特定口座 申告したら扶養から外れた?…それ確定申告しても大丈夫?
こんにちは。SKPです。
前回、「源泉徴収あり特定口座」で株式投資をした時でも、確定申告をした方が良い場合があるとご紹介しました。
複数の証券会社で特定口座を持っており、「損失」と「利益」が出ている口座が別である時や、【損失の繰越】をする。といった場合です。
ただ、これらの場合であっても。
特に【損失の繰越】を申告した後の年に、「利益が出た」ため繰り越した損失と利益を相殺しようと確定申告をしたら、かえって『負担が大きくなる』という場合があります。
今回はそんな注意してほしいケースをご紹介します。
特定口座を申告したら扶養から外れた!?
このようなケースがあります。
そもそも論として、少しだけ所得税の説明をすると、所得税を計算をする上で、次の3つの単語が登場します。
1.合計所得金額
2.総所得金額
3.総所得金額等
日本語がまぎらわしいのですが、3つとも意味が全く違います。
私も何も資料がない状態では、これらの違いを正確に言えませんが…。
今回大切なのは「1.合計所得金額」です。
では、この「合計所得金額」とは何か、というのを解説しだすと、専門用語も多いですし、それだけで終わってしまいますので、今回解説は割愛します。
大切なのは、この「1.合計所得金額」によって次のものが判定されているということです。
・均等割の非課税限度額
・障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額
・扶養控除、配偶者特別控除の所得判定
・配偶者特別控除の所得1000万円超の判定
・寡婦、ひとり親控除の所得要件(500万円以下)の判定
今回注目するのは3つ目の「扶養控除、配偶者控除の所得判定」です。
つまり「扶養に入れるのか・入れないのか」といった判定をこの「1.合計所得金額」で行っているということです。
では、それが『特定口座を確定申告すること』と、どう関係があるのか。
ここが注意すべき点です。
上場株式等の配当や、源泉徴収ありを選択した特定口座による株式等の譲渡所得は【確定申告をする】と、この「1.合計所得金額」に含まれます。
さらに、この「1.合計所得金額」は「譲渡損失の繰越を受けた場合、その繰越適用前」の金額で判定します。
つまり、過去の株式投資の損失と、今年の株式投資の利益を相殺したとしても、「所得の判定」については「今年申告した株式投資の利益だけが反映される」ということです。
これが問題になるのはどういう時かと言うと
「扶養に入っているけど、特定口座で株式投資をしている」という場合です。
一般的に「誰かの扶養に入っている人」は確定申告が必要ありません。また「源泉徴収ありの特定口座」で株式の取引をしている場合も、特に必要がなければ確定申告はしなくても大丈夫です。
しかし、株式投資で損が出た。【その損失を繰越】をする。という時は確定申告が必要です。
【損失の繰越】を申告する年は、「そもそも損失の申告」ですので、株式投資によって所得はありません。つまり【損失の繰越】は申告しても「合計所得金額」が増えることはありません。
問題は、その後「株式投資で利益が出た年」です。
繰り越していた損失と、利益を相殺するためには確定申告をしなければなりません。
確定申告をすれば「繰り越していた損失」と「今回の利益」が相殺できますので、相殺した利益分の税金の還付を受けることができます。
しかし、この損失と利益の相殺による還付申告は「合計所得金額が必ず増える」申告です。
先ほど書いた通り、利益を申告しているわけですから、今年の株式投資の利益分は必ず「合計所得金額」が増えます。
となると問題となるのは「それでも扶養に入れるのか」です。
その株式投資の利益を足しても、問題なく「扶養に入れる」のか、それとも「扶養から外れてしまう」所得なのか。
普段、扶養に入れるように、その所得の範囲内で年間の給与金額を調整して働いている、という人の場合、この特定口座の利益を申告することによって、ほぼ確実に扶養から外れることになります。
そうなると、自分は「税金を還付してもらった」のに、「扶養している人の税金はかえって増えた」なんてこともあり得るのです。
こうした事態は「特定口座は確定申告をしない」ことで防ぐことができます。
税金の還付のために申告をするのか、還付申告をしても扶養から外れないのか、扶養から外れたとしても還付の税金の方が大きいのか。
これはその人の状況によって異なります。
メリット・デメリットを考慮した上で、確定申告をした方が良いのか、しない方が良いのか、検討してみてくださいね。
今回ご紹介したのは「所得税」をベースとした話でしたが、この「特定口座の確定申告」は国民健康保険料や高齢者の医療費負担割合にも影響を与える場合があります。
先ほど書いた通り「特定口座は確定申告をしない」としている場合は一切関係がないのですが。
確かに「株式投資の損失の繰越」は非常に有用な制度ですが、こういった注意点もある、ということだけ気にしておいてください。
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