YouTube広告とフリーミアムについてクリエイター目線で考える。

先月、YouTubeの規約変更で全動画に広告が表示されるようになるという発表がありました。日本での適用は2021年6月1日からということで、すでにかなり広がってる様子ですね。

YouTube広告やフリーミアムについて思うことがいくつかあったので、クリエイター目線での個人的な意見をそっと置いておきます。

クリエイター目線の意見

僕のチャンネルには広告をつけていない動画がたくさんあります。

それは僕の動画のほとんどが1本3分前後の音楽コンテンツなので、視聴者さんになるべくストレスなくBGM的に聴いてもらえるようにしたくて意図的にそうしています。なので今回の規約変更によってすべての動画に広告が入ってしまうのは不本意であり、かなり残念です。

しかし、YouTubeというプラットフォームを通じてたくさんの人が僕の曲を聴いて楽しんでくれていて、現在チャンネル登録者数は1.5万人を超えています。YouTubeがなければこの1.5万人の皆さんにリーチできなかったと思うので、YouTubeがより繁栄してくれる方がメリットがあるかな、とも考えています。

視聴者目線の意見

視聴者目線で言えば、シンプルに広告ってジャマですよね。はやく動画を見たいのにうっとおしいな、ってつい思っちゃいます。テレビでもリアルタイムで見るとCMが長くてかったるいので、録画した番組をCMスキップして見てます。

今までは広告が入らなかった動画でも、「これからはすべてCMを見ないと動画を見れませんよ」とルールを変更されたわけです。いち視聴者としてはやはり「今まで快適に見れていたのにめんどくさいな~」という気持ちをなんとなく抱いてしまうところはありますよね。

作曲家だけのあるあるかもしれませんが、テレビやYouTubeのCMでたまに自分の曲が使われていて「おっ!俺の曲じゃん!」ってなってうれしくなるときだけはたまにはCM見るのも悪くないな~とは思います。笑

とはいえ、僕自身はYouTubeプレミアムがリリースされた当初から「月額1000円程度でCM完全非表示とか最高じゃん」と思ってバリバリ使っているのでここ数年はまともにYouTubeでCMを見ていないし、今後も見ることはないかなと思います。

僕のようなヘビーユーザーにとっては「有料プランにすればCMは一切見ずに快適に楽しめる」という選択肢がちゃんとあるのはむしろありがたいです。

「YouTubeですべての動画に広告が入るようになる」という記事

規約変更される前にBLOGOSで「YouTubeですべての動画に広告が入るようになる」という記事が公開されていて、ふと目に入ったので読んでみたら、自分の思うこととギャップがあって驚きました。

「動画に広告が入ることが、YouTuberの証」「広告が入るのが、ひとつのステータスにもなっていたように思う」(記事本文より引用)

広告は広告で、ステータスとは僕は一度も思ったことないけど、誰がそんなこと言ってるんだろうか??

まぁ自分でチャンネル運営をしていて、まだ広告をつける条件を満たしていない人にとっては「はやくチャンネル登録者1000人/総再生時間4000時間を壁をクリアしたい!」という思いから、そういう感覚もあるのかもしれない。

とはいえ、実際ほとんどの一般視聴者にとってはどれも同じただの広告じゃないのかな。世の多くの人はYouTubeを見るのがメインで自分のチャンネルを持たない人だろうから、「広告が入るのがステータスだ!」と考える人はかなり少ないんじゃないかな。

”昔はパートナープログラムの最低条件がなくて、弱小チャンネルでもクリエイターの配分はわずかながらも発生していた。すべての動画に広告を入れるのなら、昔の条件に戻してもいいのでは?”(記事本文より引用)

昔と今のYouTubeの規模は何十倍、何百倍の差があるんだろう?あの頃YouTubeを見る人はある程度いたけど、動画を投稿する人は身の回りにほとんどいなくて、どちらかというとYouTuberは嘲笑の的だった。

今では身の回りに「YouTubeチャンネル始めました!」って人がたくさんいる。音楽やってる仲間やコンテンツクリエイターに限らず、職場にも、同級生にもいるレベルの普及率だよね。

それに、当時と今でアップされる動画の長さ・画質・容量は圧倒的に違う。当時は長尺の動画はアップできなかったし、せいぜいHD画質だった。でも今は数10分~数時間の長尺も当たり前だし、画質も4Kが主流で、8Kも対応してる。しかも過去の動画から今この瞬間にアップされている動画、すべてがアーカイブされている。

