無題

暗くて青がかったグレーに浮かぶ白、赤の光
ぼーーーーっと吐き続ける生暖かい風
揺れる雑煮
耳を立ててじっとしているうさぎ
ふんわりとしたピンクで羊柄のおふとん
裏返しのアンネの日記
ただの下着

いまみえる
いまきいている
そのぜんぶをわたしは忘れる
いま今の風景をもう思い出せない

何もかんがえていない
何も特別ではない
いちばん目にしているものから順に
わたしは忘れる

覚えていられるのが
いつも通りじゃない、
一瞬だけの集まりだとしたら
それはなんだか
申し訳ないことだなと思う
さみしいことだなと思う

一緒にいた時間が長いものほど
心に留まらないだなんて

じゃあ何が心に残るんだ
わたしは死ぬとき何を思い出すんだ

歓声を浴びた拍手を浴びた
そんな幸せで溢れた一瞬よりも

白、赤の光
生暖かい風
雑煮
うさぎ
羊柄のおふとん
アンネの日記
下着

ながいあいだ纏っていた
知らずにそばに眠っていた

そういうものたちを
せめてもの気持ちを

ゆっくりゆっくりと
走馬灯のように眺めていたい

#詩 #創作 #毎日note

アイスを買います