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トランスレーションズ展

下がり続ける日常的文化度をなんとか上向かせるために。打ち合わせの合間に、ピャッといってきた。

21_21 DESIGN SIGHTでは、2020年10月16日より企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」を開催します。展覧会ディレクターには、国籍を超えてさまざまな表現媒体に携わる情報学研究者のドミニク・チェンを迎えます。

「翻訳」ということばは、ある言語を異なる言語に変換すること、そしてそのプロセスを経て意思疎通を図る行為などを連想させます。その行為は、古くから異文化と接触し理解するための手段として行われ、今も私たちの日常のなかで続いています。日々進化するテクノロジーによって翻訳機能がめざましく発展し、言語の垣根を超えて「いつ」「どこ」にでも繋がることが可能となった昨今、かつては未知の世界であったものさえも身近に感じられるほどコミュニケーションのあり方は大きく変化しています。

「翻訳」を介したコミュニケーションは、文字による言語だけではなく、視覚、聴覚といった感覚や身体表現などを用いて、送り手と受け手をつなぐ「架け橋」の役割を担っています。そして、その過程で生まれる解釈や変換、表現は、デザインやアートにも共通します。本展では、ドミニク・チェンの「翻訳はコミュニケーションのデザインである」という考えに基づき、「翻訳」を「互いに異なる背景をもつ『わかりあえない』もの同士が意思疎通を図るためのプロセス」と捉え、その可能性を多角的に拓いていきます。

ここでは、AIによる自動翻訳を用いた体験型の展示や、複数の言語を母国語とするクレオール話者による映像、また、手話やジェスチャーといった豊かな身体表現、さらには人と動物そして微生物とのコミュニケーションに至るまで、さまざまな「翻訳」のあり方を提示する作品を紹介します。本展が、「翻訳」というコミュニケーションを通して、他者の思いや異文化の魅力に気づき、その先にひろがる新しい世界を発見する喜びを感じていただける機会となれば幸いです。

まず、総論いい企画展だった。期間中に再訪してもいいかな、と思う程度に。その一番の理由は、テーマになっている"「わかりあえなさ」をわかりあう"という言葉通り、この展示はめちゃめちゃわかりやすかったから、というのが一番大きいのかもしれない。「わかる」というところにフォーカスが置かれているからわからなければ仕方がないので当然というか同語反復というかそういう感じなんだけど、それでも久々にこんなに「わかる」展示を見て、そうか、これくらいわかってもいいな、という感想を得た。一方でもうちょっと「わかりあえなさ」のほうに重きが置かれた作品があってもいいのでは? と感じたりもした。んー、これはなんなんだろう? という身体の中に生まれた「?」を解釈するのも展示を見る楽しみだったりするわけで、贅沢だけどね!

珍しく「圧倒的に一番好みだった」ものがあって、「見えないスポーツ図鑑」。東工大の伊藤亜紗さんの研究(ちなみに次点は永田康祐さんの"Translation zone"。論文を映像化するときのアプローチとしてめちゃ興味深い)。

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フェンシングと柔道と野球の面白さと言うか機微というか、やってみないとわからないなんとも言えない感覚を、日用品で構成された代替物で大胆に表現している。わたしは野球と柔道の経験があって、フェンシングはやったことがないけれど、野球と柔道の翻訳の方法の鮮やかさを持ってフェンシングのそれに相当期待が持てた、というか、ものすごく正しく抽象化し特徴化しているんだろうな、めちゃやりたいな! と思った。あと映像の仕上げもとても素敵だった。ユーフラテスかな。

デザイン系学生はもちろん、コミュニケーションに関連した産業にいらっしゃるかたにおすすめ。複雑に絡み合った事情を解きほぐしてわかるようにしたい! という気合をもらえる、かもしれない。

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