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考えたこと。(エッセイ)

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2018年5月の記事一覧

砕き染み渡るもの。

 続けてもう一つだけ。当時「未完」としているが、1段落目で書かれていることがそれなりに自分の感覚を表していると思ったので。

 お題:シンプルな感覚。制限時間15分。文字数652文字。

* * * * *

 あの日の、もう顔も思い出せないようなあの女の一言が、再浮上してきて、吐きそうになる。気持ちが悪い。あの女でなくてもいい。あの男、あの子供、あの本、あの番組の、あの本当に何気ない一言が、発せ

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他者と共にあることの孤独

 数年前に即興小説というものが流行った。15分という制限時間のなかで何かを書くのは割りと面白くて、自分もそれなりの量の小説を書いた ( http://sokkyo-shosetsu.com/author.php?id=450838468 )。さっきふと数年ぶりにそれを見直してみて、この文章は残しておいても良いかなと思ったものがあったので、noteにあげてみる。

 お題は「ナウい孤独」。制限時間1

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私とあなたの間のすきま ー 赤江達也論文についてのコメントの補論

 人はコミュニケーションの主体たりえるのか。ここから、「主体」と「近代」というものを考えてみたい。なお、この記事は以前書いた以下の記事への補論となっている。

 まず、コミュニケーションの定義を「情報の伝達」だとしよう。その上で、やや極端だがわかりやすいある具体例を元に、コミュニケーションについて考えてみたい。

 例えば、とある読書会の最中、人の報告中に、私があくびをしたとしよう。おそらく報告者

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「ない」ことを指し示す。ー 私が好きなものについて。

 ずっと熱が下がらず、朦朧としながら考えていたこと。

 これまでも何度か書いてきたのだけど、谷山浩子さんの曲は「ない」ということの描き方が上手い。例えば、『意味なしアリス』の冒頭。

「キノコの上の芋虫は、淋しさを教える教授だった。それじゃあ始めるよと言い残して、芋虫はどこかにいってしまった。もう二度と帰らない。アリスだけ残った。」

 あるいは『ガラスの巨人』。これは心のなかの空っぽな空間、た

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