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日記#57 キリスト先生の親子診察、Gさんの面談、そしていのちの電話

2024/1/12

 日曜日救急外来でキリスト先生に診てもらった時母を伴って伺うと言ってしまったので、水曜の先生の診察は母と一緒に行うことになった。現地までは別々に行って診療科前で合流。呼ばれて二人で診察室に入った。

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 私は日曜日ぶりだけど、母は去年の手術後以来だからおよそ1年ぶりの先生。挨拶の後私の病状について母に話をする先生。ホスピス探しについて物件探しと同じようなものであり元気なうちにしておく方が良いことだっていうのは日曜日私にしてくれたのと同じ話。母は涙ぐみつつ先生のお話を聞いていた。私も予め伝えていたことだけど、先生の口から私はもう死んじゃうっていう事実を聞かされて思うところが色々あったのだろうと思う。いつもありがとうございますって先生に言ってた。母はいつも感情たっぷりに人に話す。

 そして母は先生に私が先生をとても信頼しているからこの病院に入院させてもらえないだろうか、ということを言った。そんなことを言い出すとは予想だにしていなくて驚いた。先生は、この病院は緩和医療に長けておらず病院には病院ごとの役割がある、だからそれは難しい、ご理解ください、というようなことを母に伝えた。

 確かに私は先生をとても信頼している。母にもそのことは何度も話したよ。だけどどうして、私の気持ちを他の人が勝手に話しているの?私はこれまで自分が先生に対して思っていることを口にしたことはない。信頼、というと、どちらかと言えば良いことのように聞こえる。でもそれが負担になったりある種の責任を感じさせたりする場合もある。単純に喜ばれるばかりのことじゃない。それに、私みたいな誰にとっても何の足しにもならない人間からの信頼なんて価値ないよ。そんな気持ち向けられたって嬉しくないよ。だから私は先生に何も言ってない。言うとしてもそのタイミングとかどんな風に言うとか、全部自分で決めたかった。だから母のこの言動は同性愛のアウティングとなんにも変わらない。

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 どうして母は私のことを勝手に言うんだろう?私は小さな子供、親に何でも肩代わりしてもらわなきゃならない子供じゃない。私はとても傷ついた。先生の診察の後昼食を挟んでGさんの面談があったからそこでもその話をした。

 Gさんはいつものように私の気持ちを話を理解してくれた。そしてこれからの面談についてどんな風にしていきたいか聞かれて、ちょっと考えた後とにかく心を閉じたくないからそうならないようにしていきたい、そのために具体的にどうしたらいいのかはわからないけど、ということをお伝えした。そしたらGさんは、話の内容は実はなんでもよくて、とにかくこの面談の場が心を開いて話せるということを実現できる場であり続けたら良いってことですよね、と仰った。お天気の話とかの世間話は私は全然できない、面談の場で話すような深い、というか、込み入った、というか、そんな話しかできない、と申し上げたら、むしろ逆にこの場で世間話レベルのことばかりを繰り返してたらそっちの方がなにか怖いですよね、と仰ったので同意した。でもたとえ世間話でも心が動いた世間話なら良い、心が動くと言うことが大切なのだということを言われて、それにも同意した。そんな感じで次の予約をしてGさんの面談は終了した。

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 この日はキリスト先生の診察とGさんの面談だけだったので会計をして帰ろうとしたけど、お腹痛くなって支払い機械のところでへたり込んだら案内の人が気づいて女性診療科へ車椅子で連れて行ってくれた。また回復室で横になって診察中の先生を待つことになった。痛みと不安でしくしく泣いた。途中もう一つのベッドに年配の人が寝ていた。入院するみたいでお迎えの家族の人が来たら去って行った。

 しばらく寝ていたら先生が来てくれた。先生は本当は母に話した後私と2人で話がしたかったけど、そんな風にするのは不自然なのでそうできなくて、でも私が戻ってきたので偶然にもそれが叶ったって仰った。そして、母が一緒だったから疲れたんじゃないかと聞かれたので、正直疲れましたと正直に言った。とても疲れていた。母が一緒だと心が閉じるから。そしたら先生は母が一緒だと話しづらいことがあったんじゃないかと聞いてくれた。でもこの時私は心が閉じて疲れて冷えていて、全然自分がどんな風に感じてるのかもわからなくて、わからない、
という風に言うのもいけないことだと思い込んでいて、なんかあやふやな返答になってしまった。せっかく先生が聞いてくれたのに。先生が帰った後悲しくなったけど後の祭りだった。秘書のNさんが来て、ゆっくりしてていいから帰れそうになったらナースコール押してねと言ってくれた。

 先生もNさんも優しい。Gさんも話を聞いてくれた。なのに、ひとりぼっちで辛い気持ちがなくならなかった。すべてから見捨てられたような辛い気持ちになった。

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 木曜日にも別の科の診察があるのでホテルに泊まった。チェックインしてコンビニのお弁当を夕食に食べた。悲しい気持ちが耐え難くて、電話で話ができる相談のやつにかけた。一つ目は繋がらなかった。それからいのちの電話にかけてみた。繋がった。年配の男性が出た。何から話していいかわからない、と言ったらどんなことでも、と言われたから自分ががんで死にかけてること、それも辛いけど家族関係が悪いことでとても辛くなってることを話した。それから2時間半くらいずっとお話を聞いてもらった。こんなに話聞いてもらえるとは思わなくてびっくりした。チャットの相談はいい加減なのしかなかったけど、いのちの電話はガチだと思った。とても感謝の気持ちが湧いた。お礼を言って電話を終わった。

 それからお風呂に入って寝支度をした。木曜は午後からの診察だけど、朝からがん相談支援センターでホスピスのこととか聞いてみるつもりだったから早めに寝ることにした。電話の人に話せてよかったけど、しばらくしたらまた悲しくなった。悪夢を見た。


 という感じで水曜日の日記はおわり。木曜日のことはまた別の日記で。ここまで読んでくれたあなた、ありがとう。病人のうすぐらい日記ですまんね。でも良ければまた読んでいってください。

それでは願わくばまた、別の日記で👋

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