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ゲームセンター

 東京山の手の外れの街、池袋に「ミカド」というゲームセンターがあるのですが、まあ素晴らしい風情なので、大学の授業が空いた日には偶に寄って遊んでいます。

 何が良いって、あの空気感ですよ。最近のチェーン店にありがちな、売上を第一に考えた「プライズ重視」「プリクラ至上主義」的なゲームセンターではないのです。

 お店の奥に潜っていけば私の言わんとしていることがよくわかることでしょう。

 昔ながらのアーケードゲームが、そこには鎮座しているのです。マリオブラザーズにファイナルファイト、ゼビウス。怒首領蜂にテトリス、タイピングオブザ・デッドまであります。ギターフリークス、ドラムマニアのバージョンには更新が入っておらず、ブラウン管のゆらゆらとした画面では、かのバンプの名曲「天体観測」の文字列が如何にも新曲然とした佇まいで横たわっています。

 私は21世紀の生まれなので、昔のゲームセンターがどのような雰囲気を持っていたのか、それを知っているわけではないのですが。しかし、「ミカド」の中では何故だろう、とてもノスタルジックな気分に浸ってしまうのです。

 あの、えもいわれぬ郷愁を、どう形容すればいいのか。
 たぶん、一番近い表現は「レトロ・フューチャー」とかですかね。『ブレードランナー』のような情趣も感じられますし、かといって過去の人々が未来を想って生み出したSFによって全部が全部規定されるようなレトロではない気がするのです。

 私が見たところだと、お客さんには、中高年の方が多かった気がします。そういうわけでどうも、あの場所はレトロというよりは「皆んなが若々しい心のままでいられる場所」のように感じられました。
 だからこそフューチャー、レトロな風情ではあるけれど決して懐古的ではなく、むしろ未来的なのです。かのゲームセンターは。


 この頃は感染症も流行って、ゲームセンターは苦境に立たされていると聞きます。私もひとりのゲーマーとして、自分が自分らしく楽しい気持ちで居られる場所にお金を使っていきたいなと強く思った、そんな話です。


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