DX推進で重要なQCDの優先順位付け

2021年の活動から2022年に向けたアクション

2021年は、DXに関係する講演、執筆活動、ワークショップなどを 合計67件こなした。
2022年はそこから見えて来たこと、今後の活動に向けた情報発信をしていこうと考えている。
実は、昨年末にDXの本の第二弾を出版することを計画していたが、日々の仕事にコミットをし続けた結果、それができておらず、出版社の編集者には大変ご迷惑をおかけし、恐縮している。
そんな状況であるため、原点に戻り、日本のDXで必要な論点をnoteでUpしていく。そしてそれが貯まったら、その他のネタと組み合わせ、本に仕上げる。

2021年の活動から得た重要な論点

昨年得た重要論点の1つは、QCDの優先順位付けができずにDXをしようとしているため、DXが頓挫する問題である。
QCDの優先順位が付けられず、DXという利害関係者が多い活動をし、関係者の期待値コントロールができずに進むと、DX推進の途中で経営陣がそのGAPに気付いた時には、取り返しがつかない状況になり、結果として犯人捜しをすることになってしまう。
そして、DXが頓挫する、、、先日記事なっていたセブンアンドアイホールディングスの件は代表的なものの1つであろう。https://diamond.jp/list/feature/p-sevenDXdefeat

QCDの優先順位をつけにくい背景

マネジメント人材の課題

何故QCDをつけにくいのか?それは、「多くの」日本のビジネスのマネジメントスタイルが、未だアナログ思考であるためである。
例えば、最新のDX型ビジネスを例えをする際に、過去にあったビジネスの例をあげて、ザックリこんなものであろう、という会話になったりする。
そこで発生する「ザックリ」が問題のRootになる。
そこが曖昧であるが故に、DXプロジェクトが進むにつれて、利害関係者が各々にとって都合の良い解釈をするようになる。つまり利害関係者への期待値コントロールができていない状況である。
特に、営業出身者のTOPがリードをしていると、このような事がよく発生する。何故ならば営業で成功をした多くの人は、「事象をエンジニアリングし、サービス化やプロダクト化を実装した経験が少ない」ためである。
そして、このタイプの人は、QCDの優先順位が D>C>Q であることが多い。CとQが逆になることはあるが、いつ販売するか?いつできるか?が重要である。何故ならば、営業として顧客に提供出来る価値で大切な事は、ライバル企業よりも、先に提供すること 実質それになることが多い。
一方で、工場長出身者のTOPがリードしていると、期待値コントロールをしようとするが余りに、話が細かすぎたりし、ザックリ考えたい営業系の役員と折り合いがつかなかったりする。このタイプの人は、QCDの優先順位が、Q>C>Dとなることが多い。何故ならば、品質の良くない商品やサービスを提供すると、後工程でとんでもない影響が出るということを、心底理解をしているからである。
DXという変革の総合格闘技を進めるにあたり、TOP人材の考え方の違いのGAPを埋める力がどこにあるのか、そんな人材がいるのだろうかという点が課題となっている。
営業系、工場長系 の 部分は、全ての企業に言えることではないが、そのような傾向があることは間違えなく、そのGAPを埋められている企業はDXに成功をしているのだろう。

組織の課題

一方で、組織全体の問題も大きい
QCDの意思決定をする際に最も重要なことは、現場を知る事であるのは間違えない。何故ならば、自分たちにとっての顧客の状況を知り、ライバル企業を知り、自分たちのデリバリのケイパビリティを知る事が、QCDを決めるポイントになるからである。
しかしながら、TOPと現場の距離は意外とあり、上記の事をできていない。
また、現場を仕切る従業員が、顧客のニーズを見ていない可能性もある。
そして、顕在化していないニーズを解決するシーズ(最新技術による解決策)を知らない事も大きな課題となっている。
ということは、QCDを決める為に必要な情報が、可能な限り関係者に情報公開され、それが有機的につながっていくことが大切である。
一方で、日本企業は、それを組織という壁やヒエラルキーという壁、属人化という壁などがBlockerとなり、つながらないということが課題の一つ、もしかすると根底にあるはずだ。
この仕組み作りにおいても、筆者が所属していたGAFAMの AmazonやMicrosoftでも相当苦労をして実装をしているため、日本企業で実現する為には相当の努力が必要なのだと、私の所属する企業グループでの体験から感じている。しかし、その取り組みが前進していることから見ると、不可能でないということは言えるであろう。

QCD優先順位付けができないと発生する最大の問題

優先順位付けができないまま進むと、最終的にDXの後工程(DXの場合はエンジニア)に全ての負担がかかる。
外注丸投げにしている所では、外注先に大きな負担がかかり、期日を守れと発注先に言われるため、品質や機能を落として対処をしているように見える。特にSOR的な開発では、それが顕著である。
内製化を始めている所では、社内の雰囲気が悪くなる事がある。しかしながらSOE的な開発をしているところは、そのようにならないように、要件定義と開発が一体となって、行っているため、対処できているように見えているが、SOEさえも外注丸投げの準委任でやっている所は、QCDが曖昧である場合、都度調整をしながら品質や機能を落として対処をしたり、リリースを延ばし、準委任の費用が長期間かかるということが発生している。
もし、事前にQCDがクリアであった場合は、無理なく定期的に判断をできるため、あとで巻き返すという仕事の進め方にはならない。
QCDが曖昧であると、QCDを決めなかったが故に後工程でQCDの制御が不能になってしまうという状況に陥り、結果的にDX失敗となるのだろう。

優先順位をつけやすくする取り組み

全社のQCDと、各DXサービスやプロジェクトのQCDが異なるのは当たり前であるため、そこを理解の上で進める。
それを踏まえた上で優先順位をつけやすくするためには、QCDを決める為に必要な情報共有を徹底的に進める事は必須である。
それを行うためには、誰が何の役割を持つか決め、情報ガバナンスの問題、つまり誰に何を共有してよいのかがクリアにする。そしてそれを決めた上で、フロー/ストック型の情報共有と、定期的な状況の確認をしやすくする。
その結果、QCDを決定する為に必要な情報が必要な人に伝わるため、このDXサービスやプロジェクトのQCDはこうすれば良いのであると、経営のTOP(社長)が意思決定をできる。

取り組みを実現する成功のステップ

では、QCDを成功するステップを紹介する。

  1. 経営陣が意思決定をしやすいように、忖度の無いFactを共有する

  2. 組織だけで情報共有することをNGとしサービスやプロジェクトで行う

  3. 役割分担を明確にし、情報の壁を減らす

  4. コミュニケーション設計をする

  5. ストック情報を社内Wiki等に公開する

  6. 現場でQCDの優先順位を決めて、経営陣に提案する

  7. 出て来た情報を経営陣に忖度無くFactとして共有する

  8. 経営陣と現場のQCDの目線を合わせ、意思決定をする

  9. 意思決定後に必要なリソースを投入する

  10. そのQCDを四半期または半期でUpdateする

  11. リソースの力点を変更する

私がDXを進める中で、自社の課題であったり、DX対象となる上場企業の課題であったり、それらから見えてきた、現場のTOPの意識の違いによって発生する課題解決策を今回はお伝えした。
日々の業務があるため、定期的Updateはなかなか簡単ではないが、今後もUpdateをしていくつもりだ。

次回予告

「IT人材リソースが無い中堅企業や地方の企業がDXを進めるうえでのDXアウトソーシング戦略」について、Upしてみようと思う

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