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たいせつな思い出と、大切な今。

若い頃、那須高原に住んでいた。
演奏を提供する仕事だった。

私の住んでいた寮の部屋は、素晴らしいロケーションで
関東平野が、ずーっと遠くまで見えた。
条件が良ければ雲海も見える。
山の中なので、朝は小鳥の声が森に響く。
空気が澄んでいて、夜は肉眼で昴が見えた。

春、
丁度今頃の季節、
新緑が、遠くの平野から山の中腹に住んでいる私のところまで、
ずっと押し寄せて来る。
その新緑は標高に合わせて 線になって登ってくる。

平野に住んでいると 気が付かない。
木々の芽吹きの色が、部屋の窓から見える。
波のように、横に引いた線になって日々迫ってくる。

昨日はまだ遠かったのに、今日はここまで新緑の線。
明日はもっと近くなるのだろう。
そしてその線は私の住む部屋を通り越して山の上へと登っていく。

秋は、その逆。
紅葉が山から降りて来る。
それは茶色い線で上から下へと降りて来る。
私を通り越して平野から緑が消えて冬になる。
雪が積もり、地面は凍り、パウダースノーが舞う。

当時はカメラも持ってなくて、
携帯電話もこの世にまだ出現してなくて
外部との連絡は10円入れる公衆電話のみ。

私の部屋にはテレビを置かなかった。
朝は、ラジオのバロック音楽で目覚め
昼休みや夜はクラシックのレコードをかけて過ごしてた。

飛んでいる電波はラジオくらい?
静かで、退屈で、穏やかな世界に身を置いていた。

いろんなことがあったけど、
今は楽しかったことがフルカラーで浮いてくる。
自然の中で過ごせたことが、
とても大きな宝物として
今の私のオーラの中に刻み込まれている。

しあわせな時間はいつでもあって
その時には気付きにくい。

今も大切な時間。
平和に暮らせていることに感謝。

明日も良い日に。





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