私とお猿と崖と
みなさんは猿を見たことがありますか?
動物園や猿回しなど、猿を目にするシーンは数あれど、こういう距離で会ったことのある方はいるでしょうか
近(ちか)
なぜこのように「猿と対峙」する状況に至ったか、その経緯をご説明します
第1章 旅のはじまり
遡ること3か月前。完全に「しごつかぽよ(※1)」になってしまった私は有給休暇をとって二泊三日の四国旅行に行くことにしました
(※1)「仕事したくなさすぎだし完全に”働く”という行為に疲れたぽよ」の略。「~ぽよ」をつければギャルっぽくなると思っている可哀そうなアラサーOLがお送りします
香川でうどんを食べたり、徳島まで足を伸ばしてうずしおを見たり大塚国際美術館に行ったりと大変充実したスケジュールで四国を満喫していたのですが、帰る日の予定を何も決めておらず新幹線までの時間が結構あるということに気づいたので急遽「小豆島(しょうどしま)」に行くことに決めました
小豆島は、高松港からフェリーで1時間ほどで行ける香川県の離島です。調べてみると「エンジェルロード」と呼ばれる、恋人同士が手をつないで渡ると願いが叶うといわれているインスタ映えな道があったり、オリーブ公園といわれる名産のオリーブがたくさん植えられているきれいな公園などがあり、たいへんオシャレで若者に人気な島であるということが分かりました
しかし、帰りの時間を考えると島に滞在できるのは1時間程度。すべてを回るには時間が足りないので、目星をつけて1か所だけ行くことにします
場所的にも所要時間的にもちょうどよさそうなところ―――
『お猿の国』という場所を見つけました
自然動物園か~ 動物大好きだしちょうどいいな~と、気軽な気持ちで行き先を決定
曇天の空のもと、フェリー乗り場からタクシーで20分ほど山道を走り、私たちは『お猿の国』を目指したのです
第2章 お猿との対峙
フェリー乗り場の賑わいが幻だったのではと思えるほど、お猿の国に近づくにつれて人間の気配が消えていきました
入口に足を踏み入れると、刺されたら完全にヤバいタイプの虫が「ブオン」と耳をかすめたので、東京2020を意識したかのような見事な競歩で無事に入園
入ると「メガネ注意」という読む側に解釈をゆだねすぎて不安をあおる看板が出迎えてくれます
心のざわめきが止まないまま、園内の奥へと歩みを進めていきます
あたりを見ていてもあんまり猿いないなあと思いながら、角をまがった次の瞬間
猿だらけじゃろがい!
言葉遣いが荒くなってしまいすみません
だってこのあたり全部猿なんですよ
しかも、我々人間とお猿たちとを隔てる柵がないのです
そのへんではお猿の親子が毛づくろいをしたりとほほえましい光景も見えますが
なんかボスっぽいめちゃくちゃでかいヤツが完全に威嚇する形で奇声を発したりしている…
ていうか、いつの間にか背後にもお猿がいるし右にもたくさんいる、なんだろう、四方を軽く100匹のお猿に取り囲まれている…
怖い
自分に今までなかった"お猿に対する恐怖心"がこの瞬間完全に芽生えたということが手に取るようにわかる
人って、大量の猿を前にすると足が動かなくなるんですね
しかし、せっかく島までやってきて楽しめずに帰るのは嫌だ。恐怖心に蓋をして、さっそく「お猿の餌やり体験」を行うことにしたのですが……
ウオオオアアアアアア!!!!!!
デッケェ~猿が来てすべてを奪い取っていった!!!!
オワァ~~~~!
ちいちぇえ~猿がずっとすがりついてくる!!
デェエエエ~!
なんか目の前で唐突に毛づくろいが始まる!!!!
