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女性にも観て欲しいゴッドファーザー

年末の仕事納めから大晦日までの間、通常のプログラムを放送してくれるのが一番ありがたいと、個人的には思うのですが、やはり年末、一年の総決算ということで、各局ともスペシャル番組ばかり。最近では2時間どころか、3時間~5時間なんて番組もあったりして、我慢くらべのような気がします。映画好きの私としては、延々と映画を放送してくれるのが一番うれしいのですが、そんな一個人の希望など拾ってもらえるわけもなく、やはり有料放送を契約すべきなのか?と思ったりもする最近の年末です。
しかし、そんな中で、28日、29日、30日と、3夜連続でゴッドファーザー3作を放送してくれたNHK-BSプレミア。NHKは嫌いではありますが、素直に感謝したいです。

ゴッドファーザーは好きな映画のひとつで、何回見ても面白いと思うし、その度に新たな発見もあったりして、結末はわかりきっているにも関わらず飽きの来ない不思議な映画だと思います。結末はある程度予測がつくけど、イタリアンマフィアという俗世間からかけ離れた世界、一般社会の人間には知りえない世界を描いていることが飽きない理由かも知れません。かけ離れたと言いましたが、マフィアは合法的事業を隠れ蓑にして、巧妙に社会に溶けこみ暗躍していると言うことでは、かけ離れた世界どころか、ごく身近な世界とも言えるのかも知れません。

ゴッドファーザーを好きだという人や、興味を持つ人の大半は男性だと思います。マフィア=ギャング、ヤクザ、反社会的勢力と言うイメージから女性には好まれないジャンルの映画かも知れません。私が食い入るように画面を見ていても、「面白い?長い映画ね、まだやってんの?」そんな感じで興味を示しません。(笑)

私はたくさんの女性にこの映画を観て欲しいと思います。
ゴッドファーザーはシチリアマフィアの巨大組織を描いたものですが、組織よりも家族、ファミリーを描いた映画と言われています。
父親のヴィトー・コルレオーネ(ロバート・デ・ニーロとマーロンプラント)から組織を引き継いだ息子のマイケル・コルレオーネ(アル・バチーノ)の組織のドンとして、父親として、そして夫としての苦悩と悲哀。マイケルの妻ケイ(ダイアン・キートン)、妹コニー(タリア・シャイア)の存在はストーリーの中でとても重要です。そして、娘のメアリー(ソフィア・コッポラ)と兄フレドの存在も重要です。

組織を守り、存続させるのがドンとしてのマイケルの役目です。しかし、廻りの人間を信用できず、自らが廻りの人間を遠ざけ、家族をも崩壊させてしまうマイケル。次々と家族を失っていくマイケルが母親に、父(ビトー)はなぜ家族を守れたのか?と問うシーン、シチリアに住む殺害されたドン・トマシーノの遺体の前で、自分の抱える苦悩を吐露するシーンは、この映画の核心のような気がします。自分は何のために頑張って来たのか?一体自分のして来た事は何だったのか?理解者のいない孤独なマイケル。彼の苦悩を表す、顔を覆うように親指と薬指をこめかみに当てるしぐさが何回出てくるでしょうか?

終盤、マイケル自身を狙った弾丸が、娘のメアリーに命中し、メアリーはマイケルの腕の中で絶命します。マイケルにとってこれ以上無いと言う悲劇が目の前で起きてしまい、それまでの冷酷でクールな彼からは想像もできないような絶叫を上げるマイケル。自分の身代わりのように死んだメアリー。メアリーを殺したのは自分ではないか?胸が痛くなるシーンでした。

やがてマイケルは、故郷のシチリアでファミリーの誰にも看取られることなく、一人ぼっちで廃人のように生涯を終えます。ぐったりと椅子にもたれ、その後椅子からずり落ちて地面に倒れ込む・・・その姿には、たまらない哀れさと悲しさを感じます。アップではなく、引きの画角で画面の中央ではなく左側、そして傍らの猫ちゃんの存在が余計に悲哀さを感じさせるラストシーンでした。

故郷でオペラデビューをする息子のアンソニーの晴れ姿を見に来た、かつてのマイケルの妻ケイ。ケイとシチリアをデートするマイケルは楽しそうでした。マイケルが組織と関係なかったらケイとの結婚生活は続いていたでしょう。マイケルと離婚して、すでに再婚していたケイですが、マイケルへの愛情はまだ残っていました。復縁を持ちかけるマイケルに対して、「私にどうしろと言うの!」と取り乱すケイ。それはマイケルに対する愛情が残っている証だと思います。

幼い頃、シチリアのドン・チッチに命を狙われながらも、母親と村人に守られて逃げ延びて、ニューヨークで成功したヴィトー。自らマフィアとして生きる事を選んだ三男マイケル。マイケルの兄ソニーが殺害されなければソニーがドンになっていたかも知れません。でも、ケンカっ早いソニーはドンの器ではないとヴィトーは考えていました。しかし、マイケルとて組織の事業を合法化することに心を奪われ、結果組織を弱体させ、家族を崩壊させてしまいました。コルレオーネファミリーは、ソニーが継いでもマイケルが継いでも同じ道を辿る結果だったかも知れません。

マフィア=怖いと言うイメージを持っている人は多いと思います。確かに怖いと思います。ゴッドファーザーでも当然のように、殺人や銃撃戦のシーンも出てきますが、パート1、2、3それぞれ2時間以上の長い映画の中で、そんなシーンはわずかしかありません。ですから、女性が見ても嫌悪感を感じる事はほとんど無いと思います。ヴィトーを命がけで守る母、マイケルの妻ケイ、妹のコニー、娘のメアリーなど組織とその抗争に翻弄される女性たち。組織のドンの悲しい末路とマイケルを取り巻く女性たちの生き様は、女性が見ても共感し、また、考えさせられる部分は多いと思います。そして何より、女性が見ても本当に楽しめる映画だと思います。見ていて時間を感じさせず、見終わった後に心に残る、ゴッドファーザーはそんな映画だと思います。
ビンセント(アンディ・ガルシア)のドンも見てみたいので、パート4製作の期待もありますが、パート3でマイケルは死んでしまったし、当初パート2までの製作予定だったことを思うと、パート4はあり得ないでしょうね。どうこう言っても、マイケルの出ないゴッドファーザーは物足りなさを感じるに違いありません。デ・ニーロはかっこ良かったし、マーロン・ブラントも存在感がありドンには適任でしたが、やっぱりゴッドファーザーはマイケルですね。

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