大失業時代が来る

要点

・AI、ロボティックスの発展により、人間の仕事が代替される
・テクノロジーの急速な発展により、あらゆるものが安価になる
・エネルギー産業と自動車産業が無くなる
・顧客が消失して路頭に迷う製造業
・皆、おカネを持っていない
・その時、あなたはどうやって生きていきますか?

エネルギーが無料になる日」に書いたことが現実になり、あらゆるものの価格が落ちると、これまでの企業は存続できずに、倒産していくでしょう。 すると、雇用してくれる企業がなくなるということになります。 果たして、ほんとうにそんなことになるのでしょうか? 順を追って考えていきたいと思います。

AI、ロボティックスの発展により、人間の仕事が代替される

大失業時代が来るという根拠としては、AIとロボットが人間の仕事を奪っていくというのが最近よく言われています。 果たして、それはほんとうでしょうか? 少なくとも日本においては、労働人口が減り続けていく中、しばらくその心配はしなくて良さそうです。

最近5年くらいの間に、外国人労働者を至る所で目にするようになりました。 都心では、コンビニや飲食店は、外国人労働者無しでは成り立ちませんし、地方では工場の労働者も外国人労働者に頼るしかない状況と聞きます。

しかし、この状況も長くは続かないでしょう。 外国人労働者の本国での収入が急速に上昇しているため、わざわざ日本に出稼ぎにくる経済的合理性が消え始めているからです。
ある大手食品メーカーの管理職に聞いた話ですが、外国人労働者がいなくなることを懸念して、工場を完全無人化する投資を急ピッチで行っているとのことでした。

つまり、AIとロボットのおかげで、ヒトの仕事は減るものの、日本ではそもそも労働者が減っている以上、誰も困らないということになります。


テクノロジーの急速な発展により、あらゆるものが安価になる

では、大失業時代は来ないのでしょうか? そんなことはありません。
AIやロボットがヒトの仕事を代替する程度であれば、問題ないのですが、それ以外のテクノロジーの急速な発展が、あらゆるものを安価にします。

例えば、電力です。 エネルギーが無料になる日 https://note.mu/skane/n/n59a9c4a2fefc
で、この10年でエネルギーがほとんど無料になるという話をしましたが、皆が自家発電し始め、余った電力をお互いに売買はじめたら、誰も電力会社から買わなくなります。

つまり、東京電力や関西電力等が行う既存の発電事業(原子力と火力)はそのうち必要なくなり、消えていくでしょう。 水力発電のうち揚水発電については、原子力発電の夜間に発電される余剰電力を使って水を汲み上げていたので原子力がなくなるとどうなるのか分かりませんが、揚水発電はバッテリーの役目を持っているため、残る可能性があります。 送配電の部分も残ると思いますが、EV(電気自動車)を介した送電が普及すると、多少エネルギーのロス率が上がっても、家庭用の低電圧需要については、送配電線が必ずしも必要ではなくなるかもしれません。

その次は、自動車です。 自動車メーカーの売上が激減します。 その原因は、シェアリングの普及とEV化です。 シェアリングについては、世界的にはUBERやGrabが有名で、タクシー業界をディスラプトしていますが、日本では二種免許が必要ということで営業できていません。 その代わりに、日本ではレンタカーの発展形であるシェアカーのサービスが都市部を中心に普及し始めています。

このような現象は、「所有からシェアへ」というキーワードで、自動車メーカーも急速に意識し始めています。 つまり、個人や企業が個別にクルマを買うことがなくなり、シェアリングサービスの事業者だけが新たにクルマを買うようになるため、クルマが売れなくなると言われています。 

それでも、業者が買うのであれば、それなりに売れるのではないかと思いきや、そうではありません。 クルマというのは、ほとんど利用されていないので、一台あたりの利用率を増やせば、台数は必要なくなるからです。 

どのくらい減るかというと、クルマ社会のアメリカの中でも、クルマがないと生活できないと言われているロサンゼルスですら、クルマの95%の時間は駐車場に停まっていると言われています。 シェアリングが効率化すると、新車販売台数は95%減るということです。

自動車メーカーの売上が減るもう一つの根拠は、EV(電気自動車)化です。 ガソリン車の部品は3万個といわれています。 一方で、EVになると部品点数が大幅に減り、数千個くらいになるそうです。 さらにクルマのシャーシや骨格を3Dプリンターで製造すると、200個以下になるそうです。 例えば、Olliという自律運転走行するミニバスの部品は、2500個でしたが、3Dプリンターで製造した結果、175個に減ったそうです。

部品の数が減るということは、安価に簡単にできるということになります。 つまり、競合企業が増えるようになります。 実際、3Dプリンターでクルマを製造する場合、大量生産は出来ません。 しかし、個人の好みや特定の目的に合わせたクルマ作りは簡単にできるようになります。 例えば、町工場が自動車製造用の3Dプリンターを手に入れたら、すぐに自動車メーカーとして生産を開始できるのです。 ただでさえシェアリングで需要が減ったうえに、安価にクルマを生産できる競合が次々に生まれると、クルマの価格は下がります。

顧客が消失して路頭に迷う製造業

自動車産業のすそ野はとても広く、日本の自動車関連産業の就業人口は550万人と、日本全体の10%です。(総務省「平成17年(2005年)産業連関表」)

仮に新車の販売台数が95%減って20分の1になり、EV化によって部品の数が200分の1になると、199個の部品を作っていた部品メーカーは、売るものが無くなります。 新しい需要をうまく見つけられなければ、潰れるしかありません。 つまり、単純に部品の数=部品メーカーの数とすると、部品メーカーは4千分の1に減るということになります。 
単純に計算するのはかなり無理がありますが、それでも単純に計算すると550万人の雇用が1100人まで減ることになります。 さすがに、そんなに減ることはないとは思いますが、いずれにしても、かなりの雇用が失われるでしょう。

電力産業についても同様です。 これまで火力発電所向けにボイラーの材料となる鉄や、石炭を販売していた企業は、新規火力発電所の生産が止まったり、既存の火力発電所も廃炉となったりした場合、突如として顧客を失うことになります。 代替商品が見つかるわけもなく、潰れるしかありません。

結論:皆、おカネを持っていない時代

ここまで、電力産業と自動車産業の雇用が失われていく様子を描いてきましたが、それ以外の産業もディスラプトされていくでしょう。 例えば、自動運転車が普及し始めると、自動車保険が無くなると言われています。 日本の損保会社の利益のほとんどは自動車保険と言われているので、損害保険会社が無くなることになります。

これまで、産業の頂点にいると言われていた銀行ですらも、FinTech企業の台頭によって、利益の源泉を次々に失っていくでしょう。 

このように企業が次々と消えていき、雇用が次々と消えていきます。
そうなると、失業者が溢れ、誰もおカネを持っていない状況になります。 おカネを持っていないヒトが増えると、モノも売れなくなります。 外食を控えるヒトは増えるでしょうし、洋服も新しいものを買わずに、メルカリやエクスチェンジ等で、中古を交換する傾向が、ますます強まるでしょう。 


その時、あなたはどうやって生きていきますか?

このような世の中になった時に、あなたはどうやって収入をつくり、生活していきますか?
現在、どんなに安定した職業に付いていたとしても、雇用が突然なくなる可能性は、かなり高いと言えます。 準備をしていないと、絶望に打ちひしがれるしかなくなります。 精神的に病んでしまうヒトはかなり増えると思います。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?