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「春」を失った年に-AiRBLUE「私たちはまだその春を知らない」

2020年がこんな年になるとは、誰も予想していなかった。

外に出ること。誰かに会うこと。
そんな当たり前だと思っていたことは、当たり前では無かったことを知る。

特に、今年は「春」を失ってしまったような気がします。

「春」の機能

考えてみれば、春は現在の日本においては年度の切り替わりの時期であり、卒業・入学・入社・異動などライフイベントの発生を伴う時期でしょう。
(旧暦では正月は現在と比べて約2ヶ月弱遅れるため、新春という言葉に代表されるように新年の意味合いもありました。)


「春」やその代名詞とも言える「桜」はそういった転機を想起させ、古い物事の終わり・新しい物事の始まり・それらに伴う出会いや別れといった意味合いを付与されてきたのが実情です。

それはただの地学的な気象にとどまらず、文化的なレベルで役割を持つほどに。
音楽的にも松任谷由実「春よこい」・レミオロメン「3月9日」など、文化的に記号として使われている事例は数多くあります。

しかし、今この2020年において、「春」の機能はだいぶ損なわれてしまったような気がします。具体的な事例に言及はしなくとも、それを実感している人は多いのではないでしょうか。

AiRBLUE「私たちはまだその春を知らない」

そんな中でリリースされた(2020.03.25)のがこの曲。
 CUE!という2019年からサービス開始された声優育成ゲームを中心とするプロジェクトから発売されたCDのB面曲です。

私自身はこのCUE!というゲームをやっている訳でもないですし、知っていることも多くはありません。曲自体、Spotifyでリコメンドにあったから聞いた程度です。おそらく製作時期的にもこのコロナ禍を予見した書かれたものでもないでしょう。

ただ、その歌詞とMONACAの石濱翔氏が書いたメロディが相まって、どうしようもなく自分の中に響くものがあります。

”この初めての季節が
一度しかないことを
そう後で思い知るだろう
私たちはまだその春を知らない”

この曲はこの2020年だからこそ、日々春が遠ざかってしまうからこそ、特別な意味が積み重ねられていく気がしてならないのです。


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