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百合漫画業界の勢力図

こんにちは。岩紺です。

このタイトルで、この記事を見ているということは読んでいる方も多少なりとも百合に関心があることかと思います。

10年前であれば「ゆるゆり」、近年でも「citrus」「やがて君になる」などアニメ化される作品も数多く、分野として急成長しつつも、業界規模としてはまだまだ小さい百合業界。(BLの1/4程度という話もあります。)

その業界構造というか勢力図ってどうなってるんやろ、と個人的にふと思い立って調べてみました。

星の数ほどとは言わずとも、作品が数多くある中でどうやってみようか、頭を抱えましたが、とりあえず今回は「百合ナビ」さんが昨年(2019年)の8月に公表した「第3回百合漫画総選挙」を使いました。
これは閲覧者が5作品まで選んで投票の上、決まったもので第3回の2019年にもなると数千票規模で行われています。最近は出版社サイドが宣伝で使うことも。(個人運営のサイトでここまで影響力あるのも凄いですよね)

今回はこの中で上位30位までに入っていた作品の出版社(と掲載誌)を確認。
その上で出版社ごとにランクイン数をカウントしたいと思います。

調査結果

ざっと書いてしまえばこんな感じです。
凡例としては下記のようになります。
(順位)、(作品名)、(掲載期間)…(出版社)、(掲載誌)

1.やがて君になる(2015〜2019)…KADOKAWA、電撃大王
2.citrus(2013〜2018)…一迅社、コミック百合姫
3.熱帯魚は雪に焦がれる(2017〜)…KADOKAWA、電撃マオウ
4.ささやくように恋を唄う(2019〜)…一迅社、コミック百合姫
5.私の百合はお仕事です!(2017〜)…一迅社、コミック百合姫
6.はなにあらし(2017〜)…小学館、サンデーうぇぶり
7.あの娘にキスと白百合を(2014〜2019)…KADOKAWA、コミックアライブ
8.とどのつまりの有頂天(2018〜2019)…少年画報社、ヤングコミック
→(移籍・改題)雨でも晴れでも(2019〜)…KADOKAWA、電撃大王
9.加瀬さんシリーズ(2010〜)…新書館、ウィングス
10.行進子犬に恋文を(2018〜)…一迅社、コミック百合姫
11.付き合ってあげてもいいかな(2018〜)…小学館、裏サンデー
12.スクールゾーン(2018〜)…マッグガーデン、MAGxiv
13.still sick(2018〜)…マッグガーデン、MAGxiv
14.オトメの帝国(2010〜)…集英社、少年ジャンプ+
15.ふたりべや(2014〜)…幻冬舎コミックス、コミックバーズ
16.たとえとどかぬ糸だとしても(2016〜)…一迅社、コミック百合姫
17.将来的に死んでくれ(2016〜2019)…講談社、少年マガジン
18.徒然日和(2017〜2019)…一迅社、コミック百合姫
19.新米姉妹のふたりごはん(2015〜)…KADOKAWA、電撃大王
20.ゆるゆり(2011〜)…一迅社、コミック百合姫
21.不揃いの連理(2017〜)…KADOKAWA、コミックNewtype
22.2DK、Gペン、目覚まし時計。(2015〜2018)…一迅社、コミック百合姫
23.きみが死ぬまで恋をしたい(2018〜)…一迅社、ゆりひめ@ピクシブ
24.ルミナス=ブルー(2018〜2019)…一迅社、コミック百合姫
25.兄の嫁と暮らしています。(2015〜)…スクウェア・エニックス、ヤングガンガン
26.定時にあがれたら(2018〜)…祥伝社、マンガjam
27.できそこないの姫君たち(2018〜)…竹書房、ストーリアダッシュ
28.青い花(2004〜2013)…太田出版、マンガ・エロティクス・エフ
29.私に天使が舞い降りた!(2016〜)…一迅社、コミック百合姫
30.羽山先生と寺野先生は付き合っている(2018〜)…一迅社、コミック百合姫

色分けした画像版

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結果概要

ひとまず結果からいえば
一迅社:12作品【40%】
KADOKAWA:5作品【17%】(+1作品)
小学館:2作品【7%】
マッグガーデン:2作品
【7%】
その他9社(1作品ずつ)
【計30%】
となりました。(小数点以下を四捨五入しているため合計は100%になりません)

ランクイン数からいえばやはり業界唯一の専門誌「コミック百合姫」を擁する一迅社の圧勝(12作品, 40%)。
トップ5のうち3作品を占めつつ、「ゆるゆり」「徒然日和」などの日常系から、「citrus」「たとえとどかぬ糸だとしても」といったシリアス系まで広いレンジで取り揃えている印象ですかね。
やはりこのジャンルを支えてきた古参って感じですね。

しかし、ランキング1位と3位を占めたのはKADOKAWAでした。
ランクイン数こそ一迅社の半分程度の5作品であるものの、圧倒的1位だった「やがて君になる」やドラマ化もされた「新米姉妹のふたりごはん」を擁するなど、近年めきめきと百合業界での頭角を表している印象。
少年画報社での連載だった「とどのつまりの有頂天」も昨年末からはKADOKAWAの電撃大王に改題(「雨でも晴れでも」)の上移籍となった他、ランキング集計当時は単行本未発売であった「安達としまむら」もKADOKAWAの所管。控えめに言って強すぎるラインナップ。

実質2大勢力状態

今のところ、一迅社とKADOKAWAの2大勢力状態といえそうでしょう。
ただこの2社はやはり戦略には違いがありそう。

一迅社はもともと「百合姫」という業界唯一の専門誌の存在もあり、「百合姫」を軸に既存の百合ファンをターゲットとして据えている印象。

対するKADOKAWAは専門誌を持たず、「電撃大王」での掲載がやや多い傾向があるものの、その「電撃大王」もそもそもは百合読者を対象としていない一般誌。
2010年代から後発で力を入れだしたKADOKAWAにしてみれば、専門誌で「百合姫」と対抗して既存の百合ファンを取り合うよりも、一般誌に混ぜ込むことで百合のファン層自体を開拓していくことに活路を見出したのではないのでしょうか。
また、KADOKAWAはもともと「犬神家の一族」に代表されるようにメディアミックスにめっぽう強いことも、近年の急成長に貢献しているのかも。

意外と裾野も広い

とはいえ、上記2社が占める割合も6割弱程度で、小学館とマッグガーデンが2作品ずつランクインしている他、1作品のみランクインの出版社も9社に上ります。(個人的には「青い花」が「うみべの女の子」(浅野いにお)と同じ「マンガ・エロティクス・エフ」連載だったのがめちゃくちゃ意外。)

一迅社とKADOKAWAが実質的な業界の二大盟主となりつつも、業界自体の裾野が広がっているという感じで、割と将来性があるというか望ましい状態なのではないでしょうか。

ちなみに逆サイドというと違うかもしれないけど、BL業界との違いってどれくらいあるんでしょうかね。(詳しくないので誰か調べてほしい)

今回はこの程度で。


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