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【思い出語り】私が唯一、最大にハマった少女漫画「ふしぎ遊戯」

 私が子供の頃、90年代。少女漫画界にちょっとした「非ヨーロッパファンタジーブーム」が起きた時期があった。

 熱烈台風娘ホットタイフーン(1993年)
   …中国(西遊記)/現代
 天は赤い河のほとり(1995年)
   …ヒッタイト(現在のトルコ)/現代
 妖しのセレス(1996年)
   …日本(天女伝説)/現代
 夢幻伝説タカマガハラ(1997年)
   …日本(天岩戸)/異世界

 以上4作品上げた内、描いた作家は3人なので作家の好みだろ……とツッコむことも出来るが。当時確かに少女漫画誌に載っていた、それを許した出版社があったことを考えると、あれは確かにプチブームだった。

 恐らくそのブームの立役者はこれから語る「ふしぎ遊戯」だと思う。ふしぎ遊戯が連載を開始したのは1992年のこと。当時私は小学生になるかならないかくらいだ。だが私がこれに出会ったのは中学生の頃。本当に多感な時期にこれに出会って、そう、“はじめちゃん”で芽が出た「萌え」の感情を爆発させることになる。

 ふし遊は私に「推し」「2次元への恋」という概念をガツンと与えた神作だ。


西洋ファンタジー狂いだった私が初めて出会った「四神」


 あなたの「四神」はどこから?
 私はもちろんふし遊から!

 ということで、ドラクエで西洋ファンタジー愛を高ぶらせてるところに颯爽と現れた中国、四神の概念。元々私はドラゴンかっけー!! な子供だったので、するっと青龍の概念を受け入れた。ついで、主人公チームが属する朱雀の存在、その他の白虎、玄武。

 ふむふむ、中国には4匹の聖獣を信仰する文化があるんだな……。へぇ、星座も西洋のものとは違う見方、名前があるのか。二十八宿……ほぉおおおん。浪漫、だな…………。

 ふしぎ遊戯は四神(東西南北を司る)と中国の星座「二十八宿」を下敷きとした架空中華ファンタジーなので、私は元ネタを知るべくせっせと図書館に通った。結果、主人公サイドの朱雀、そこに属する七宿、敵にあたる青龍、その所属、と次々覚えて最終的に二十八宿全て脳みそに叩き込んだ。

 オタクあるある、実生活で全く役に立たないのに、好きすぎるあまり無駄に知識を詰め込む図である。

 結果……というわけでもないが、ちょっとだけ星座に詳しくなったのは一応収穫かもしれない。これも別にあまり役に立たないけど。まぁ、四神よりは使う……かな?

厨二真っ盛りの私を熱狂させた「異世界転移」設定


 さて、ここらでざっくりあらすじを紹介しよう。


 受験を控え、進路に悩む中学3年生の美朱はある日、親友のと共に図書館を訪れ、不思議な本に出会う。
 “四神天地書”
 と書かれたそれを開くと、2人は本に吸い込まれ、見知らぬ世界に飛ばされてしまった。

 辿り着いたのは、古代中国に似た小国紅南国。そしてその隣に位置し、軍事大国として名高い倶東国と紅南国は戦争の真っ只中。

 美朱は紆余曲折の後、弱小の紅南国を倶東国から守るため、自分の願いを叶えるため、朱雀の巫女と呼ばれる肩書きを得て七星士なる人物たちを探すことになる。


 めちゃくちゃ端折るとこんな感じかな。正確には「巫女が神獣を呼び出すと願いを3つ叶えてもらえる」という伝説があったから美朱は巫女になるんだけど……

 まぁ、浪漫の固まりだよね。

 まず、図書館というどこにでもある施設から異世界転移出来る浪漫。「読み終わると願いが叶う」という胡散臭い本の存在。さらに、巫女とそれを守る戦士というテイの元、自分にかしずいてくれるイケメンの存在。

 いい。

 私はこの作品にどっぷり浸かって、これを貸してくれた友達と「私たちの街の図書館にも四神天地書がないかなぁ」とひそかに図書館巡りをしたりした。黒歴史すぎる。
 でも、それもまた良い思い出。

 ふし遊はそれだけ魅力的なファンタジーだった。

無垢な私に降ってきた「逆ハー」という甘美な毒


 そんなこんなで、私はふし遊の世界にハマりにハマった。何より、剣だ! 魔法だ! 冒険だ! ばかりだった私の脳に、ついに女子らしい願望やら欲求やらが舞い降りた。

 イケメンに、モテる喜びである。

 メインヒーローは守銭奴ながら素手の格闘が強い鬼宿たまほめ
 対抗馬はイケメン、文武両道、皇帝というハイパースペックの星宿ほとほり(ナルシストなところも可愛い)。
 その他、頼れるお姉さんみたいな存在、かしましくも気を許せるオネエ柳宿ぬりこ
 元気ハツラツ、喧嘩っ早いが活発なムードメーカー翼宿たすき
 最年長のオトナ✕頭身が縮む不思議な妖術使い(?)の井宿ちちり
 穏やか、寡黙、医術が得意な軫宿みつかけ
 臆病ながら利発な美少年張宿ちりこ

 美朱の属する朱雀七星は、さすが主人公の陣営だけあってイケメン揃いだ!

