外部環境の分析を通して見えたもの

警備業界の外部をめぐる経営環境(以下、外部環境)はここでしばしば述べて来たが、ここでそれをPEST分析を行って、一旦まとめてみようと思う。ただすべて挙げると切りがないので重要な事実だけ挙げる事とする。

1. PEST分析とは政治的な規制といった政治的要因PoliticalのP、世界・国内経済の状況といった経済的要因EconomicalのE、少子高齢化などの社会的な潮流といった社会的要因SocialのS、技術革新の流れと言った技術的要因TechnologicalのTの4つの観点から外部環境を分析していく手法である。

(1)まず政治的要因のPについて

まずこの秋にある最低賃金の値上が上げられる。労働者保護の観点から設けられた施策であるが、人件費に直結するものだけに打撃を食らう業者も多いのではないかと思う。

また来年の消費税値上の問題もある。基本的に消費税分は持ってくれる取引先が多いとは思うが、そうでないところもそれなりにあり、不安要因ではある。


さらに、上記の消費増税と絡む問題だが、政府の借金増加による公共事業数低下の問題がある。

日本の財政を複式簿記的に見れば相当な資産があるので財政はそこまで悪くないという意見があるものの、一般に政府の借入金は1000兆、GDP比200%を超えており、団塊の世代の後期高齢者化により、社会保障関連の経費増加が今後さらに加速していくことを考えると国家財政は悪化していくと考えるのが現実的といえる。となると公共事業の規模は今後縮小していき、交通誘導警備の仕事も減って行く可能性が極めて高いといえよう。

(2)次に経済的要因のEについて。

まず、東京オリンピック工事に伴う仕事量の増加が挙げられる。特に首都圏の業者にとっては有り難い話だと思われる。

また、後で述べる人手不足問題とも絡む問題だが、警備業の需要の増加というよりは警備員の成り手の不足により、警備料金の値上がりが最近、都市部だけでなく地方にも及んで来ている。特に交通誘導警備は成り手がない。

ただ東京オリンピック以降は現在日本経済のよき消費者層である団塊の世代が後期高齢者になって死亡率が高まり、人口も減少すること、日本の観光資源の買い手であった中国経済も怪しくなってきたこと等考えると将来的に日本経済も中・長期的には今より下がって行く可能性が高いといえる。

(3)次に社会的要因のSについて。

まず挙げられるのが少子高齢化。これにより、企業の働き手が不足するという人手不足問題が生じる。その結果、警備業みたいな人がいて成立する仕事はその確保のために価格を上げて行かないといけないのに、立場上その価格分を取引先に転嫁しにくく倒産の憂き目にあう業者もでてくる始末となる。ただ転嫁しにくい状況も変わりつつあることは先に述べた通りである。

また日本における外国人労働者の増加が挙げられる。

厚生労働省によれば平成29年10月末の段階で約128万人と届出義務化された平成19年以来過去最高を記録したとのこと。

現に自分が話した何名かの警備業者は特に交通誘導警備で外国人の導入を真剣に検討していると言っていたのを思い出した。

施設、特に田舎の施設警備に外国人をいれると、高齢の施設利用者がおびえるなどの問題点があるので、導入しにくいとは思うが、交通誘導は基本的にユーザー対応は必要ないので導入の余地ありといえる。

また城崎など外国人観光客が多いところでは、英語だけでなく日本語も堪能な外国人を雇うことも将来的には検討の余地ありと思う(もちろん取引先の了解を得た上でだが)。

(4)最後に技術的要因のTについて。

これについては、AI,ブロックチェーン、IoTといったテクノロジー、ロボット技術の劇的な進化が挙げられる。特にこのブログでしばしば述べて来た事なのでその詳細については前のブログを参照していただきたいと思う。

これがうまく機能すれば、上記の人手不足問題はある程度解決するし、外国人に頼る必要もない。

ただ、この普及により、中小零細の仕事は減って行く可能性が高い。

2. これらの事実をどうとらえるかは、結局各警備会社の方向性によって変わってくると思う。

では自社の場合、これらの事実をどうとらえるか?

自社の場合、それらの事実を企業理念を基準として評価する。

自社の企業理念は「本物の警備を提供して日本における警備業の在り方を変える」である。

警備員が日本人であれ、外国人であれ、はたまたロボットであれ、彼らが彼らなりに、質の高い警備サービスを提供してくれるなら、それは本物の警備を提供すること、と評価できる。

そのサービスによって警備料金が上がり、警備員になりたいと思う人がふえるならそれは日本の警備の在り方を変える事に貢献したということになる。

この観点からいえば例えば労働市場の需要と供給の関係で値上がった警備料金の値上は他の会社はともかく自社にとってはプラスにはならない。むしろ外国人労働者の増加やテクノロジーの進化の方がプラスになるのかもしれないし、またそうしていく気概がないといけない。

もちろん、その上で権限を国から与えてもらう必要もあるのかもしれない。

ただ基本的に回りに起きる外部の変化を冷静に把握し、それを自社の企業理念によって解釈し、熱い思いで自律的に行動して行く姿勢が大切なのだとこの分析をしていく中で思った次第である。



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