さらに、サービス自体も拡充してライブ配信とかスパチャとか新しいサービスも増えてる。いくら景気が良さそうに見えても運営や維持に膨大なコストがかかっていることは容易に想像できますよね。

ちょっと調べてみたら「YouTubeは全インターネット人口の約3分の1を占める10億人以上のユーザーに利用されており、1日あたりの動画視聴時間は数億時間、視聴回数は数十億回にものぼり、1日で100年分を超える動画がアップロードされている」らしいです。

これだけの膨大なデータ通信を安定して運用するには、それこそ途方もない苦労とコストがかかっていることでしょう。

このBLOGOSの筆者はそれを考慮した上でも「どんな弱小チャンネル(極端にクオリティーの低い動画・チャンネルなど)であっても全ての動画に広告をつけたらそのぶんの収益を全部支払うべき」とでも言うのだろうか?ある程度の線引きが必要ってことくらいすぐ分かりそうなものだけど。

「フリーミアム」の向こうにあるものとは?

生まれたときからYouTubeがあった子供たちにとってもはやあるのは当たり前で、YouTubeを見たことない子の方がレアなくらいです。20~30代くらいの人たちもまたごく自然に日々YouTubeを視聴しているはずです。

40~50代の人も子供の影響で視聴してたり趣味系のチャンネルを見てる人も多い印象。60代以上の人たちでも視聴している人はいるでしょうし、最近ではテレビでも「YouTube再生回数○○○万回の動画!」「チャンネル登録者数○○○万人の有名人!」なんてしょっちゅう耳にしますね。少なくとも「YouTubeの存在を知らない」という人はほとんどいないでしょう。

もはやインフラといっても過言ではないレベルで世界中に定着しているYouTube。莫大な利益が発生していると推測できますが、一方で莫大な運営費用がかかっているのも想像に難くありません。それでいて開設当初からフリーミアム(基本的な機能は無料で利用できる)を徹底しているわけです。

そもそも、なぜ我々一般ユーザーは無料でYouTubeを視聴できるんでしょうか?

それは一部の有料ユーザーと、たくさんの広告主がいるからです。

有料ユーザーは月額1000円払っているYouTubeプレミアムの利用料、スパチャ(投げ銭)やメンバーシップの手数料であり、そして広告主というのがまさにCMを出稿している企業です。

もちろん有料ユーザーも増えてきていると思いますが、一部の調査ではYouTubeを利用するユーザーの比率で言えば実際に課金しているのは1~2割程度というデータもあります。

だとすれば、広告主である企業から得る広告費がYouTubeの主たる収益源と言っても過言ではないでしょう。YouTubeは広告の存在によって無料で見てる状態が維持されている。

無料の向こう側には広告主の存在があるわけです。

誰かがどこかで対価を払っている

YouTubeに限らず、世の中のあらゆるサービスはすべて誰かの労力や資金によって支えられています。どんなに無料で享受できるサービスでも人間が運営している以上は必ず運営するためのコストがかかっています。

当たり前のように使っているGoogle検索も、ツイッターやインスタ、フェイスブックなどのSNSもそう。無料で遊べるソシャゲもそう。街中にあるタウンワークなどのフリーペーパーもそう。

たしかにCMや広告がジャマだなと思うこともあるけど、その広告による収入でプラットフォーマー(サービスを提供する側)が利益を得ているおかげでエンドユーザー(末端消費者、つまりただ視聴するだけの人)は無料でそのコンテンツを楽しめるのはまぎれもない事実。

課金ユーザーが広告非表示で視聴できるのは当然その対価を払っているからですが、無料で視聴してるユーザーは何の対価を払っているか?といえば「広告を見る時間」です。無料で視聴してるユーザーの代わりに企業がその広告費を払っているので、YouTubeは成り立っているわけですね。


よく無料や広告付きの製品について言われる「製品にお金を払っていなければ、あなたが企業の製品である」という有名な言葉があります。

つまりYouTubeやSNSをはじめとした無料サービスは「広告を見る人がたくさん集まるスペースそのものを商品として広告主に売っている」ので、CMを見ているあなたもそのスペースに含まれている=あなたも製品の一部であるということです。

テイカーからギバーになるべし

社会に出れば誰もが分かることですが、「一生懸命働きます!お給料はいりません!」なんて人はまずいないですよね。なのになぜ人は無料かつ快適なサービスを提供してもらえることを期待してしまうのでしょうか?