完全にお猿のペースに飲まれるヒト科の私たち
だってよく考えたらお猿はこの空間に100匹以上はいるわけで、人間はというと私と彼氏(現:旦那)の2名。さるかに合戦の舞台がこの『お猿の国』に設定されていたとしたら猿の圧勝であることは明白です
臼も牛の糞も仲間にいない弱小チームの私たちは「負け戦」であることを確信し、お猿たちに首を取られる前に帰路に着くこと決めたのでした
第3章 断崖絶壁
ほぼ"事故"と呼んで良いほど激しい餌やり体験を終えてお猿の国を後にしようとしたとき、どこからともなくものすごく大きな猿の声が聞こえてきました
結論から言うと、声の主はおばあさんでした
清掃用具を持っているおばあさんは、どうやらお猿の国で飼育員をしているようです
婆「こうしてるとね、森の中から猿たちが戻ってくるのよ キィーー!キイー!!!」
静かな山々におばあさんの鳴き声だけが響きました。なんの物音もしないし動物の気配もないため正直猿に伝わっているのか見当もつかない状態なのですが、優しそうなおばあさんの言うことなので「きっとそうなのだろうなあ」と全面的に信じました
婆「そういえば展望台には行った? キィー!!! 時間があるなら行ってみたほうがいいわよ」
私「展望台があるんですね」
婆「見晴らしがすごくいいからね、行ってみて損はないよ。キィーー! キイーーー!!!!」
私たちがいることを一瞬で忘れ、揺るぎない自分のリズムで鳴き続けるおばあさん
他人に流されない強い心の在り方を教わったところで、せっかくなので教えられた通り展望台を目指すことにしました
自然の中にある展望台、どんな感じなのか楽しみだな~と、木々に囲まれた道を元気に歩き始めました
~5分後~
全然展望台の気配がない
ずーっと森です。永遠森(とわもり)。永遠森 健一郎(とわもり けんいちろう)。64歳。孫が3人
架空人物のプロフィールを考え始めちゃうくらいに森でしかない
しかもなんか、道の傾斜が徐々に急になってきました。空もびっくりするくらい曇ってるし、帰りのフェリーの時間も気になり始めてきたので、どこかのタイミングで引き返すか……とあきらめかけたそのときです
「「展望台」」
あった・・・!!!!
見つけた瞬間、インディ・ジョーンズのテーマソングが頭の中に流れました
しかし、矢印の示す方向に進むと驚愕の光景が待っていた
ここ、「道」なの?
せっかく頭に鳴り響いたインディ・ジョーンズのテーマソングがフェードアウトしていきます
こんなに体のコンディションに左右される展望台ってある? ちょっと風邪気味だったら絶対にここでリタイアしていると思う
このご時世にバリアフリーの真逆をゆくそのロックな姿勢に興奮すら覚えてきました
覚悟を決め、負けずに進んでいきます
~3分後~
ここを登る?
もう一回確認したいんだけど、この先にあるのって「展望台」ですよね?
Tomorrow never knowsのミュージックビデオで桜井さんが歌ってた崖ではないですよね?
※参考画像
しかしここまで来て引き返すわけにはいきません
絶対に、展望台にたどり着くぞ! ウオオオオオ!!!
~2分後~
展望台だ!!!!!!!!!!!
当初想像していた展望台とは違うけど展望台だ!!!!!!
やっとたどり着いた展望台に感動を覚えつつ、期待に胸を膨らませて登ってみると……
ZEKKE~!(絶景)
マジもんの絶景に大声を出してしまいました
でも大声を出しても大丈夫。だって周りには誰もいないし。いたとしてもお猿だし。なんならおばあのほうがでっけぇ声出してたし……(全然関係ありませんが『絶景』と『でっけぇ』で韻が踏めるのでラッパーの方はご自由にお使いください)
崖を目の前にしたときはどうなることかと思いましたが、この絶景を見た瞬間に疲れも吹き飛びました
時間つぶしで来てみた『お猿の国』で、不覚にも旅の一番の思い出を手に入れてしまったのでした
みなさん(※)も小豆島に行った際にはぜひ「お猿の国」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか
(※)…足腰に自信があり、運動に適した服装をしている方
◆おまけ◆
高松市内で見かけた「あんまりゆるくないゆるキャラの名前ランキング」があったら上位に食い込むと予想されるキャラクター
以上
【本日の一曲】あのウミネコ / AL
ありがとうイン・ザ・スカイ