変革の仲間作りの手法

 変革をするためには、仲間作りが重要である。つまり、仲間なくして変革はできない。これを俯瞰して考えると、私がVMwareを日本に展開してきた時の仕事と本質的には変わりない。当初は「仮想化はDBで使えないんでしょう」「コストが上がるだけ」「仮想化ってVirtual Realityとか?」「会社として信用ならない」等々、2005年時点、VMware Japanの社員は16人、オフィスはレンタルオフィス、私の上司の上司は本社の社長みたいな時であり、色々言われていた。当時の私は、キャズムを2回(Compaqでx86、EMCで本当のSAN)越えており、変革の本質を理解した上で、VMwareを日本全国に広げることを仲間とやっていた。この時に使っていた枠組は、DXでも同様につかえる、何故ならば、VMwareもDXも、既得権益を壊す変革であるからである。その枠組として最も使いやすいのは「キャズム理論」である。

 その変革を行うためには、パワーのマネージメントが重要である。「ポジション&ピープル」「民意」「仕組み」の3つのパワーを使いこなすことが重要であり、VMwareを日本へ広げていた際に、私が取ったスタンスは、「ピープル」「仕組み」をベースにはじめて、それを「民意」に仕上げた。

ピープルパワー(+ポジションパワー)

 ピープルパワーとは、その人の持っているスキルや人脈、そして体力・メンタルなど個人に永続的に紐付く個人としての資産をしめす。ポジションパワーとはその人が社会的立場として一時的に与えられているパワーである。この2つの境界線は曖昧であるため、一緒に考える事が多い。

民意

 民意とは、なんらかのGive&Takeが成り立ち、関係者と合意形成が出来ている状態を示す。民意を得た時、それが持つパワーは最大になる。具体的には、都知事選やアメリカ大統領選挙であった、ポピュリズムのような事がわかりやすい。

仕組み

 仕組みとは、民意を得られていないが、知らぬ間に入り込んでいるものである。仕組みがあるから民意ができる、民意があるから仕組み化できた、というどちらのアプローチが正しいかはケースバイケースであるが、この2つの境界線は明確であるため、別で考える。

 この3つのパワーを使いこなすと、「仲間」ができて変革がうまくいくという事はVMwareの立ち上げで証明されている。それを少し解説したい。

 VMwareの社員が16名規模であったとはいえ、VMwareの顔となるには色々と遠慮もあり全体の顔になるのは難しかった。当時日本HP、つまり勝手を知っている私の古巣のCompaqとタッグを組んで、仮想化ビジネスを推進するとコミットをした。Compaq時代の信頼という「ピープルパワー」をつかって「ポジションパワー」を獲得した例である。既存の「仲間」の力を借りた瞬間だ。

 次に仕組み作り。代表的なのはブレードと仮想化はじめてセミナーである。当初は誰も注目せず、参加者も数名規模であった本取り組み。地道に繰り返す事で、徐々にファンが増えてきた。そして、その延長線でVMware Technical Enablement Programが出来上がった。そして、VMware徹底入門を周囲の反対を押し切って出版をした。この時点ではまだ民意を得られていなかった。しかし、成功の芽が出始めるとそれに相乗りしてくる人が増えてきた。そこで重要だったのは、その既得権益を簡単に渡さないこと。民意が出来上がるまでは、それをベースに民意を作り上げる、ここが重要であった。ここまで来ると、Early Adopterの仲間のPoolがほぼ完成の領域に近づいている。

 民意ができはじめると後は簡単。人の「欲」をさらに深く理解し、アーリーマジョリティにあたる人が必要な打ち手を打ち続ける事である。レイトマジョリティまで巻き込むポピュリズムまでは私達は行わなかった。「仲間」のPoolにポピュリズムに反応する人を入れたくないと感じたのだろう。その後のVMware、特に最近のVMwareはその領域まで踏み込んでいるように感じる。会社のステージが変わるとそうなることだと思う。

DXにこのアプローチが使えるのか?

 そのためにキャズム理論があるように思える。DXのEarly Adopterを見つけて、その後はVMwareで実施してきたアプローチを徹底的に実行する事がDXの成功要因である。最終的に得をする人と損をする人が出るのは仕方がない。しかしながら、中期目線で全体として得をする得の総量と対象者が増える事であれば、決断をしてDXを進める必要がある。そのDXキャズム越えで最も重要な「仲間」作りをオススメする。
「仲間」作りの具体的な手法については、この記事が「本」になる機会があれば、わかりやすく説明したい。

今後の展開

KADOKAWA Connectedでは仲間作りを加速させていく。社員として、ビジネスパートナーとして、Engagementを高め信頼貯金を貯める仕組みを作る。どのような形であっても、皆さんと一緒にお仕事をできることを楽しみにしている。


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