サウジアラビアeスポーツW杯開催の裏に潜む「スポーツウォッシング」の影


サウジアラビアが巨額の投資を行い、eスポーツの世界にも進出しています。7月から8月にかけてリヤドで開催されたeスポーツW杯は、6000万ドルの賞金と世界中のゲーマーの注目を集めましたが、その裏にはサウジアラビアの人権問題を覆い隠す「スポーツウォッシング」との批判も根強く存在します。

サウジアラビアのeスポーツ戦略

  • 2030年までの脱石油依存経済を目指した「ビジョン2030」の一環として、スポーツやeスポーツに多額の投資を行っています。

  • 政府系ファンドは、アクティビジョン・ブリザード、エレクトロニック・アーツ、テイクツーといったゲーム大手企業の株式を81億ドルで取得しました。

  • リヤド近郊には、ゲームとeスポーツの地区を含むテーマパークを建設中で、年間1000万人の訪問者を見込んでいます。

スポーツウォッシング批判

  • サウジアラビアは、サッカー、F1、ボクシング、ゴルフなど、様々なスポーツイベントに巨額の投資を行っており、人権問題から目をそらそうとしていると批判されています。

  • 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、サウジアラビア政府による人権侵害を批判し、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害事件やエチオピア人難民の殺害事件への関与を指摘しています。

  • サウジアラビアでは、女性の権利が大幅に制限されているほか、2022年には1日で81人が処刑されています。

eスポーツ界のジレンマ

  • 一方で、国際オリンピック委員会(IOC)は2025年にサウジアラビアで「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を開催することを決定しました。

  • eスポーツW杯では、一部のゲーマーがサウジアラビアの人権問題を理由に参加を見送る一方で、サウジアラビアの運営を評価し、人権問題を懸念しない参加者もいました。

  • 大会運営は概ね好評でしたが、プライドフラッグを掲げることが許されたのは選手のみで、観客は認められていませんでした。

まとめ

サウジアラビアはeスポーツへの投資を通じて、若者へのアピールを強化し、国家イメージの向上を図ろうとしています。しかし、深刻な人権問題を抱える同国の姿勢は、国際社会から厳しい目を向けられています。eスポーツ界は、経済的な利益と倫理的な問題の間で、難しい選択を迫られています。

ポイント

  • サウジアラビアはeスポーツに多額の投資を行い、国際的なイベントを開催することで、国家イメージの向上を図ろうとしています。

  • しかし、サウジアラビアは深刻な人権問題を抱えており、「スポーツウォッシング」との批判が根強く存在します。

  • eスポーツ界は、サウジアラビアの投資を受け入れることによる経済的な利益と、人権問題を容認することになる倫理的な問題の間で、難しい選択を迫られています。

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