エマノン

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台本『3を言う仕事』

『場面_01』 キンバリ:えー、すうぅぅッとぉ、そう…ですねぇ キンバリ:グラビティ・ムーン…完成ぇ!…ぇー…おめでとう…ございますッ。 キンバリ:えぇぇぇ…そうですねぇ…『月の後退』がですね、ムーアの法則のごとく増えてしまえばっ、1日がもうこれまでの3分の1になってしまうわけで。そうなると気候変動や…さらには地球への隕石の影響も懸念されてですねっ。つまり何が言いたいかというと、まさに地球滅亡の危機から人類を救ったプロジェクトに関われて、僕は感無量と言いますか。あいや、関わっ

    • 題名『十号線のUターン』

      僕は十号線さんに一目惚れをした。 二週間 雨が続いた三月の月曜日。憂鬱さをギュウギュウに詰め込んだバスの優先席で、彼女は音楽を聴きながら歌詞を口ずさんでいた。僕は、その唇の動きに目を奪われた。 「もっと奥に詰めて下さい、もっと奥に もっと奥に」運転手さんのアナウンス。サラリーマンと別のサラリーマンの隙間に、彼女を見つけた、その瞬間 背筋に電流が走ったみたいに体がカチコチになって一歩も動けなくなってしまった。美しかった。我が物顔で。けれども未成熟の少女で。角度を変えると蠱惑的な

      • 台本『仮題:幻覚の中の少女』

        『場面_01』 僕:…こ、こんにちは。 馬子:ようこそ、『芸術的にSFを研究する部活』へ。 僕:…芸術?SF?…んん? 馬子:ついに、SFの芸術的解釈について弁論できる部員が現れたわね。心ゆくまで此処にいるといいわ。 「美女ありき」No Woman Bornは読んだ? 肉体を失った舞踏家が金属の体で生まれ変わる。生前の美しさは保たれたか?美を容姿ではなく動作に集中させた表現に説得力があって秀逸よ。 …何か飲む? 僕:………。なんなんですか、その本棚。茶葉の銀缶でいっ

      台本『3を言う仕事』