【推し活】推しに会いに行った話
有給を取った。
推しに会えると聞いて、練習が公開しているその日に行ってきました。
以前、推しのサインを代理でお願いしてもらったので、そのお礼をしたかった。勢いで無印良品のお菓子を買った。
チームが公開練習しているその日は、よほどのことがない限りファンサービスをしてくれる。
この日は、サインもしくは写真撮影がOKの日だった。
他所のチームだとファンサービスも抽選であたった人だけ、などあるらしいけどこのチームにはそんなことは関係ない。
練習が終わって、選手たちは個人練習をしていた。
うまくなるためには練習だけでは済まないらしい。
個人で見つけた課題を克服するために、練習をしている。
やがて、1人2人と…選手がクラブハウスに戻ろうとしていた。
数メートル先に気になる人がいた。
(あれ…?)
そう思っていたら、その距離は近くなる。前の人がサインを貰っていた。
まさしく推している選手だった。
こっそり写真撮影をする。
そして、私の番が来た。
「これ、もらってください」
無印良品の袋に入ったお菓子を差し出す。
「ありがとう…これ、現金?」
冗談っぽく彼が言う。
思わず笑ってしまう。
「そんな訳ないですよー」
それしかいえなかった。現金を渡せる経済力なんてないし、彼だって冗談だとわかっていたから。
「またね」
そういって、彼はクラブハウスに戻っていった。
その後なんて全く覚えていない。
ただ、彼と初めて喋ったことぐらいしか。
名前しか覚えられなかったのに。
――もしかしたら、沼落ちってこんなことがきっかけなのかもしれない。