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会員制の粉雪

黒服に案内されソファに座ると、
すぐにドレスに身を包んだ美女がやってきた。
透き通る白い肌、長い手足、切れ長の目。

これは上玉だ‼

有頂天になっていると
「藤巻さんのご紹介ですね」と聞かれヒヤリとした。
実は、藤巻のことはよく知らない。
たまたま立ち飲み屋で意気投合し、朝まで飲み明かしたあと、
意味深な笑いと、「他言無用」との念押しと共に
この店を紹介されたのだ。

会員制の高級店だが、こんな美女が相手なら不満はない。
どうせ酒と女にしか使い道のない金だ。
俺は注がれるままに酒を飲み、得意になって自分語りをしていた。

「孤独なのね。きょうはサービスしてあげる」

女は潤んだ瞳で俺を見つめ、膝の上に跨ると、細い腕を首に回してきた。
首筋がヒヤリとし、酔いが覚める。まるで氷を抱いているようだ。
ガタガタと震えが止まらない。女を撥ね除けようとして、
俺は指ひとつ動かせないことに気が付いた。体が凍り付いているのだ。
助けを呼ぼうにも声も出ない。
目を見開いたまま固まった俺の顔に女が吐息をかける。

粉雪⁉

刹那、視界が真っ白になり、何も感じなくなった。



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