アベノミクスと交通誘導警備

1. 自社は今、経営の安定化のため施設警備や年間契約の駐車場警備の仕事の比率を上げることに努めている。

その成果もあり、一時その比率が3分の2を超え、今も5割5分前後を推移している。

2.(1) しかし、依然スポット契約が売上の半分近くを占め、その多くが交通誘導警備の仕事である。

特に自社の本社がある田舎の場合、交通誘導警備の大半は公共事業関連の仕事。

その公共事業に関してアベノミクスの影響もあり仕事量は増加に転じたものの、近年横ばい状態が続き、ついに29年度は7.0兆円と28年度の7.6兆円からマイナスになった。

同地域の同業他社程ではないが、ある程度公共工事の影響を受ける自社としてはアベノミクスどうしたと言ったところ。

(2)でもクラウディングアウトによる民間の投資減速を懸念しているなら、理屈としては納得できる。

クラウディングアウトとは国債を発行することにより、市中の金利が上がり、個人・企業の資金調達や住宅購入と言った民間の経済活動が抑制されることをいう。

今の時代、公共事業を行うために国は多額の建設国債を発行する。

市場に出回る国債の量が増えれば、その価格が下がる。

でも金利は国債の額面を基準に決まる。
例えば年金利10%の国債1枚が市場価格9万円でも額面が10万円なら金利が1万円となる。
そうなると実質的な金利は1万円÷9万円で約11%に上がる。

そして国債金利と市場の民間金利は通常連動しているので、例えば企業の借入金や家族の住宅購入のためのローンを組む時に、金利が上がってしまう。

結果、これじゃ計算に合わないよねとみんなが購入なり借入を控え、景気も冷え込む。

これがクラウディングアウトという現象。

3. 民間の投資や購買を促進させるために市中の金を増やし、金利を下げる金融政策と公共工事を発注することで需要を作り出し、失業率を減らす財政政策とのバランスを図りながら、景気を良くして、第3の矢である新たな産業の創出を狙っているのが安倍政権の経済政策といえる。

なので財政政策の副作用であるクラウディングアウトを如何にコントロールするかがアベノミクスの1つのポイントだと思われる。

今の都市部のミニバブルを持続させ、地方の公共工事を抑制しようとしているのではないかと僕は考える。

それが証拠に日銀はマイナス金利政策を打ち出したことからも伺われる。

(このマイナス金利政策とは黒田総裁がバズーカを打ちまくっているわりに、バブル期やデフレ期の記憶が強いのか企業がお金を借りてくれず、市中に金が出回らないことに対処するため、全国の金融機関が日銀に一定額を預ける日銀当座預金の超過準備額分にマイナスの金利をつけることで、力づくで金融機関が市場内にお金を投資するように誘導する政策である。)

4.(1) そう考えると、この交通誘導警備という仕事は土方の仕事と同じく、政治や国の財政政策に左右される仕事。

とりわけ上記のように金融政策と財政政策のバランス取りを核とするアベノミクスは交通誘導警備の仕事に大きな影響を与えている。

その国の財政がかなり苦しくなってきているといわれる。


複式簿記的に見ても、将来の社会保障関連の予算増加を考えると、とても消費増税ぐらいでは焼け石に水の程度もない無意味な悪あがきだろう。

(2)となると、高い確率で将来、公共工事の仕事は減る。

実際、新しく道路を作る必要性も低く、どちらかというと、今ある道路の補修がメインになるだろう。
となると動く額が大きく減る可能性も高い。

他方、警備業者の数は4,5年前から全国でだいたい2百から3百社増えている。

東京オリンピック後に淘汰が始まるだろう。

その際、交通誘導警備に依存している会社は大きな打撃を食らう。

その環境の中で生き残るためには、施設警備の仕事を増やす必要がある。


現金輸送やボディーガードは市場が小さすぎる。やるにしても施設警備のオマケ的なものにすぎない。

あとそれだけじゃ不十分なので新たな事業を立ち上げなきゃいけない。

さてどうするか。焦りは禁物だが某司法試験予備校の有名講師のおっしゃるように〝ゆっくり急げ!〟といったとこか。

もうその時期に来ていると思う。

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