三日坊主のクレーター
「グエーッ!」
闇夜に怪鳥の鳴き声が響き渡る。きょうは”三日坊主”で、辺りはほとんど漆黒の闇だ。私は坊主様に見つからないように先を急ぐ。
この星の空には女神様と坊主様が存在する。昼間は女神様が空高く舞い上がり、世界を隅々まで明るく照らす。夜になると女神様は海の底で眠り、代わりに坊主様が夜空に浮かぶ。坊主様は両目をギラギラ光らせ、闇に乗じて魔物が地獄から這い出してこないように睨みをきかせる。
坊主様は元は高名な修行僧だったという。桁違いな法力を身に着けた末に闇落ちしたため女神様に首を刎ねられ、その首が女神様の眠る夜を守るようになったと伝えられている。
坊主様の目の光は30日周期で強くなったり、弱くなったりを繰り返す。きょうは光が弱まる"三日坊主"の日だ。魔物に出くわす危険が高いので外出は禁じられているのだが、確かめたいことがあり裏山までやってきた。密かに入手した望遠鏡を取り出し空を見る。
「そんな、嘘だろ……」
望遠鏡の先に映る坊主様の頭には無数の穴が穿たれ、魔物の大群が蠢いていた。
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