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村上春樹の小説の生活に憧れる

 ハルキストと呼ばれる人になりたい。村上春樹は「村上主義者」の方が良いと何かで書いていた気がする。記憶違いかもしれませんが。

 早寝早起きして、仕事もプライベートも概ね良い感じに進む。そして全体的にお洒落。

 間違っても週刊誌の袋綴じを楽しみに生きて、仕事帰りにストロングゼロと半額総菜を買って帰り、灰皿からわかばのシケモクを拾って吸うおっさんが主人公にはならない。

 一見、作中のおしゃれ具合はマネができそうに思えてしまう。
 パスタも音楽も、早寝は無理でも早起きなら何とかなる。ように思えてしまう。食べ物はスーパーで買えるし、音楽は配信サービスを活用すればいくらでも聴けてしまう。小説通り真似るなら専門店で買うべきかも知れないし、音楽も中古レコード店を巡っているときに偶然見つけるべきかもしれない。
 でも、この田舎から交通機関を駆使して何時間もかけて都会に行き、パスタを買うような事は小説の主人公はしないと思う。多分そんなことをするくらいなら近所のスーパーで買うのではないだろうか。
 真似のハードルはかなり低い。

 しかしこれがワナだ。

 実際に試してみると分かる。
 台所をピカピカに磨いてパスタを茹でても、ジャズを聴きながらコーヒーを飲んでも、早寝早起きしても、外を走ってみても、村上春樹の世界には入れない。
 ただ食事をして、ただコーヒーを飲んで、ただ早寝早起きしただけ。
 現実は何も変わっていないし、世界が変わって見えることもない。
 小説の中の世界は小説の中にしかないということを実感する。

 おそらく、作中の生活は楽しい生活の一例として捉えるべきなのだろうと考える。
 主人公は外国の小説と古い音楽が好きだからそれを楽しんでいるのであって、もし本よりゲームが好きならそっちを選ぶだろうし、ビールよりエナドリが好きならそっちを飲むだろう。
 
 もし、どうしても作中人物と同じ生活を楽しみたいのなら、趣味から考え方まで全部を同じにそろえる必要がある。

 家中の春樹らしからぬ物はすべて焼却し、本棚は作中に登場する作家の作品のみにする。服も名の知れたブランド物だけにして、シャツにはすべてアイロンをかける。すべてを理解してくれる女友達を作り、古い映画の話ができる知り合いを作らなければならない。仕事は時間的に自由のあるものに転職し、etc.......

 当然無理な話なのだけど丁寧な生活に憧れる人にとっては、大変魅力的だと思う。私も丁寧な生活をしたいし、全部は無理でも少しぐらいは真似したくなる。実際、生活を整えること自体にデメリットはなさそうですし。
こまめに掃除して、ちゃんとご飯食べて夜更かししない。
生活上の決断も「あの主人公なら~」という軸で考えると随分行いやすくなると思います。自分の考えがないといえばないのですが、そういう決断を積み重ねていくうちに自分の素の考え方も小説の主人公の考え方に置き換わって、アップデートされるのではないでしょうか。

 というわけで最近再び春樹ブームが私の中で始まっている。
 丁寧な生活を心がけたい。
 健康そうだしボケ防止にも良いかも知れない。

やれやれ、また取り留めのない文章になってしまった。
 

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