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2024年1月の映画鑑賞記録

1/3 ミッシェル・ガン・エレファント THEE MOVIE
2009年に公開された作品のリバイバル上映。もちろん昨年末に亡くなったチバユウスケを追悼する目的だ。 当時も観たが、やはり今こそ観る必要がある映画で、リバイバルしてくれた事に感謝。 内容は、彼らのラストライブを中心に、デビュー当時やフジロック出演の時の映像が時折挟まれる構成。 映画としては、ライブ映画であると同時にど直球な青春映画とも言えると思う。 不器用な若者たちの栄光と挫折がそのまま伝わってきて熱い気持ちになった。
映像の中のミッシェルはめちゃくちゃカッコよかった。



1/5 窓ぎわのトットちゃん
黒柳徹子原作のアニメ映画。 原作の事はよく知らず、話題の映画という理由で観たが、ゴリゴリの反戦映画で驚いた。徹子は変なおばあちゃんのイメージしかなかったけど、こんな体験をしていたのかと思うと背筋が伸びる思いがする。
前半の無邪気なパートから後半にかけて徹子が現実を知っていくまでのコントラストと、子供の目線を意識したカメラワークがめちゃくちゃうまい。すごい映画です。

1/7 VORTEX
認知症の妻と、心臓病をかかえる夫の老夫婦が主人公。 なんといっても特徴は終始2分割されて進行する物語。 片方で妻、片方で夫という感じで、二者の想いや行動がリアルタイムで交錯していくのはめちゃくちゃスリリング。映像そのものは極めて淡々としているので、そのバランスもものすごくよく考えられているのだろうなと思う。フィクションなのに、ドキュメンタリー映画のような撮り方なのがまた不思議。心臓病の夫の方が先に逝ってしまうのだけど、片方の画面が真っ暗になってしまう演出はこの映画ならではのエモーショナルな演出で、これやるために企画したんじゃないかと思うほど。うますぎるなと思った。
もし身の回りの誰かが認知症になったとしたら、俺はどんな振る舞いするんだろうと考えた。


1/19 哀れなるものたち
めちゃくちゃ楽しみにしてた本作だけど、期待を裏切らない大傑作だった。 140分の長尺作品だけど、シリアスとコミカルのバランスが絶妙で、ダレる事なく観れた。モノクロからカラーに切り替わるところでめちゃくちゃ笑ってしまった。 フェミニズム的な観点でも語られる本作だけど、純粋にエンターテインメントとしてめちゃくちゃ力があるので、余計な事考えずに観る方が正解なような気がする。
主演のエマ・ストーン、個人的なイメージではアメスパのヒロイン役や、ゾンビ映画のかわい子ちゃん役みたいな、まあまあテキトーな役柄でしか認知してなかったのだけど、すごい俳優なんだなというのを認識できたのはとてもよかった。 この先ティルダ・スウィントンのような変幻自在の俳優になって欲しいなと願う。

1/21 カラオケ行こ!
ヤクザと中学生がカラオケを通じて心を通わせていくという謎の設定のコメディ。この手の映画にこういうツッコミは無粋なのかもしれないけど、見終わった感想としてはやはり『ヤクザと中学生』の組み合わせはどう考えても無理があって、力技でもいいからそれを納得させてくれるようななにかが欲しかったなと思う。漫画原作というのを差し引いても、実写映画である以上は守るべきリアリティラインはあるのではないか。結末にも疑問がある。やはり主人公は、自分のいるべき舞台(合唱祭)の中で、やるべき事を全うさせる方が美しいのではないかと感じる。中学最後の合唱祭を蹴ってヤクザのカラオケ大会に乱入して一曲歌う…。そりゃないよ!!
後輩とのあいだで生じる軋轢の描写も不完全なままなし崩しで解決した事になっていたり、やり切れてない部分が多いなと思った。綾野剛演じるヤクザが車ぶつけられる描写も、なんで?だし、紅という曲のチョイスも結局なんで?だし、説明すべきところはきちんと説明すべきなのではと思ってしまう。
最初に期待したのは『ちびまる子ちゃん 大野くんと杉山くん』のような、主人公と後輩の仲直りと大団円だっただけに、個人的には色々モヤモヤする点が残った。
そう言った部分を気にせずに観ると、セリフや演出は気が利いているし、笑える描写もたくさんあって、コメディとしてとても楽しく観れる。綾野剛はかっこいい。見終わったあとにチャーハン買って帰りました
俺が真面目に見過ぎな部分はある気はする。

1/23 枯れ葉
オシャレなアートワークに惹かれて観た。
まるで70年代映画のような質素な舞台、撮影で、観る映画間違えたかなと思うほど。しかし、作中に流れるラジオがウクライナvsロシアの戦況を伝えていて、現実世界である事がわかるようになっている。 その割に、スマホのようないかにも現代っぽいアイテムは明らかに意識した上で排除しており、監督の見せたい世界がやはり70年代的なものなんだなと思わせる。
観ていて、たけし映画に似たセリフ回しや間を思い起こしたのだけど、監督の事を調べてみると、小津安二郎や黒澤明に影響を受けているという話らしく、そこから北野武風味を感じとった俺、我ながら鋭い。

1/27 みなに幸あれ
邦画ホラー。監督にとっては長編第1作。
『誰かの犠牲によって誰かの幸せは成立している』というテーマだけど、これをヒューマンドラマとして描いてしまうと、紀里谷和明映画のような危ういものになってしまうと思う。それをホラーという切り口で表現したのは『なるほど』と思った。 プロデュースをしている清水崇は「A24のような映画が日本から出てきた」と言っていたけど、たしかにそれはその通りだなと感じる。テーマに対して考えると、あの描写は一体どういう意味?というのが不明瞭なパートも多く、勢いで撮った部分も多いのかもしれない。
監督が今後どんなものを撮るのか気になります。

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