乗り換え、人生 1

陽のあたる川沿いにて
東京のことは分からない。べいん、と低い音が指先で鳴った。ハチ公もネオンも、名前だけは知っていて、触れられない遠い世界のように思える。びいん、音と共に安いチューナーが光る。街を、市を、県を、国を越えれば、いまの僕と同じように音を鳴らす人が居るのだろうか。

星見えぬビル風の隙間にて
喧騒のなか、今日も観客は閑古鳥だけ。ケースを閉じてギターを背負って帰路に着く。苦楽を共にした仲間も結局は自分から、音楽から離れていってしまった。続ける意味はあるのか、定職に就いて働いたほうがいいだとか、貰った言葉や現実を踏み締めながら改札を抜ける。音楽って、何だろうな。この電車を乗り継いで、ギターひとつ担いでヒッチハイクなんかしたら、何かひとつでも自分や現状は変えられるだろうか。そんな勇気は今日も乗り換え駅のホームで轢かれて死んだ。


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