簿記検定では習わない勘定科目~店主勘定って何?~
こんにちは。SKPです。
年が明けて早いもので2週間がたちました。コロナだ~、緊急事態宣言だ~と連日ニュースで流れていますから、昨年から何か大きく変わった…という気もしていない今日この頃ですが…。
年が明けて2月に入ると【所得税の確定申告】の時期がやってきます。個人で事業をやっている方やフリーランスの方には、今から昨年の帳簿をまとめる…なんて人もいるのではないでしょうか。
所得税の確定申告、言うならば【個人の決算】なのですが、この時の会計処理に『簿記の仕訳』を行います。今日はそんな「個人の簿記」について少しご紹介します。
個人特有の勘定科目
個人での簿記の仕訳ですが「店主」や「事業主貸」「事業主借」といった勘定科目を使うことがあります。
これらの勘定科目は総称して「店主勘定」や「事業主勘定」と呼んだりもします。
会計ソフトや税理士さんによって使っているのが、「店主勘定」なのか「事業主勘定」なのかは異なりますが、どちらの科目も同じ意味です。
実はこの勘定科目、簿記検定ではほとんど出てきません。実際に初めて個人の経理処理をした時、私は意味が分かりませんでした。
簿記検定で習うのは『法人の会計処理』を前提としていることが多く、個人特有のこれらの勘定科目は検定・試験勉強ではほとんど出てこないんですよね。
実務に触れて初めて存在を知った…。という人もいるかもしれません。
しかし、個人の会計処理をする際には、この「店主勘定」「事業主勘定」は頻繁に登場します。しかも、いい意味でも、悪い意味でも、結構便利な科目だったりします。
では、どういう時に使うのか見てみましょう。
【事業】とは関係のない支払や入金に使う
個人事業と法人の会計処理を行う上で、最も異なるのは『事業と関係のないもの(取引)が入る余地があるか・ないか』という点です。
法人、つまり会社は「その事業を行うため」に存在していますから、基本的に法人が支払う経費は「事業のための経費」であり、法人に入ってくるお金は「事業による収益」です。
そのため「法人税法上の経費・収益となるか」は別として、会計処理上は必ず会社の経費や収益となります。
しかし個人の場合、プライベートと事業の線引きが曖昧になりがちです。事業の売上がプライベート用の通帳に入金されたり、普段プライベートで使っているクレジットカードで事業用の物品の決済をしたり…。
自宅の一部で事業をしている場合は、電気代はプライベート分と事業用分が混在している、なんてことも普通にありえます。
つまり「事業のための経費・事業による収益」以外のものが数多くあるのです。これらを上手く処理するために「店主勘定」「事業主勘定」を使います。
実際の仕訳を見てみましょう
次のような取引があったとします。
1.事業で使っている通帳から、個人で加入している生命保険の保険料を
1万円支払った
2.事業で使っている通帳に、アルバイトの給与が5万円振り込まれた
3.プライベートのクレジットカードで備品を2万円分購入した
これを仕訳に置き換えると次のような仕訳となります。
1. 借方)事業主貸 10,000円 / 貸方)預 金 10,000円
2. 借方)預 金 50,000円 / 貸方)事業主借 50,000円
3. 借方)消耗品費 20,000円 / 貸方)事業主借 20,000円
この【事業主貸・借】という科目は、損益には一切影響を与えません。【事業外からもってきたお金・事業外へ支払ったお金】と説明すると分かりやすいでしょうか。
個人の場合、1.生命保険の保険料は「所得控除:生命保険料控除」の対象となりますので、事業の経費とすることはできません。
2.は給与の入金です。給与は給与所得として【源泉徴収票】で集計・確定申告するため、これもまた事業とは無関係となります。
無関係なら「仕訳をいれなければいいのでは?」と思うかもしれませんが、それではいけません。この仕訳を入れないと「会計上の預金残高」と「実際の通帳残高」が一致しなくなり、正しい残高と言えないからです。
また3のように、普段は事業に登場しない「プライベートのクレジットカード」で事業用の備品などを購入してしまった場合も、「店主勘定」「事業主勘定」を使って正しく処理しておかないと、「経費に入れられたのに…」ということにもなりかねません。
確定申告の際に、これら「店主勘定」「事業主勘定」があまりに多い場合は、事業外への支払や事業の経費とならない支払、事業外からの入金が異様に多い、と言える状態です。
あまり事業でお金が増えない…。という時は、この事業外への支払いが多いということが原因となっているところもチラホラ見かけます。
確定申告時期にどのようなものが「店主勘定」「事業主勘定」となっているのか、一度見てみることをお勧めします。
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