 これが敵に回った唯ちゃん(青龍)はとなると、だいぶ……イロモノが増えるのだけど……読者は美朱の気持ちで読むからいいの! そう、気にするな!!

 とにかく、自分が美朱だったら誰を恋人にしようか……という贅沢な妄想で日々悩みまくったのはいい思い出だ。
 私は鬼宿たまほめが正直そこまで好きになれなくて、だったら星宿ほとほりの方が玉の輿だし最高なのでは? などと真剣に考えてしまった。

 漫画の話だけど。どうしても、「あれは架空だからのめり込んだって仕方ない」とは思えなかった。それだけ夢多き中学生の私には魅力的な物語だった。

 なお、私個人が真剣に選ぶなら関西弁&三白眼がかっこよくも可愛い翼宿たすきとゴールインしたい。だって星宿ほとほりとの関係はそりゃあ魅力的だけど、リアルに一国の皇帝と結婚したら色々大変そうじゃん……? だったら気楽に生きていきたいので、強くて守ってくれる&意外と優しい翼宿たすきがいい。

 そう、翼宿たすきといえば。ふし遊2部であれやこれや大活躍して、くれた。そう。えっちだった。多感な時期の私はキャーキャー言いながら例の下りを読んだ。そして、本気で美朱に嫉妬した。

 というのも、骨太なバトルファンタジーが繰り広げられる1部が完結した後の2部は、ファンサ展開多めのおまけみたいなお話で。

 翼宿たすきが美朱を押し倒すシーンが出てくるのですね。

 なんて! ハレンチなんでしょう! えっち! でも見た見た見た、美朱が羨ましすぎて何度も見たよチクショウ!!

 ふし遊は私にキャラ萌えキャラ恋の精神を華々しく与えた作品なのだ……。


少女漫画誌でバトル展開を真剣にやる、という挑戦


 一方、ストーリーの本筋も本当に良かった。私はそもそも、恋愛にそこまで興味ない女子だったので、美朱と鬼宿たまほめがどうのとか、自分が誰を選ぶなんてのは言わばおまけだった(初めて男性キャラを真剣に好きになったのはそれなりに衝撃だったけども)。

 その代わり、美朱VS唯の召喚レースはどちらが勝つのか、七星士ハントの行方、因縁深き青龍の将軍心宿なかごとの騙し合い……。あれやこれやの方がよほどそそられた。

 何より、少女漫画でわりとガチにバトルしてくれるのが新鮮で好感が持てた。私は惚れたはれたなんぞどーでもいい。それより、ドラクエやら当時の少年漫画やらから得た努力! 友情! 勝利!! の概念の方がよっぽど楽しかった。

 とはいえ、少年漫画は男の子が主人公のお話しか出てこない。男性向け作品で女主人公が珍しくなくなるのはもっと後の時代だ。

 ああストレスが溜まる。女子の私だってバトルしたい。セーラームーンの「銀水晶の力が……!(ピカーン☆)」じゃ足りない……もっと激しく、泥臭く、殴り合ったり斬り合ったりしたいんだ!!

 正直、私が子供の頃はプリキュアなど影も形もなかったのだけど。この頃の私にプリキュアが与えられてたら、めちゃくちゃハマっただろうなぁ。なぜかプリキュアは物理でバトルするのがセオリーらしいから。

 とにかく。少女漫画の範囲を越えて全力でバトルしてくれたふしぎ遊戯は、中学生にはなったものの女らしくなんてなりたくない私の心を優しく満たしてくれた。

 そうか、女の子がバトルを好きでもいいんだ。


 なお、その後大人になってから読んだ同時期連載の「天は赤い河のほとり」はさらにバトル/国取り、戦争要素が強くてめちゃくちゃ面白かった。子供(学生)の頃読んでたらあるいは難しかったかもしれないけど、主人公のユーリがめちゃくちゃサクセスしてかっこいい転移ものなので、興味がある方は読んでみてほしい。
 超オススメ。

興味があればぜひ。名作だからぜひ。


 というわけで。

 ふしぎ遊戯はいいぞ。

 もっと言うと、朱雀・青龍編(美朱&唯の物語)の他に玄武編(玄武開伝/最初の巫女、多喜子の物語)、白虎編(白虎仙記/2番目の巫女、鈴乃の物語)があるんだぞ。白虎編は今休載してるらしいけど……ハラハラ……出来れば渡瀬先生に頑張って欲しいけど……本当は少女漫画苦手なんて話も聞いたし……どうなることやら。

 ファンとしては完結させて欲しいけど、難しいのかな……うう。

 いや、とにかく最初のふしぎ遊戯は完結してるから。見よう。サンデーうぇぶりなら途中まで読めるぞ! 面白かったらぜひ続きも買おう!! よろしくな!!

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