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短編アニメ「秒速5センチメートル」レビュー

 この作品の名前は知っていたんですけど、これまで観てこなかったんですよ。
 新海誠監督の原点とも言うべき作品だ! などの評判だけを聞いていました。そしてこれを観てトラウマになったという意見も聞いたのです。
 なんだか凄そうな雰囲気じゃあないですか! というわけで視聴したのです。

あらすじ

 親の仕事の関係で転校が多い主人公の貴樹、ある小学校に転校してきた貴樹は同じく転校してきた明里と境遇が似ているせいなのか気が合い、一緒の時間を過ごすことが多くなっていた。
 卒業とともに離ればなれになっても2人は手紙で連絡を取り合っていた、ある日貴樹は遠くで暮らす明里に会いに行くことを決意する。

 うーん、なんとも甘酸っぱい青春という感じじゃあないですか。

 では良かったところと気になったポイントを挙げていきますよ。

絵が綺麗!

 これが第一印象ですね、絵画のような美しさでした。
 舞い散る桜の花や、さし込む陽光の表現が美しいんですよ! 風景だけじゃなく人物の作画も良いですね、ビジュアル面から作品に引き込まれました。

ピアノBGMが印象的

 全編を通してピアノのBGMが使われています、この映画にはアクションシーンみたいな動きのある場面はありませんから、静かな空気感というものが表現されていたと思います。

 さて褒められるのはここまでです、気になったポイントにいきましょう。

劇中で何も起こらない

 「コクリコ坂から」でも同じことを言いましたが、この映画はあれの比ではありません。本当に何もイベントが起こらないんですよ!

 この映画は3話構成になっています、1話では小学生から中学生、2話では高校生、3話は社会人となった貴樹の物語なんです。
 1話は奥ゆかしい文通から、大雪の日に貴樹が明里に会いに行くという作中唯一のイベントらしいものがあります、これから離ればなれになる2人が思いを伝え合って話が終わります。まあここまではいいでしょう。
 2話は高校生となった貴樹のというより、貴樹に思いを寄せるサーフィン少女の花苗の物語になっています。花苗は貴樹に一途な思いを募らせ告白しようと決意するも、貴樹の心に他の女性がいることを察して告白を思いとどまります。
 3話は社会人になった主人公の荒んだ生活が描かれます、一方明里は結婚をするらしいのですがその相手は貴樹ではないようなのです。そこから山崎まさよしさんの歌う主題歌とともに過去の回想シーンが延々と流れます。
 
 そのままエンディングですよ、なんにも起こらないじゃないですか!

SF要素ゼロ

 新海誠監督と言えば「君の名は」「天気の子」「すずめの戸締り」でSFチックな世界観で素敵なストーリーを生み出していますね。
 だけど「秒速5センチメートル」にはファンタジー要素は皆無です、ひたすらにリアルな世界の物語なのです。
 なるほどこれで観た人たちがトラウマになったというわけですね、リアルな世界では角から飛び出してきた食パンをくわえた美少女とぶつかることも無いし、白馬に乗った王子様が現れることも無いというわけですか。
 せめて物語の中ではつまらない日常を忘れたいという人にはつらい映画かもしれませんね。

 賛否両論があるのも納得ですね、では採点にいきましょう。

総合評価

・ストーリー 5点
 この映画にはストーリーというものがほぼ存在しません、主人公とヒロインの大恋愛物語かと思いきや、少年時代の思い出程度の扱いなんですよ。
 1話と2話で全然違う話だったので3話でどう折りたたむのかなと思って観ていたのですが、折りたたむ気もなくそのまま終わらせましたね。ドラマチックな展開というものの真逆をいく物語です。

・ビジュアル 80点
 前述したように作画は秀逸でした、光の表現が絵画のようでとても好きですね。

・音楽 30点
 ピアノの静かなBGMはまあまあ良かったと思うんですが、終盤に山崎まさよしさんが歌う主題歌のゴリ押しには辟易しました。悪い歌だとは思いませんが1コーラスでいいでしょう、「さあ、ここで感動しなさい」と言われているようでげんなりですよ。

・キャラクター 15点
 とにかくこの映画は人物描写が無いんですよ、主人公・ヒロイン共に性格も趣味趣向もわからないし心理描写もほとんどないから感情移入がまったくできません。
 一番描写されてたのが2話でポッと出た花苗なのはどういうことなんですか、3話には登場すらしないじゃないですか。

・総合評価 60点
 いろいろ言ってたのに甘い評価だと思われるでしょうか、「コクリコ坂から」でも同じことを言っていたような気もしますが、きちんと理由があります。
 欠点として挙げたものの中に良い点があるんですよ、SF要素は確かに無いんですがリアル志向という点では良いのです。
 初恋が成就して生涯の伴侶になったという人は少数派でしょうから、大体の人に刺さる話です。遠距離恋愛の難しさというのもリアルですよね、物理的距離を乗り越えるのは困難なことでしょうからね。
 主人公が他の女性と付き合っていたり、ヒロインが他の男性と結婚するというのも自然です。初恋の人を思い続けて他には目もくれないというのは不自然ですよ。
 最後に2人が踏切ですれ違ったシーンで終わるのもいいですね、2人は人生の一瞬ですれ違ったんです。縁が無かった、ただそれだけのことなんですよ。

 やや甘い評価になったような気もしますが、面白い物語でしたか? と問われれば「いいえ」と答えるしかないですね、ただいろいろと考えさせられる作品だったということです。

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