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2024年3月の映画鑑賞記録

3/1 夜明けのすべて
2回目の鑑賞。あまりによかったので一回目を観た帰りにその足で本屋に寄って原作本を買った。ラストシーンのプラネタリウムでの詩『夜明け前がいちばん暗い』をしっかり噛み締めるため、というのが大きい。しかし、原作を読んでみると、面白い本である事はたしかなのだけど、内容は映画とは結構な部分で違っており、読みたかったプラネタリウムのくだりはばっさり無かった。クライマックスはまさかの映画のオリジナル展開だったのだった。
2回目の鑑賞で気づいた事で1番嬉しかったのが、主人公が勤める会社のホワイトボードに、社員名のマグネットが貼ってあるのだけど、古株のメンバーは古びたマグネットで、若手2人のマグネットはちゃんと新しめのものになっていた事。芸が細かい!!
鑑賞後、一縷の望みをかけてパンフレットを購入してみたところ、パンフレットに『夜明け前がいちばん暗い』、掲載されていた。やったー!

3/8 映画ドラえもん のび太の地球交響楽
音楽がテーマという事と、その音楽を担当しているのが服部隆之氏であるというので興味をもった。ひとえに音楽をテーマに掲げるのは大変な事だと思う。例えば宇宙がテーマとか、恐竜がテーマとか、友情がテーマとかであれば、まあなんとなく作れてしまうのだろうなという気がするけど、音楽という形のないものを映画としてしっかり表現しないといけないのだから、相当チャレンジングな企画だと思った。
そのあたりをどう見せてくれるんだろうと期待をしながら観たのだけど、期待以上にしっかり音楽映画をやっていて、目から鱗が落ちた。今回の敵は、音楽に反応して身体が弱っていくという設定で、文字通り地球を丸ごと飲み込むようなサイズで、映画ドラえもんとしては過去最大のスケール。あの化け物と果敢に対峙するのび太たちは頼もしかった。正直、ストーリー自体は甘々で大して面白くはないんだけど、今作の主役はストーリーよりも音楽なのでそれでOK。ミュージカルを観に行くような気持ちで観るのが正解だと思う。そして、オープニングムービーが超すごい!
僕の甥がアニメーターをしているのだけど、この映画にも少し関わっているらしい。自分の生活に身内の仕事がナチュラルに入り込んでくるのは熱いものを感じる。
 そしてこの日は、鳥山明の訃報があった。心ざわついていたのだけど、訃報の前から予約していたこの映画を予定通り観れたことで、いい具合に気持ちを均してくれた感じがあった。このタイミングで観れてよかった。

3/15 i ai
GEZANのフロントパーソン、マヒトゥ・ザ・ピーポーの初監督作。GEZANは好きでも嫌いでもないけど、わざわざ映画を作るくらいなのだから、なにかあるんだろうと気になって観た。 大切な人を失った人達が、どうやってそれを乗り越えるか、みたいな事に向き合う青春群像劇(多分)。
GEZANのイメージカラーと同様、赤を印象的に使うのが特徴で、印象的なビジュアルがたくさん差し込まれて目に面白かった。一方で海のある街が舞台だったり、空も広いので、青の使い方も印象に残った。
 映画としては、色んなキャラクターがいるにはいるけど、どのキャラにももうひとつ共感ができなかったのが残念だった。 多分、この映画で監督が1番やりたかったのはラストシーンの主人公の独白だろう。 急にカメラ目線になり、観客に向けて語りかけてくる。『この映画が終わったら、今度はお前の物語がはじまる。お前の話を聞かせてくれ』みたいな感じの熱いメッセージ。 僕は、自分なりに目標を持って日々の生活を送っているので、言われなくても自分の物語を生きているつもりはあるのだけど、他の客にとってはこのメッセージをどう受け取るのだろうと逆に気になった。観た人の感想聞いてみたい。

3/16 14歳の栞
公開から4年経ってるという超ロングランの映画。近所でやっていたので初めて観た。実在の中学校の、実在のクラスにスポットをあて、実在する一人ひとりのパーソナリティに迫るというドキュメンタリー映画。
14歳、中2の男女にどんな社会や関係性があるのかというテーマが面白くないわけがないけど、一方で、淡々と撮ってても面白くなるわけもない、というテーマでもあると思う。そこを神業のような編集で軽妙に映してくれて、さぞかし惚れ惚れした。スポットを当てたのが仮に中3だった場合、どうしても卒業がゴールにならざるを得ず、ありきたりなものになりそうだけど、中2にスポットを当てたの絶妙かつ誠実で、チャレンジ精神を感じた。
この子たちの人生はまだこれからはじまるところなので、タイトルに『栞』とつけたのはめちゃくちゃ粋だなと思った。
クリープハイプによるテーマソングもとても合っていて、切ない気持ちを呼び起こし、良いドキュメンタリーだったなという気持ちで終われた。
前日に観た『i ai』のラストシーンの独白が、この映画の存在自体にそのまま繋がっているような気がして、勝手に伏線回収ができたような気分でひとりエキサイトした。


