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カゼミロの凄さってなに?

世界最高のアンカーとも称されることの多いブラジル代表のカゼミロ。彼の"守備が巧い"ということが何となくわかる方は多いだろう。では、なにが凄いのか?巧いのは本当に守備だけなのか?カゼミロの凄さを私の視点で言語化することに試みる。


これまでのカゼミロ

長年に渡ってクロース、モドリッチと世界最高峰の中盤を形成し、彼らの後ろには偉大なるカピタン、セルヒオ・ラモスが君臨していた。そして注目すべきは左サイドバックである。そう、あの背番号12のレジェンドだ。もはやサイドバックだったのかどうかすら怪しいくらい攻撃的なプレースタイルをお持ちだった。

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マルセロさんは相手の最終ラインまでお出かけすることが大好きだった。彼が高い位置をとっているときにボールを失ってカウンターを受ける場面、彼がプレスバックしないシーンも多かった。なぜか?ラモスとカゼミロでどうにかなっていたからだ。カゼミロの特出している能力のひとつは後方のスペース管理能力である。どこにスペースが生じてしまっており、被カウンター時に使われたくないスペースはどこかを認知し、そのスペースをケアできるポジションを取る。それはマルセロの左サイドだけでなく右も然りだ。カゼミロは相手のカウンター時、そのスペースへまんまと侵入してきた獲物を狩る。相手のプレーを遅らせるだけでなく、プレーを切らせる。これはカゼミロの真骨頂であり、これをひとりでやってのけるアンカーはそういない。昨季においても戦術上、数こそ少なくなったものの被カウンター対応は健在で、ラ・レアル戦においてイサクのカウンターを発動前に阻止したシーンなんかは痺れました。堪らなかったです。


昨季のカゼミロ

昨季のマドリーは、カウンターを受けるチームというよりもむしろカウンターを撃つチームだった。カルロの采配により、特にLaLigaの試合は守備ブロックを形成して戦う時間が長かった。したがって、守備ブロック形成時は被カウンター時と比べても相手との距離が近くなる。これはカゼミロにとって容易い御用だった。バイタルエリアに居座りながら狩る瞬間を伺う。ここで発揮されるのはクロース、モドリッチ、カゼミロの熟練されまくったコンビネーションだ。インテリオールのクロース、モドリッチがパスコースを限定しながらプレスをかけ、カゼミロはパスコースを切りながらインターセプトを狙う。また、バイタルエリアへドリブルで侵入してきた相手には、いい度胸だと言わんばかりに襲いかかる。この男、11ではまず負けない。以前レアル・マドリード公式YouTubeでヴィニシウスとロドリゴに対し、「チームメイトのなかでいちばん強い(strongest)のは誰か?」という質問がなされ、ふたりは笑いながら「Casemiro」と即答していた。毎日一緒にトレーニングを行い、代表でも時間を共にする彼らがそういう反応だということは、そういうことなんだと思う。彼には絶対にぶつかりたくない。


これは数字にも表れている。カゼミロは21-22シーズン、LaLigaトップとなる1試合平均9.2ボール奪取回数を記録している。


また彼は対人に強いだけでなく、守備の状況判断をミスらない。飛び込んでいい局面、滑った方がいい局面、テクニカルファールで止めなければいけない局面を的確に選択することができる。昨季のミスといったミスで私の記憶にあるのはCLチェルシー戦2ndLegの3失点目の場面、ヴェルナーの切り返しにスライディングしてしまったことくらいだろうか。一応断っておきますが、彼のパスミスはご愛嬌です。(笑)


さらに昨季、特徴的だったのはマドリーの被クロス時におけるカゼミロのポジショニングである。ベースポジションはバイタルエリアとしながらも、相手がサイドを深くえぐるなどクロスが上がってきそうなタイミングを見計らって最終ラインに入り、クロスボールをことごとく跳ね返した。

加えて、彼のスペース管理能力は守備ブロック形成時でも輝いた。サイドバックがサイドに釣り出されることによって空いたポケットのスペース(I)や、FWに引っ張られて空いた両CB間のスペース(II)も即座に埋めるタスクを淡々とこなした。

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(I)

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(II)

バイタルを分担して守備をするダブルボランチの一角よりもアンカーポジションの方がのびのびやりやすそうにしているのは、こういうプレーを得意とするが故なのではないかと個人的には考察している。


攻撃面は?

彼の凄さ、それは『守備』と言って間違いないだろう。では攻撃面はどうなのでしょうか。個人的には、カゼミロは自分の役割を明確に理解しており、サッカーIQの高い賢い選手であると感じている。それはなぜか。マドリーがよく実践する後方からの組み立てを、昨季のCL・PSG戦1stLegのあるシーンを例に挙げて解説する。

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後方からのビルドアップの局面で、クロースがマドリーの最終ライン付近までおりてボールを受けるシーンは想像しやすいだろう。相手が4-3-3または4-1-4-1の守備ブロックを形成しているとき、カゼミロはスルスルっと上がって高い位置をよく取る。これによってクロースがボールを持つスペースが生まれるだけでなく、プレス回避の鍵となるゲート(相手選手間)が各方向に生まれる。彼はこれを理解した上でやっているように見える。カゼミロのポジショニングによって生まれたスペースをクロースやモドリッチが使うことで、マドリーの攻撃のスイッチが入る。攻撃面においてもこの三銃士のコンビネーションは秀逸で、お互いがお互いを理解し合っていることがわかる。このカゼミロの動きやポジショニングは地味ではあるものの、ビルドアップにおいて重要な役割を担っている。


汗かき役

このようにカゼミロは、攻守において派手なプレーをするような柄ではない。もちろん相手との1対1に勝ったプレーなんかは称賛されるが、90分間に何度もあるわけではない。派手さがなく地味だけどマドリーの攻守、特に守備面では計り知れない貢献度であると私は評価しています。派手さがないプレースタイルが故にパスミス悪目立ちすることも少なくないことが、彼の過小評価に繋がっている気がする。カゼミロはもっと評価されてほしい。カゼミロの凄さを少しでも多くの人にわかってほしい。これが私の素直な想いである。

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