見出し画像

第60回理学療法士国家試験対策 統計学講義(6)感度・特異度・陽性尤度比


 理学療法士を含め、医療系の国家試験には毎年統計学の問題が出題されます。理学療法士では出題数が平均2問(1点問題)で、配点が少ないですが、諦めて対策をしないよりも、ある程度出題範囲が限られているので、対策を講じておきたいところです。
 息子が通っていた養成校の統計学の講義は、いくつかの検定方法を教えるだけで、国試対策としては全く役に立たないものでした。したがって、過去の国試問題を分析して必要な知識を改めて勉強し直す必要がありました。  
 ここでは、問題を解く前に、ある程度知識を整理しておきたいと思います。
 理学療法士の国家試験では、次に挙げる分野で出題されます。

1.ガイドライン
2.研究デザイン
3.95%信頼区間
4.エビデンス
5.検定方法
6.感度・特異度・陽性尤度比
7.統計用語
8. リスク比とオッズ比(補足)

 これらについて、以下、国試に必要な知識を整理していきたいと思います。あくまで国試に必要な知識という事で、統計手法を根本的に理解するという趣旨ではありませんので、ご注意ください。また配点が少ないので、すみずみまで対応しようと勉強するのは、労力vs効果効果が低いです。2問出題された場合、最低1問(できれば2問)得点できるようにしたいものです。

 今回は6.感度・特異度・陽性尤度比です。この分野も統計学の主要な出題範囲です。知っておくべき量が多くないので、必ずマスターしておきたい分野です。国試までに一通り勉強しておいて、国試直前に計算方法などを繰り返しやっておきたいところです。

【感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率】
以下の2×2分割表である病気があるのか、ないのか検査したとします。

表1

感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率はこの表を縦で計算する指標です。

表2(左)と表3(右)

感度とは疾患ありの場合、検査が陽性になる確率」
(例)「新型コロナだったら、この検査で陽性になるよね?」を表します。
言い換えれば、真陽性率という事になります。

表2では30÷(30+20)=30÷50 =0.6 (60%) [表3]となります。

特異度は「疾患がない場合、検査が陰性になる確率」
考え方がちょっと特殊ですが、
 「この検査、新型コロナだけ、陽性になるよね?」
=「この検査、新型コロナ以外では陽性にならないよね?」
=「この検査、新型コロナでなかったら陰性になるよね?」
という指標です。

表2では40÷(10+40)=40÷50 =0.8 (80%) [表3]となります。

偽陽性率は「検査が陽性だけど、疾患ではない確率」です

偽陰性率は「検査が陰性だけど、実は疾患である確率」です

下の2×2分割表をもう一度みてください。
感度は、別の言い方をすると、真陽性率を
特異度は真陰性率という事になります。

ここで、感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率についての特徴・性質を紹介します。
(1)上の表から感度+偽陰性率=1(100%)、特異度+偽陽性率=1(100%)となります。したがって
 ・感度が高くなると偽陰性率が小さくなる
 ・特異度が高くなると偽陽性率が小さくなる

(2)感度が高い検査は特異度が小さくなる
   特異度が高い検査は感度が小さくなる

感度を高くする」という事は、取りこぼしがないように、疾患の可能性のある患者を幅広く検出という事になります。これは言い換えれば、「感度が高い検査はスクリーニング検査に有用【重要】」という事になります。
 「感度を高くする」と当然、疾患でない患者もある程度検出してしまいますので特異度が小さくなります

 逆に「特異度が高くする」という事は、疾患の可能性がない患者は検出しない、疾患の可能性が高い患者だけ検出する」という事になります。これは言い換えれば「特異度が高い検査は確定診断に有用【重要】」という事になります。
 「特異度を高くする」と当然、疾患である患者もある程度除外してしまいますので、感度が小さくなります。

陽性的中率・陰性的中率
陽性的中率や陰性的中率はその言葉の意味を考えるとどのように計算すれば良いかがわかると思います。

陽性的中率とは「検査が陽性であった場合、本当に疾患であった(検査が的中する)確率」です。(表を横に計算します)

陰性的中率とは「検査が陰性であった場合、本当に疾患でなかった(検査が的中する)確率」です。(表を横に計算します)

陽性尤度比
尤度比という言葉は、勉強していないと全く想像がつかないと思います。尤度比の尤という感じは「もっとも」「もっともらしい」という意味です。
陽性尤度比は、「疾患がある人の検査陽性の割合と疾患がない人の検査陽性の割合を比較します」。陽性の比ですから、検査陽性の割合を比較すると覚えると良いでしょう。

表1

という事になります。

陽性尤度比については、国試的には、感度と特異度と関連づけられて出題されます【重要】。というのも、陽性尤度比を単独で計算する事は臨床上ほとんどなく、感度・特異度と合わせて計算する場合はほとんどだからです。

下の表のような場合、まず感度と特異度を計算しましょう。

感度は30/(30+20)=30/50=60%、特異度は40/(10+40)=40/50=80%です。

陽性尤度比とは、疾患がある人の陽性の割合と疾患がない人の陽性の割合を比較し、陽性尤度比=a/(a+b)÷c/(c+d)でした。
上の表で見ると、この式の前半部分a/(a+b) は感度の事です。
そして、後半部分c/(c+d)は1−特異度となります(=偽陽性率)。

陽性尤度比の計算方法

陰性尤度比
陽性尤度比に関連して、陰性尤度比も勉強しておきましょう。
陰性尤度比は、「疾患がある人の検査陰性の割合と疾患がない人の検査陰性の割合を比較します」。陰性の比ですから、検査陰性の割合を比較すると覚えると良いでしょう。

表1

という事になります。
これも直接計算する方法と、感度・特異度を用いて計算する方法を知っておいてください。

陰性尤度比の計算方法

以上、感度・特異度・陽性尤度比について紹介しました。



Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?