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#小説

宙、つめたく冷えて

 横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁…

摩撫甲介
2年前
33

空に噛みつく青い鳥

  犬の群れが追う。  ドアを叩きつけ、もつれる手で鍵を刺す。  ロックが掛かり、吠え声…

摩撫甲介
2年前
31

ホールケーキはもう出ない

 母さんは昨日のことが嘘みたいなニコニコ顔のまま、お皿を2つ、僕とカナの前にそれぞれ置い…

摩撫甲介
2年前
30

地獄も投げ出した家にて

 ナカモトの家の玄関は広く、すっきりとしていた。新品のスニーカーが1足だけ。起爆装置のひ…

摩撫甲介
3年前
19

牙に生え変わるとき

 まず通帳を、次に結婚指輪をフロントガラスに投げつけた途端、リョーコは閃光と轟音にやられ…

摩撫甲介
3年前
26

そしてあの子はいなくなる

 昼過ぎに玄関のチャイムが鳴った。  家事を終えたばかりのアリアが玄関の戸を開けると、黒…

摩撫甲介
3年前
63

休息の死角

 ゼルベスはトイレから戻るなり、濡れたままの手で紙容器の中のチキンを引っ掴んだ。 「ったく、こりゃあひどいもんだな」齧りながら言う。 「酒のせいでしょ」  テレビに視線を向けたまま、奴の正面に座った『汁なし』が缶のアルコールを啜る。 「次は高いのにしなよ。あーあ、喉が焼けそう」 「ここんとこ日照り続きでよ、悪かったな」 「そう」  それからふたりは二、三の会話を交わしながら食事をした。  しばらくして『汁なし』が椅子から立ち上がった。ゼルベスは一瞥し、片手のチキンを骨にした。

友情よ今いずこ

 コワルスキーが仕事場で本日18人目を切り分けていると、特別室のザッパーから呼び出しを喰…

摩撫甲介
4年前
22

逆噴射小説大賞の結果について

 おれの事は摩部甲介と呼んでくれ。増長した結果、こうやってガチガチキーボードを叩いている…

摩撫甲介
4年前
23

神々のトリッガー

 このところ、おれの標的を隕石に横取りされている。さっき5人目が死んだ。  電話口でボス…

摩撫甲介
4年前
11

月の光が人を焼く

 私を縛る縄が痛いけど、舌の感覚もなくなったから言えなかった。  殴られすぎて頭がパンパ…

摩撫甲介
4年前
19

大統領の世界みなごろし大作戦

 アメリカの大統領が世界各国のテレビ衛星をジャックして、生放送を始めた。 「国民、ひいて…

摩撫甲介
4年前
42

血だるま放浪記 黄金の吹雪

 雪まみれのメッコングを丸机の上に投げ落とすと、酒場の酔漢どもがどよめいた。  店主曰く…

摩撫甲介
4年前
14

人生の悪役

 幸八は3歳の娘を殺してしまった。例の怒りの発作が起きたのだ。  昼飯時のフードコートで、ハンバーガー越しに顔面をガラスコップに叩きつけたのち、破片で喉を抉ってやった。  我に返ったときはもう遅い。 「ち、違うんだ。娘の自殺を止めようとしたんだよ、本当だ。なっ」  弁明の後、幸八はぐったりした娘を放り捨ててその場から逃げ出した。  信号を無視してクルマをぶっ飛ばし、新築の一軒家に幸八は帰宅した。  血まみれの服を脱ぎ捨て、いじめのフラッシュバックに悪態をつきながら準備を始め