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日曜の夜〜『鎌倉殿の13人』を思い返して⛩

自分の中で最も忌み嫌う時間帯。それは、日曜日の夜と月曜日の朝だ。
いかにこの憂鬱さを払拭するかが、毎週の課題であったりする。きっと働く社会人は往々にしてそうだろう。私なりに日曜の夜を不安でいっぱいにしない方法として、「日曜の夜は好きなことだけをする」というのを意識付けしている。サザエさん症候群を乗り越え、20時〜は歴史好きな私は大河ドラマを見ている。今も進行形で見ているが、中でも私史上1番どっぷりハマったのが『鎌倉殿の13人』であった。好きになって、鶴岡八幡宮へも赴いた。

大学で歴史学専攻に進むくらい歴史は好きだが、恥ずかしながら大河ドラマを最初から最後まで見届けたことは一度もなかった。(唯一『青天を衝け』が1話見逃し以外見ることができたが)
昨年の12月半ばまで放送されていたが、そのクールで人気のあったのは『silent』も。私の周囲はいつも『silent』の話で持ちきり。かくいう私もスピッツがドラマの中で出てくると聞いていたため、見てみようと思うこともあったが、なぜか食指が動かなかった。
そんな中、なぜ鎌倉殿にハマったのか。まずはストーリーの面白さだろう。

大河ドラマと聞くと、もっと堅苦しくて、年配の方が見ていて、話も長くて中弛みしやすくて…とそんな偏見を持っていた。でも、良い意味で鎌倉殿はその考えを裏切ってくれた。主演俳優のファンというわけではなく、前作で見ていた『青天を衝け』の流れからなんとなく見るようになった。(青天を〜は主演俳優様のカッコ良さに惹かれて見たようなものだが…)最初は、北条家のファミリーストーリー?くらいの和やかな話と思いきや。源頼朝が出てきてから北条家の、主人公義時の運命も変わっていく。鎌倉時代という血で血を争う時代柄なのか、たくさんの人達が、それも善良な人たちがパタパタと倒れていくシーンは毎週涙なくして見られなかった。さらに主人公義時がどんどん周りを粛清していき、彼自身も心が真っ黒になっていくのは見ているこちらも複雑になった。

普通なら中弛みしがちな大河だけど、辛いシーンばかりではなく、シリアスなのにたまにクスッと笑えるシーンがあったり、全力でふざけているシーンがあったり、随所にユーモアさが感じ取られた。散りばめられたいくつもの伏線が繋がった時は、テレビに向けて「ほへええ、三谷さんすんげえ」と声を漏らしてしまったくらい。
さらに、鎌倉殿に出てくる役者の人達も、テレビでよく見る方達だけだなく、ミュージカル畑で演技を磨いてきた人達もいて、鎌倉殿を通じて好きになった役者さんもいる。どの役者さんもハマり役だと感じたが、とりわけ、私は3代将軍源実朝役を演じた柿澤勇人さんのことが大好きになった。

実朝と聞くと、私の中では短命で、和歌を詠んでいて、甥に殺されて…とそれくらいの印象であった。
だが、ドラマの中の実朝は、静かな佇まいだが、内に秘めたものは大きくて、繊細で人の気持ちを第一に考えられる、今までの鎌倉殿とは一味違う優しい鎌倉殿という印象であった。最初は「柿澤勇人さん…。知らないなあ。どんな役者さんだろう」としか思っていなかった。
ドラマを見ていくうちに、柿澤さんの繊細で、それでいて静かな力強さを感じる演技に魅了されていった。
実朝登場回の間はいつも以上に、日曜日の20時からが楽しみであった。ドラマの興奮を糧に、月曜日も乗り越えられた。
将軍として在位した期間は短かったのに、ドラマの中の実朝は、はっきりとした輪郭を持っていた。当時の実朝は本当にこんな人だったんじゃないかと思わせてくれるくらい、素晴らしい演技で、実朝の最後の登場回、鶴岡八幡宮のシーンは泣きに泣いた。物理的にもうドラマの中で実朝を見られなくなるロス、儚く散ってしまった実朝としての人生。とても悲しかった。
でも、800年以上の時を経て、こんなに鮮やかに色んな人から愛される実朝を演じられて、きっとリアル実朝さんも嬉しいだろうなあと思った。

鎌倉殿の放送が終わってからも、テレビや雑誌で鎌倉殿で出演していた役者さんが出ていたら、「〜さん!ちゃんと生きてる!」とか、「〜さんは鎌倉殿の時とイメージが全然違うなあ」とか。
それまで興味がなかった人達でも、鎌倉ファミリーという感じで、親近感を持って見るようになった。今でも時折私の中の鎌倉殿熱が湧き上がる。
ありがとう鎌倉殿。私の日曜日晩の憂鬱を晴らしてくれて、新たな好きのきっかけを与えてくれて。いつか三谷さん脚本、柿澤さん主演の大河が見たいなあ。

明日への憂鬱は変わらないけど、明日からも楽しく生きていこう、と思える鎌倉殿に出会えて感謝。
また日曜日の夜が楽しくなるドラマに出会いたい。







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