3/19 12日の殺人
フランスの田舎町で少女が殺され、その犯人を探す刑事たちの話。フィクションではあるけど、実際の未解決事件をモチーフにしているらしい。 そういう意味で、『殺人の追憶('03)と似ている部分はあるけど、それに比べるとだいぶドライな作風なように見える。
捜査が行き詰まっていく過程がリアルに描かれていて、画面を通して捜査をみていると、テレビのクイズ番組を見ている時みたいに「そうじゃないでしょー!」とか「もっと出来ることありそうじゃん」とか思わなくもないんだけど、現実の刑事の捜査も案外あんなもんなのかもなーとか思うようなリアルさがあった。「同じ事柄でも、角度を変えれば色んな側面にたどり着く可能性がある」という事を言いたい映画なのかなと思うけど、もうちょっとコンパクトにまとめられるような気もした。
青と赤の使い方がめちゃうまいアートワークがとても好みです。

3/22 変な家
ベストセラーの映画化。原作が面白かったので、映像化するとどうなってるんだろ〜という興味で鑑賞。面白かった! 基本的な設定はしっかり残し、特有の不穏さも残し、しっかり作られているとは思ったけど、改変部分はちょっとトゥーマッチだったような気はした。きっと映画ならではの派手な絵を求めてやった事なのかもしれないけど、この映画のやるべき事は、いかにドメスティックに語れるか、じゃないだろうか。あのお面の人たちがたくさん湧いてくる演出は作品の解像度を落としてるような気がする。あと「結局あの演出なんだったの」みたいなシーンもちょいちょいあるけどまあ想定内。楽しめました。

3/24 DUNE 砂の惑星 PART2
池袋のIMAXレーザーGTで鑑賞。PART1がなかなかに地味な仕上がりで、面白味を見つけらずほとんど覚えてないくらいなんだけど、今作は予告の時点でかなり良さそうだった。
感想としては、ど直球のSF大作。めちゃくちゃかっこいいメカやアクション、壮大なロケーションと、全てにおいて完璧に仕上げられたエンタメ大作だった。大満足なんだけど、個人的なところとしてはPART1の内容を覚えてなさすぎた事もあるし、そもそも彼らの英雄譚にそこまで興味も持てなかった事もあり、ストーリーにはもうひとつ入っていけなかった。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はとても好きな作家ではあるのだけど、ここ数年はブレードランナーなどの明らかな雇われ仕事が目立ちすぎているので、ここらで『メッセージ』のような、自分の映画を撮ってほしい気持ちはとてもある。しかしDUNEはPART3にも続くような話があるらしい。もうええて〜

3/26 ビニールハウス
韓国のサスペンス。すっごく良かった!
ビニールハウスを住居にしているいわゆる貧困層の妙齢女性が主人公。そんな生活を立て直すため色々と奮闘している中で、ある事件をきっかけにピタゴラスイッチのごとく物事が悪い方に悪い方にカチカチはまっていく、という感じの話。なんでこんな悲惨なシナリオ思いつくのっていう、見てらんないような内容なんだけど、だからこそ目が離せないという映画でもあった。
伏線の立て方がうまく、あの描写がここで生きるのかー!という気持ちのいい映画的快感もしっかりあり、不謹慎なのかすらよく分からないけど、なんだか笑ってしまうような描写もしっかり用意されてる。めちゃくちゃうまい映画。監督はまだ29歳の女性という事らしく、この先ドンドン大きくなりそう。イ・ソルヒさん。

3/29 あの夏のルカ
ピクサーがコロナ期に発表し、配信でしか公開していなかった作品を時を経て劇場公開しましょうという企画。 僕はDisney+をやっておらず、ずっと観れずにいたのでようやく観られてよかった。 安定のピクサー作品で、丁寧に作られてるなあと感じる一方で、シーモンスターの掘り下げ方がもう一歩足りてないのではと感じた。 海のシーモンスターであるルカは人間の姿に化ける事が出来るけど、水に触れると正体がバレるという設定で、バレないように人間と交流を深めていくという話。 クライマックス、不測の事態で正体はバレてしまうんだけど、あれだけではただの成り行きでしかないので、もうひとつ弱いんじゃないかと感じた。
例えばジュリアの身になにか危機が起こって、正体がバレるの覚悟で濡れながらジュリアを助けにいく、みたいな展開の方が街の人の信頼を勝ち取るシーンとしてはわかりやすかったのではないかな?とすごく思った。そしておそらく監督はめちゃくちゃジブリの影響受けてるんじゃないかなと表現の端々に感じた。

3/31 ペナルティループ
近年、邦画で妙に増えているタイムループもの。去年3本も観た(『MONDAYS』『リバー、流れないでよ』『神回』) 似たテーマの中での監督それぞれのアプローチが楽しいので、これはどんなものかと思って楽しみにしていた。 一般的ループもののルールはだいたい、突如迷い込んでしまったループ世界から抜け出すべく、ループを繰り返しながら色々策を練るという感じだけど、今回のは迷い込むのではなく、自らループ世界に入っていくというのが大きな違い。 恋人を殺した犯人を何度も何度も殺すために。
これだけ聞くと、おどろおどろしいものをイメージするけど、この映画ではめちゃくちゃポップに描かれており、クスクス笑ってしまうほどの不思議なバランスの映画。 主演の若葉竜也と伊勢谷友介、どちらもすごくうまかった。
そして若葉竜也の恋人役の山下リオ、はじめて知った俳優だけど、めちゃくちゃキレイでファンになってしまった。
オチも含めて、極めて現代的な内容だった。面白かったです。

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