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「実録・ウチのお茶の飲み方」

「おいしいお茶の入れ方」というテーマの記事がお茶の季節になるとあちこちでみられるようになる。ふだんから、一軒一軒のお茶やさんのホームページやインスタ、ブログなどにいろいろと情報があがる。
 お茶の世界を楽しもうという人が増えたのかなあ。でも、何度で何分、何グラムみたいな感じの世界は、自家用のお茶「ウチのお茶」の世界にはあんまない。ウチでお茶飲むときには、もっとテキトーである。
まあ、たまには手作りしてみた白茶をおすましして出すときもあるけどな。でもそのときでも砂時計は使わないな。

先日、ウラのおばさんの家に行った。ウラのおばさんの家は大きなお茶やさんの親戚の家である。って、古くからある家はたいがい、どこかのお茶やさんの親戚の家である。お茶やさんもあちこちにあるから。ウチだってたどると大きなお茶やさんの親戚にあたる。
ちょっとお話に行ったウラのおばさんの家。お茶事情はどのようになっているかというと、まず、法事には欠かせない電気保温ポットに日常的にお湯が沸かして保温してあり、急須もすぐ手の届くところになり、お客さん用のお湯呑みも出してあり、リビングに入れてもらって話をし始めるのとほぼ同時に、急須に茶葉が入り、お湯呑みが出され、お湯が入りお茶となって、目の前に現れる。
紫やピンクの淡い花柄のついた昭和クラシックな磁器製のお湯呑みに、上手に保管してあった角のとれた上茶、だれにでも好かれるような適当な濃さで出してもらった。
もしここで、ちょっと濃いめのときには、「濃うかったかな」とかひとこと言われるけど、「そんなことあらへんわ、おいしいわ」と答える。その後、初めて行く家だったりしたら、「お茶やさんはどこなん?」みたいな会話があって、このお茶はどこでやって(製茶して)もらっているのか、うんぬん話がそっちの方へ行くんだろうけど、おばさんのところは知っているから、訊かない。こういう感じは、ウラのおばさんの家でなくても、ある程度予想できる。

日常的にお茶を飲むというのが定着しているお家はこんな感じだ。だから、何度で何分いれるん?ときいたらきっと、そんなもんやっとらへん、いっつもテキトーやわさ、と答えが返ってくるだろうけど、そのテキトーの中に、ディテールが隠されている。でも、本人は隠しているつもりがぜんぜんない。(つづく)


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