チーム作業の心理

チームで長期的な作業を行う際の心理的な留意点を考察してみた。

まず、心理学観点の社会勢力として、以下の5つがある。

French & Raven (1959)は、勢力を影響の送り手(O)が受け手(P)に対して持つ潜在的な影 響力(Pの心理的変化を引き起こす力)の最大値と定義して、その基盤を次の5つに分類した。 
a.報酬勢力(reward power)「OはPに対して与えられるべき報酬の有無や程度を決定する能力がある」というPの認知に もとづく影響力。
b.強制勢力(coercive power)「Oからの影響行使にPが服従しなければ、Oから罰を受ける」というPの予想から生じる影 響力のことで、報酬を与えないことが罰になると考えれば、報酬勢力と強制勢力は等しいものとな る。
c.正当勢力(legitimate power)「OにはPに対して影響力を行使する正当な権利があり、PにはOに従う義務がある」という 価値をPが内在化していることから生じる心理変化のことで、Weber(1921)の「権威の正当性」 に当たる概念である。価値の基盤としては、文化的に共有された価値、社会や集団の権威のヒエラ ルキー(階層)構造、正当な機関からの任命が上げられる。
d.準拠勢力(referent power)Oに対するPの同一視(Oと一体である、一体でありたいという気持ち)にもとづく影響力。
e.専門勢力(expert power)「Oがある特定の知識、技能などについて専門的な能力を持っている」というPの認知による 影響力で、OがPの集団に属していない場合には「情報勢力」と呼ぶ。
日本労働研究機構(現、独立行政法人労働政策研究・研修機構) 雇用管理業務支援のための尺度・チェックリストの開発

複数人で長期的に作業を行う場合、どの勢力が最適かを考察する。最適の目標は、各自が自主的・積極的に作業を行い、隙間時間に勉強や教え合うことでスキルアップ・作業改善を行うこととする。

この場合、一般的に報酬は限られているため、報酬勢力では、頑張った者でも望んだ報酬が得られなくなることで崩壊する。また、好きなことは記憶力が3倍になると言われているので、無理強いをさせる強制勢力ではスキルアップ・作業改善の効率が悪くなる。いわゆるカリスマ性の準拠勢力についても、ワンマンチーム以外では、チーム作業の方針を1人で決められないため、いずれカリスマ性が喪失される蓋然性が高い。

したがって、残りの正当勢力及び専門勢力か最適となる。具体的には、基本的には作業の主任が正当勢力で作業をさせ、作業内容に納得できないなどの問題が起きた際には専門勢力を用いて解決する。

後、人間はしてもらった親切と比較して、してあげた親切を35倍記憶しているらしい。このことをチームで共有して何らかのルール化(何かをしてもらったら親切ポイントを付与して表彰するなど)することは、チームのストレス軽減・公平性・平等性に非常に大切である。