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セレッソ戰~試合を決めた野津田

2022年6月18日 サンフレッチェ広島 vs セレッソ大阪 エディオンスタジアム広島


 雨の降りそうな上空。日は落ちつつあるものの蒸し暑さがまとわりつく。今シーズン初の週末のナイトゲームにもうこんな季節になってしまったんだと気付かされるのだった。

 6連勝中のセレッソ。前からのプレッシングでその攻撃力を蓋をしようという意図はいつもと変わらないのだろう。ただ、この体感温度の高さでどこまで体力が持つだろうか。これから夏になっていく中でも今まで通りの運動量を要求していくのか。リーグ戦の折り返しという意味でもターニングポイントとなりそうな予感があるのだった。

 静かな立ち上がり。セレッソの攻撃を佐々木のところで絡め取り前に出す度に堰き止められセレッソボールとなる。そんな展開だった。ボールが前に行かない。右サイドからの崩しを狙うも藤井のところは完全に警戒されている。特に塩谷からのボールが全く通らない。最終ラインから出した縦のロングボールはほぼ全てラインを割ってしまうのはセレッソのプレッシャーの掛け方が上手いのかもしれない。

 そんな手詰まり感漂う中、徐々にではあるがボール保持の時間が作れるようになる。ただし、後ろで回してる内はいいが中盤より前に前進させようとするとすぐに引っ掛かる。それにより中途半端な位置からカウンターを食らう。ワンタッチで簡単に深いエリアまで持ち込まれシュート。枠には飛ばなかったもののどうしてあんなに簡単にシュートまで辿り着けるのか不思議でしょうがなかった。そこが苦労して苦労してバイタルエリアまでボールを運ぶサンフレッチェとの大きな違いなのだった。

 中が硬いのでサイドからの打開を図る。右サイド藤井からクロスが入る。ゴール前にいたベンカリファがヘッドで合わせるも枠外。ああ、その背後には東が待ち構えていたのに何で自分で打ちに行ってしまうのか。どうもこの選手、今ひとつ得点力がないような気がする。だがもう一人のFWサントスも得点力に欠ける。ただ、強引なまでにシュートへのこだわりはこのこう着状態の打開への唯一の希望であった。

 そして前半スコアレスのまま折り返し、後半に入る。メンバーの交代はなし。このまま引き分けのまま終わるのが無難かもしれない。それだけセレッソの守備は固く、下手に出ていくと跳ね返され見事なつなぎを見せてくる。そんな懸念を抱いてると正にその形が訪れた。中盤からサイドへと振られるとカットインから速いクロス。ニアに走り込んだブルーノ・メンデスのヘッド。ゴールネットに突き刺ささる。疾風の如き速い失点に唖然としてしまうのだった。

 それぞれが持ち場でのプレスが緩み前線へと繋げられ、クロスの場面では塩谷が振り切られシュートでは荒木が競り負けた。更にはGK大迫もシュートへ対応できなく、それぞれが少しずつ守備でのズレを生じた末での失点。攻撃への起点が見つけられなかっただけにもはやこの試合は決まってしまったと諦めを感じざるを得なかった。

 するとすぐに左サイド藤井からのクロスが入る。ゴール前の山を越し逆サイドで東が受ける。そして再びファーへと振るとベンカリファがシュート。再三好セーブを繰り返してきたGKキム・ジンヒョンもこれには反応できずゴールに叩き込まれた。おお、ベンカリファ、さっきは得点力ないとか言って悪かったと謝罪と共に感情を爆発させるのだった。

 ところがここで試合が止まる。VARのチェック。スローで流れる映像の再生。すると確かに出てた。東の折り返し前に片足分ラインから出ていた。オフサイド。主審の判定は虚しくノーゴールを宣告されたのだった。

 早い時間の振り出しに歓喜したもののとんだぬか喜びだった。やはりベンカリファは得点力がない。八つ当たりとも言える感情が湧き上がる。追いつかないといけないサンフレッチェはこれ以後も攻め続ける。が、3分の1まではいくもののその後に行かしてもらえない。硬い、硬いセレッソの守備。更にそこへ攻撃の選手から守備の選手へと交代を行うとまるでゴール前に要塞を築かれたかのようにびくともしない。槍で突いても傷ひとつ付けられないかのようだった。

