恋愛の失敗と母の話

突然だけど、私は明日恋人と別れる予定だ。

別れる原因は様々あるのだが、私に原因があると思っている。詳細は省くが、泊まりのデート中に精神的にも体力的にもコンディションが最悪だった私は、それを知らないヤツ(仮称:笑太とする。顔が笑点の司会に似ているので)がベタベタと甘えてくるのに対し我慢しようとしたものの限界を迎えてしまい、その後解散するまで機嫌を悪くし何も話せなくなってしまった。申し訳ない気持ちはあったが、今ここで口を開けば酷いことを言ってしまう気がしたし、一時の感情で別れると言ってしまいかねないほどギリギリの精神状態だった。そんなこんなでしばらく連絡ずる気にもなれず、数日経ちそろそろ謝ろうと決心し連絡を取ると、笑太はこう返してきた。

「今、許すとかそういう状態じゃなくてこの先のことが考えられない。(私の)不機嫌な態度が過去のパワハラ上司と一緒でトラウマから体調を崩している」

めちゃくちゃ動揺した。

だって、ただ怒ってるだけだと思ったのだ。申し訳ないと思ったから素直に謝ったし、怒られるのを覚悟で連絡を取ったのに、許す許さないの問題どころではないと言われたのだ。そこまで深刻な事態になっているとは思わなかった。

とりあえず当時の心境を説明し、どうしてそういう態度を取ってしまったのか説明するも、彼の心には何も響いていないようだった。笑太の口から別れるという言葉は出なかったが、前向きに考えられない状態だと告げる彼に焦った私はたくさん言葉を投げ掛けなんとか踏みとどまらせようと試みた。

しかし、やり取りが終わりひとり考えたところで考える。今回のできごとは確かに私が悪い。しかし、トラウマの話なんて今まで聞いてないし、それは私の預かり知らぬところだ。彼は元々メンタルが弱く、私も弱い。だから仮に仲直りしたとしても、この先また喧嘩やいざこざが起きれば同じことが起こるだろう。そうなったとき、この先も笑太とやっていけるのか。

答えは無理だ。私は弱りきった彼を支えてやれるほど肉体的にも精神的にも強くない。

今までその結論にたどり着かなかったのは、圧倒的なコミュニケーション不足だ。お互い実家暮らしかつコロナ禍で会える回数も少なかったし。真面目な話もあまりしてこなかった。

真面目な話をまったくしなかったわけではないが、そういう話題を振るのも私からだった。この手の話題になると彼は消極的な態度になるし、関係性が壊れるのが嫌だからと喧嘩腰になりたくないと言った。それも今後を考えると危ないので意見の食い違いがあれば話し合うべきだと伝えたが、彼はそれを良く思わなかった。

だからあの日も喧嘩腰になりそうな気がして、何も言えなくなってしまったのだ。今思えばちゃんと本音を伝えるべきだったと後悔に苛まれている。

とまあ、そんな経緯があり、来年辺り同棲するかも~と母に話していた私はそのことも伝えなければならなかったのだが、たまたまその手の話題が出たため重い口を開き報告した。

経緯を聞いた母は、一言。

「はっきり言う。お前にそいつは合わない。そいつじゃお前は幸せになれない」

母は強気な性格で、恋愛以外も含め価値観が少し古いところがある。私がこうだから皆そう、それが常識、といった節がある人だ。だからその言葉も真に受けてはいなかった。それこそ、早く結婚した姉に対し彼氏の影すらできない私にそれとなく相手はいないのか?と何度か聞いてくるので、早く結婚してほしいんだろうなと思った。だから付き合っていることを伝えたとき、どこか嬉しそうな様子だった。そんな母だから、多少関係にトラブルが起きても「それは誰にでもあることだから解決しなさい」とか言ってくるんだろうなーと思っていた。

その母が、別れた方がいいと言ってきたことに素直に驚いた。

「姉は結婚直前まですごく幸せそうだったが、お前は付き合っていても楽しそうに見えなかった」

そんな風に見えていたとは知らなかった。というか、楽しかった話より悩みばかり話していたからそう映って見えたのでは、とも思わなくもなかった。

だけど、母は早く結婚してほしかったはずだ。私のことをもう若くないとも言って急かしていたはずだ。それなのにこうまで言うのだ。

「無理に結婚しなくてもいい。一緒にいて幸せだと思う人が見つけられればそれでいい。それでもし、子供が欲しいと思うなら結婚しなさい」

「私は自分の子供が一番可愛いし愛している。その子が幸せになれないのはだめだ。だから、そいつじゃあんたは幸せになれない。我慢してまで一緒にいるべきじゃない」

ものすごく泣きそうになった。今これを文字に起こしながら涙が溢れている。

付き合うのは楽しかったが、ずっと心のどこかで将来について考えずにはいられなくて、早く一緒に住んで自立することが呪縛のようになっていたように思う。だから、言葉にしてはっきり伝えられたことで、その呪縛から少し、解放されることができた。

いや、別れるつもりではいたし、その選択に後悔はあるかもしれないが迷いは薄れていたけれど、私は今とても心が軽くなった。


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