ監督就任初年度という新鮮さがある。それが停滞した守備網を切り裂き幅を使った攻撃になりC Kを得る。立ち上がりの悪い流れを切るには絶好の機会となり野津田のキックが入った。ボールはゴール前で簡単に弾かれたもののそのセカンドボールは東の元へ。迷うことなくダイレクトでシュート。密集したゴール前の隙間をスルスルすると通ってゴールへと吸い込まれていったのだった。

 先制。この悪い流れで先に点を取ったというのは相手に対して相当のダメージを与えた。しかしそれ以上に東が決めたということに驚きを感じた。もはやシュートが決まらないというのは東の代名詞のようなものだったがゴールへの僅かな隙間を力むことなく決めた。彼の唯一最大の欠点を克服しつつあるのだろうか。

 点を取ったことで余裕が生まれた。劣勢になっても守備に腰を据えたような感じに見える。後半になると更に安定感は増してきて追加点への願望も湧き上がる。ところが札幌も負ける気はなく攻めてくる。そこを食い止めると満田が一気にゴールに向かって駆け上がる。ドリブルで縦へ縦へ縦へ。そして前が塞がれサントスへ落とすと間髪入れずシュート。強烈な弾道のミドルシュートがゴールに突き刺さったのだった。

 2点目。これは大分有利になった。盛り返したとはいえボール支配率は札幌の方が多かったことでこれも相手へのダメージは大きかった。そして勝利を確信した瞬間でもあった。

 攻撃的選手を入れて攻勢に出る札幌。サンフレッチェはブロックを敷いて守りに徹する。ボールに対しては激しくアタックに行く。野津田が相手との接触により倒れる。何人かそういう場面に出くわすものの依然として交代はない。唯一ベン・カリファがカードを貰ったことで柴崎に代わっただけで流石に連戦の疲労も気がかりになってくるのだった。

 そんな時、攻撃を組み直しの中の相手のボールを奪った。サントスに受け渡すとゴール目掛けてボールを運ぶ。速い、速いサントス。だがシャビエルが追いつきゴール前でシュートコースに入る。キックモーションに入ってたサントスはここで切り返しシュート。飛び出したGK。だがその頭上を越えるループシュートはふわりとゴールに吸い込まれていったのだった。

 決まった、決まった、決まった。あれだけ点の取れなかったサントスがルヴァンカップだけで6点も決めてしまった。結果を出す選手が増えている。そして来週にはコロナで養生してる選手が戻ってくる。チーム内での競争が大きくなる。3点差とすることができほぼ勝ち抜けが決まったかのような気もするものの天皇杯ですらベストメンバーを送り出す監督だけあって次戦も緊張感を欠くことはしないだろう。

 活躍する選手がいるお陰でカップ戦勝ち上がり試合数が増える。それにより出場のチャンスも広がっている。その循環がいい方向に回っている。かつてミシャの時もそんな時があったなと札幌のベンチを見つつ思うのだった。

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