 サイドからのクロスは全て跳ね返され中央からの崩しも人数をかけて刈り取られる。ショートパスによる崩しも裏への飛び出しを読まれてしまう。そして何よりもそれらの壁を突き抜けたとしても最後にキム・ジンヒョンが立っている。どこからどう打っても防がれてしまう。一体これでどうやって点を入れればいいんだ。

 するとサンフレッチェはサントスに代えてドウグラス・ヴィエイラが入った。てっきりスキッベ監督には評価されてないと思ってただけにこの点が欲しい場面での投入は意外だった。長身の割にはヘディングが弱いものの前線での収まりだけはいい。そして高い位置での相手へのプレッシャーで自由なビルドアップを許さない。それが功を奏したのか、一方的にサンフレッチェの攻撃が続くようになった。だが決まらない。どんなに攻めたところでセレッソの守備に綻びはないのだった。

 引かれると手詰まりになる。それはサンフレッチェの持つ最大の欠点の一つだった。だがこんな時の常套手段を使ってない。依然として右サイド藤井の突破に頼るべくボールが集まる。縦は警戒されていけず満田へ渡す。そこから切れ込もうにも入れず落としのボール。野津田へのパスだったそのボール。次の瞬間、電光石火のようなボールがゴールに飛んだ。閃光を放ちつつ誰も触ることすらできずゴールに突き刺さったのである。野津田のミドルシュート。正にスーパーゴールによってセレッソの牙城を突き破ったのだった。

 ガクト、ガクト、ガクト!そんな雄叫びをあげたくなった。元々比類なきキックを持ってるにも関わらず打てなかったミドル。閉じ籠った相手に一番有効な手段で仕留めた。こんな場面をどれだけ待ち侘びてたことだろうか。やっと振り出しに戻したがここで終わらない。もはやこれは勝ちに行かないといけない。

 慌ててセレッソはFWのパトリッキを入れてきた。だが守備固めにきたのが逆に響きサンフレッチェの攻撃は続く。ペナルティエリアへ入る。ボールがこぼれヴィエイラが反応。が、こけた。主審の笛が鳴り響く。PK。セレッソDFの足に引っかかってたようである。

 唸りを上げるスタジアム。だがまだ決まった訳ではない。ボールをセットしたヴィエイラ。ピーンと張り詰めた空気。スタートのホイッスルがなると小ギザミなステップを踏みつつヴィエイラが蹴った。読みを当てたキム・ジンヒョン。が、地を這うボールは掌を掠めることなくゴールへと吸い込まれていったのだった。

 逆転。雄叫びを上げるヴィエイラ。ベンチを含めて駆け寄るサンフレッチェの選手。今シーズン出場すらできなかっただけにもはや構想外になってしまったのかと危ぶまれたが貴重な逆転ゴールを決めた。そしてそれを導き出したスキッベ監督の采配も見事だった。

 あとは試合をシャットダウンするだけ。だがアディショナルタイムには7分という長い時間が表示された。守りに入るには危険すぎる。それだけに満田は打って出た。ドリブルで駆け上がりサイドをえぐる。最後はラインを割ってしまうが攻撃の姿勢を崩さない。リスクはあるもののリスクを下げてもいる。下手な時間稼ぎはセレッソに勢いを与えてしまう。最後の最後まで火を消さない。そんな取っ組み合いの中、笛が鳴った。終わった。2-1で逆転勝利を決めたのだった。

 戦力外と思ってたヴィエイラが決めた。それも大きかったがやはり試合を動かしたのは野津田のミドルシュートだった。守備でも貢献し、パスを配給して決めるとこを決める。野津田が試合を決める選手になった。そして出る選手それぞれが結果を出してる。これからの連戦、また新たなヒーローが出るチャンスがある。果たして次にそうなる選手は誰だろうと胸をたか鳴らしてしまうのだった。

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