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【人工内耳】6.手術前の説明

9月17日。夕方5時ごろに主治医の先生がやってきた。前回の診察が6月だったので、約2ヶ月ぶりの再会。会うのはこれで2回目。

カンファレンスをする部屋に通され、私、母、先生の三人で手術中のリスクなどの説明を受ける。私の内耳に埋め込んでもらうのはコクレアの(当時の)最新機器Nucleus7。

内耳の構造を図版で視覚でわかりやすく示し、蝸牛に手術でインプラントを入れる。その後退院して数週間経ったらマッピングという聞こえやすい音に調整するために何度か通院することになる。人工内耳が適用されるのは内耳までで、その奥にある神経節は難しいらしい。APDという聴覚情報処理障害などはこの辺りに問題があるらしい。
人工内耳での聞こえかたは最初はロボットのような機械的な音声らしい。ロボットの声真似したあとに「やったことないけどね!」と。そりゃそうだ。
先生はこれまで人工内耳を手術したのは150人くらい(確か)。あまり聞かないアドバンスト・バイオニクス社は一人だけ。頭に人工内耳を埋め込んで誰ひとりおかしくなった人はいなかったし、そんなに難しい手術じゃない。術後の目眩について心配していたら、目眩の原因となる三半規管を傷つけない限り起こり得ないということだった。麻酔科の説明のとおり、麻酔の副作用で起こるらしい。自分の腕にかなり自信があるのだと思う。

MRIを受けるときは他の病院は嫌がるので、うちへ来てくれということだった。

先生「何が怖い?」
私「手術受けたことないのでわからない」
と言ったら笑われた。
「右はコクレア 、左はメドエルで装用したいんだけど、どう?」と言うとさらに笑われた。
きっと手術=怖い と感じる人が多いのだろうと思うので、私のような人は珍しいんだと思う。

そうだ、私は音楽が聞けなくなるのが怖いんだ。
人工内耳メーカーはそれぞれ特性があり、メドエルは音楽に強い?らしい。
「じゃ、メドエルのほうがいいかもしれないね、メドエルにしよう!」

もう最初の診察でSTさんにコクレアのセット注文してあるんじゃないんかい。今更変更してどうしろというんじゃ。
私「…いまさらそんなこと言われても」冷ややかな視線を投げつけたらまた笑われた。天然なのか冗談なのかわからん。

メドエルはオーストリア製の人工内耳でしょ?クラシック音楽が好きなコンサートゴアーで特にウィーン・フィルが好きでメドエルがオーストリア製と知って後からしまった!と後悔したんですよ〜とかベラベラ勝手に話してたら
「ウィーン楽友協会で音楽聴いたことあるよ。確かベートーヴェンの○番」(←番号聞き取れなかった)

まさかこんなところで楽友協会の話が出てくるとは思わなかった。この先生、話合うかもしれない。私もウィーン楽友協会でベートーヴェン聴いたんですよ!運命か!

会話する時は口の動きを読み取っていたりしないかと尋ねられる。私は読話は出来ないし、幼少時から難聴が判明してからずっと補聴器で音を入れて会話していると答えると
指差して「うまくいく」と強い口調で言われた。

何か希望ありますかと聞かれ、特になし…だけど
私「音楽流して〜。どうせ聞こえないけど!CD持ってきました!」
先生「いいよ。なんの音楽?」
私「クラシック音楽!」

隣で母が呆れてずっこけてた。「あんたなにしに来てるん?」
とても明日手術をする人間とは思えない。始終笑いっぱなしだった。

その後、入浴の予約が入ってたので部屋で準備してたら先生がサインした書類のコピーを持ってきてくれた。
先生「明日よろしくね!」
と笑顔で挨拶をし、お別れした。

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