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意識「他界」系 その25

結局のところ、喧嘩の勝敗は場数の差で決まる。場数を踏めば踏むほど、相手・状況・自分のコンディションを瞬時に判断し、ベストな動きが出来る。

竜崎は一瞬で間合いを詰めると、手加減の無い下段蹴りをその太った女に見舞った。女は掴んでいたヤンキーを放り捨てると、竜崎の方に向き直った。左回りに首をゆっくり回してから両腕を突き出し突進してきた。

気合いもろとも竜崎は、前に出していた左手を後ろに勢いよく引いた。その反動を利用して右肘を女の顔面に叩き込んだ。カウンターで肘をもらった女は後方に吹っ飛び、景品の並んだ棚の全面を覆っているガラスを背中で割った。ポイントが溜まると交換できる、熊のぬいぐるみや時代遅れなCDコンポなどが床に散乱した。

手応えはあった。一般的成年男子でも、脳震盪で立てなくなるほどの一撃。柔道出身の竜崎であったが、影浦の指導で打撃系の技も熟練の域に達していた。

しばらく彫刻のように動かなかった女は、やがて顔面から硬いリノリュームの床に倒れこんだ。


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