インターネット上の誹謗中傷対策への意見公募の件
前書き
Twitterにて意見公募のツイートがあってようやく気付いたわけだが、これはどうやら再募集のようだ。
まずは、意見公募対象である検討案の資料と前回実施分の意見公募資料を読み込んだ。
意見提出先と提出様式
提出先は下記の通りである。なお、本文後半部分に私案をいれているので、もし賛同できる部分等があって文面が思いつかなければそのままコピーしてどうぞ。
プラットフォームサービスに関する研究会 誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ 今後の検討の方向性(案)に対する再意見募集|e-Govパブリック・コメント
また、以下に意見書のフォーマットから各項目を抜き出してみた。意見公募する際は、どの項目についての意見をするのかを明記したほうが、処理する側がわかりやすくなるので、これは活用すべきである。また可能な限り前回実施分を踏まえた上で意見をすべきである。
私見
これをさらっと読んで出てまず頭に思い浮かんだのが、
表現の自由への抵触
検閲の禁止
公共の福祉
実際に前回意見公募されていた多数の弁護士の方が、憲法にも明記されている表現の自由に抵触する旨について懸念されていた。私も同感である。
誹謗中傷そのものは古くから存在していたものと考えらえる。それが現在ではインターネットやメール等の電磁的媒体でも行われているに過ぎない。とはいえ場を提供している事業者になんらかの対応を求めようと考えること自体は無理からぬことではない。現状、通称プロバイダ責任制限法というものがあるので、ひとまずはそれで対応のはずではとは思った。しかしながら行政手続法にも規定のある通り、命令等制定機関は、命令等を定めた後においても社会経済情勢の変化などを勘案して必要に応じて命令等の内容について検討を加え、その適性を確保するように努めなければならないものなので、その一環であると受け取ることにする。
なお、資料案を読む限り、発信者情報開示の裁判の受付件数や侮辱罪の検挙件数が増加しているが、被害者からは投稿の削除に関する相談が多く、相談件数全体 の約3分の2を占めている状況であり、被害者による投稿の削除を迅速に行いたいという希望への対応の検討が必要である、とのこと。
表現の自由、考えようによっては検閲にも等しい行為に当たるのではないかと思ったが、さすがに資料の中ででも既に言及されていた。ここに簡潔に記載されている。一般論として、公共の福祉により権利に一定の制限が加えられるのはやむをえないとしても、プラットフォーム事業について過度に法的義務を課すというのは懸念の念を禁じ得ない。
意見公募私案
私案の要旨は下記の通りで考える。
表現の自由への抵触
報道機関による事態の悪化
権利侵害性の有無の判断の支援について
表現の自由への抵触
3. プラットフォーム事業者が果たすべき積極的な役割(監視、削除請求権、削除要請等)の(1)について、既に前回の意見公募でも多数言及されていた通り、表現の規制につながる懸念が払しょくされない以上、極めて慎重に対応する必要がある。正当な批判を妨げるものであってはならず、誹謗中傷と混同されてはいけない。しかしながらその境界線は、人によって変わる異なることは十分に考えられる。また、特定の話題に言及した時点で差別的であると受け取り、誹謗中傷と同様の対応をとるのは言論の自由を奪う行為に他ならず濫用につながるため、そのようなことがないよう権利の濫用という事態は避けなければならない。
(2)個別の違法・有害情報に関する行政庁からの削除要請については、反対である。これは事実上の検閲に他ならないと考える。行政に圧力をかけられる団体が行政に圧力をかけ、行政がそれに屈した場合等、恣意的に濫用される可能性が否定できない。報道機関による事態の悪化
今回のプラットフォーム事業者とはやや趣が異なるかもしれないが、報道機関の恣意的な切り抜き報道により誤った解釈が広まったり、あるいは正当な批判ではない誹謗中傷が過熱してしまうことに対して、報道機関への罰則及び自体の周知については検討の余地があるのではないか?
先の意見公募にて、新聞協会より、報道機関は取材活動に基づき情報発信を行っており、公正な取材に基づき正当な批判・論評と有害な誹謗中傷とは明らかに異なるものであるとの意見があったが、報道の全てではないにせよ、公正な取材がなされたとは言えない、あるいは公正な取材がなされたとしても編集の都合で取材された側の意に反する報道がなされる事例、過度な取材により日常の生活が破壊され、誹謗中傷が二次災害として発生する事例が散見される。その際に報道機関に対してどのような処分がなされたのか?そもそも処分されているのかどうかすら不透明である。たしかに、取材の自由も不当に侵害されてはいけないのは理解するが、報道機関が報道しないからこそ過度な意見や誹謗中傷にもつながるものもあり、プラットフォーム事業者とは別の問題としても議論の余地はあるのではないだろうか。(5)権利侵害性の有無の判断の支援
ア 権利侵害性の有無の判断を伴わない削除
(いわゆるノーティスアンドテイクダウン)
これは恣意的な運用の懸念が払しょくされないため反対である。
イ プラットフォーム事業者を支援する第三者機関
ウ 裁判外紛争解決手続(ADR)
特にウの裁判外紛争解決手続(ADR)については、敷金返還等の紛争や自動車事故等でも既に導入されており、簡易迅速かつ非公開という点において通常の裁判よりも優れているため、弁護士のみならず行政書士等を活用するなどして是非早期に実現していただきたい。
まとめ
勉強の復習ついでに可能な限りいろいろと書いてみたが、まだ言及できていない部分もあるのでもしかしたら追記するかもしれない。
安易に進めてはいけない部分の話があり、方針案をみる限りは慎重な意見が多数あるのですぐには動かないだろうが、事の動き方次第では様々な分野に影響の出る話ではあるので、今後も注視が必要である。
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