フリーライダー(タダ乗りする人)とか、テイカー(対価を払わずに利益を得ようする人)なんて言葉がありますが、「おもろい動画を自由に快適に見たいけど、お金を払うのも嫌だしCMも一切見たくない」という人がいるなら、それはまさにフリーライダーやテイカーの精神性そのものです。

いまこの歳になって思うことですが、このテイカーの精神性って子供のワガママに似たものを感じるんですよね。

小さい子供は自分が与えてもらえることにあまり疑問を抱かないですよね。しかし、大人になって社会に出ると「あれは当たり前じゃなかったんだな、親には本当に感謝しないといけないな」と身をもってよく分かる。親になって子供を持ったらよりいっそう理解できるはず。


このYouTubeなどのフリーミアムにおける、フリーライダーやテイカーの精神性にも同じことが言えると思います。

特に自分がコンテンツを作る側・提供する側になったときに、フリーミアムやフリー素材がどういうものなのか、それを利用する人たちはどういう属性の人たちがいるのかを身をもって知るわけです。

・絶対に無料で使いたくて、お金は出す予定はない人
・とりあえず無料で試して、気に入ればお金を出してもいいと思っている人

基本的にフリー素材やフリーミアムを求める人にはこのどちらかの属性しかいません。

このnoteを読んでいる人はコンテンツクリエイター(主に音楽を作る人)が多いと思うのであえて書きますが、自分が制作したコンテンツで収益を得たいと思うのであればテイカーの精神はグッと抑えて、本当に必要なものにはちゃんとお金を使うことが大事です。

なぜなら自分自身が作品や商品を作る側になるのであれば、テイカー(もらう側)ではなく質の高いギバー(与える側)になる必要があるから。

より質の高いギバーになる

コンテンツクリエイターが陥りがちな心理状況ですが、「ラクしてお金を稼ぎたい」とか「サクッと人気になりたい」といった欲しい気持ち(テイカー)ばかりが先行して、「もっと楽しんでもらおう」「より良いものを提供しよう」などの与える気持ち(ギバー)をおろそかにしてしまうと、結果的には得るものは少ないです。

カンタンに手に入る・フリーで使えるものばかりで作品を作るのも最初のうちはいいかもしれませんが、収入のめどがついたらやはりお金を払って必要なものを揃えてこそ、質の高いギバー(与える側)になれると考えます。

・より良いものを作り提供するために必要なコトにはお金を使う
・お金を払う側・発注する側の心理を考える

こうしてより質の高いギバーになることで、結果的により多くのテイクを得ることができます。

なので、あまり無料のものに囲まれて満足してしまうよりは、必要なもの・時間を多く使うことにはどんどんお金を払う方がより良いインプットを得られて、より良いアウトプットができ、より良いギバーになれます。


また、ギバーになると視座が変わるので「YouTube全動画に広告とかマジ改悪じゃん」とか「YouTube広告クソうざい」「アドブロッカー使えば無料で広告ナシだぜ~ざまぁ」みたいなことはきっと言わなくなるはずです。

母親に「クソババア!」などとナマイキ言っていた子どもが大人になってから衣食住を与えてくれた親に感謝するように、文句言いながら見てるだけだった視聴者からクリエイター側になることで世界中の動画が集まるYouTubeという巨大なプラットフォームに感謝することになるから。

まとめ

めちゃくちゃ散らかった文章になってしまいましたが、ざっくり要約すると今回伝えたかったのは以下の3つ。

①YouTubeをはじめフリーミアムのサービスはたくさんあるが、それを維持するために誰かが何らかの形で対価を払っている。

②無料のサービスにかこまれてテイカー(もらう側)でいるよりも、必要なものにはお金を払って質の高いギバー(与える側)になった方が良い。

③YouTubeはCMなしで観るとサイコーに快適。

③については案件とかじゃなくてシンプルに僕がYouTube大好きマンなだけです。笑

ちょっとしたつぶやき的なコラムのつもりが5000文字超の長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事は無料マガジン【リーマン兼業音楽家のつぶやきまとめ】で書いています。今後も毎月記事を連載していくのでよかったら他の記事もチェックしてみてくださいね。


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