コマ撮り撮影 約3ヶ月間の記録
先日から始まりました動画配信企画の第一弾
『仕立て屋シットランテ』
企画・構成のほか、オープニング、エンディングのコマ撮りを担当しました清水良憲です。
今回は、コマ撮り撮影に挑んだ日々の記録を書いてみようと思います。
*
ー『仕立て屋シットランテ』のオープニング、エンディング映像をどうしようかと考えていた、2020年11月某日ー
シットランテ3人のシルエット人形を作って、コマ撮りで動かしてみたらどうだろうと思いつく。
一人一人の衣装にも使われているテーマカラーをワンポイントにしてみよう。
動きが出たほうが面白そうだから、腕が固定されたものと可動するものがあるとよいな。
幕が開くと、3人のシルエット人形が踊りだすなんてどうだろう。
想像を膨らませながら、まずは100円ショップに出掛け、たくさんの色の画用紙を買い込んでくる。
背景、舞台の幕、足元のステージなど、全体を見ながら一つ一つの色を決めていった。
最後に出てくる「仕立て屋シットランテ」の垂れ幕は、色々な模様のマスキングテープで作ることにする。
そうして試作品を作っているうちに、ゆく年くる年。年が明けていった。
ーお正月気分も抜けてきた、2021年1月9日(土)ー
入山さんからオープニング曲「Tailor Blues」が届く。
この曲に合わせてどんな風に動かしていくか。
手探りのなか、コマ撮り撮影がスタートした。
季節は真冬。寒さとの戦いでもあった。
エアコンのない、底冷えする部屋での作業。
照明を安定させるため、雨戸を閉め、太陽の光は届かない。
小さなストーブはつけていたがパワーが足りず、しもやけで足の指が痒みとともに赤紫色に腫れていった。
体勢は前屈みの中腰。腰痛持ちにはなかなか身にこたえる。
しかし。
1番大変だったのは、照明であった。
光を強くしたら影が出る。弱くしたら、当たり前だが暗くなる。手持ちの照明では、なかなか上手くいかない。それでも、限られた機材で何とかしなければならない。
ベストポジションが掴めないまま、時間だけが過ぎていく…
最初の頃は、照明の準備だけで1日の大半が終わっていった。
最終的に「膨らませたビニール袋を照明にくくりつけ、光を柔らかくし広範囲に当てる」という方法にたどり着く。
ストロボなどの照明器具の前にあて、光を拡散させ柔らかくする「ディフューザー」というものがあって、その代用品としてビニール袋を使った。
が、しかし。
ようやく照明が決まったとしても、そこからオープニングでは約100コマのコマ撮りをしなければならなかった。
コマ撮りの世界で100コマは少ないと思う。けれど、素人の自分にとってはかなりのコマ数だった。
それでも、曲の尺や雰囲気に合わせ動きを考えるとそのくらいは必要になる。
途中でミスをしやり直すと、前後が繋がらず不自然になってしまうため、最初から最後までミスなく撮影したい。
照明との戦いですでにズタボロのなか、ノーミスで撮影を進めていくのは困難を極めた。
以下、何度もやってしまった失敗の数々。
・露出を固定しないまま撮影し、途中で色彩が変わってしまう
何度も「うあぁっっ!!」と叫んだこちらの失敗は、" 露出をロックする " という当たり前の方法で解決
・幕をうっかり触って動かしてしまう
声も出ないほどのダメージを喰らうこちらの失敗は、" 幕の裏側に仮止め用のスティック糊をしっかり塗っておく " というなんてことない方法で解決
・ゴミが落ちていることに気づかないまま撮り進めてしまい、終盤でそのことに気づく
とんでもないショックを受けるこちらの失敗は、" 1コマ撮り終わるたびにとにかく必死でチェックする " ことで解決
・シルエット人形の一部などが浮いてしまい、影ができてしまう
何も感じられないほどの悲しみに包まれるこちらの失敗は、" 撮る前に「これでもか!」とすべてを押さえつける " ことで解決
解決策が分かっても、これら地味な作業の数々を一ヶ所でも見逃せば、すべて最初からやり直し。1日の頑張りが全部無駄になることもある。
そんな緊張感漂う日々が続いていった。
それでも続けていくことで、だんだんと短時間で照明のセッティングができるように。
しばらくすると、最後のコマまで撮影できる日が出てくるようになってきた。
試しにオープニング曲に合わせ、撮影した画像をコマ送りしてみる。
なかなかいい感じ。
いや、しかし。
確認を続けていくと、色々と細かいところが気になりはじめた。
動きに違和感を感じるところがある。一体どのくらい動かすのがベストなんだろう。
『仕立て屋シットランテ』の文字の配置が気に入らない。もう少し、右上がりに直したほうがよいのではないか。
シルエット人形の足の形が、左右で違う。気になるからハサミで切って整えよう。
手の形もおかしい。気になって我慢できないからハサミで切って整えよう。
etc・・・
次から次に出てくる気になるところ。不器用なため、細かいことや考えながらの作業はものすごく時間がかかる。もうキリがない。でも、一度気になってしまうと直さずにはいられない。
そうして、再び最後のコマまで撮影することができない日々が続いていった。
ああぁぁ、、、、
こんなにも、終わりの見えない日々が続くなんて。
なんで「コマ撮りをしよう」なんて思い付いてしまったんだろう。
自分は何をやってるんだろう。。
自分って何者なんだろう。。。
コマ撮りで、自分を見失いそうになっていく。
それでも、始めたからには最後までやり遂げたい。
泣きそうになりながらの作業が、果てしなく続いていった。
ー製作を始めて約3ヶ月が経った、2020年2月7日ー
ついに、ついに、すべての撮影を終えることに成功!!!
すべて完璧!とまではいかなかったけれど、入山さんのステキな曲とすばらしい編集に助けられ、やっと納得できるものが完成したのであった。
*
しばらく抜け殻になっておりました。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。ようやく自分を取り戻してきたように思います。
この経験を通して学んだこと
・思いつきでコマ撮りに手を出してはならない
・冬場にやってはいけない
・中腰でやらなくてもいいように、あらかじめ準備が必要
・ときどき窓を開けて、太陽の光を浴びることを忘れてはならない
・ときどき散歩をして、気分転換に体を動かすことがとても大切
コマ撮りやアニメーションを製作しているプロの方たちは本当に本当にすごいんだと、身をもって実感しました。
読み返すと、なんて重苦しい話なのでしょう。
キレイさっぱり忘れてしまいましょう。
『仕立て屋シットランテ』
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
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