名著「失敗の本質」に学ぶ

1.(1)「来るもの拒まず去る者追わず」という言葉は人事における心得の一つにしているが、そろそろその考え方を見直す時期に来ているのかもしれない。

(2)A 最近自社には新たな従業員が次々入ってくる。

その一方、たまに出て行くものもいる。

出ていくものの原因にはいくつかの要因がある。

その中で、特に高齢の転職者に比較的多いのが、前の職場の価値観や考えに染まりすぎて自社に馴染めないというもの。

B 例えばこの前、辞めていった者は某大手企業1社を勤め上げた実直な方だった。

経歴も考えも「本物の警備」という自社の理念に合致する人物だと思い採用した。

ただこの方は今まで勤めていた会社で培われた価値観に縛られ、どうしても自社に馴染めなかった。

その一方で、彼と同じ企業出身の方でもウチに馴染んでいるものもいる。

2.(1)結局、その違いは柔軟性にあると思う。

もちろん今まで培ったものはどこへいっても必ず何らかの形で役に立つ。でも環境が変われば、当然身の処し方も変わる。

そういった姿勢は普通、年を取れば取るほど巧みになるものだが、逆にひらすら頑固一徹になりすぎる方もいる。

この後者の柔軟性の欠如は、大げさに言えば、艦隊主体の時代で日本海海戦の勝利という日露戦争の成功体験が艦隊決戦思想を生み、それが情報戦・空中戦の二次大戦時代になっても変えられず敗北を喫した日本海軍の環境に適応し過ぎた悲劇に起因するのかもしれない。

名著「失敗の本質」で指摘されていることである。

つまり過去の成功体験によって培われたプライドが後者から柔軟性を奪うのだろう。

(2)同じことは日本の製造業でもいえることかもしれない。

今、池井戸潤原作の下町ロケットがテレビで放映され、好評を博している。

僕は基本的に池井戸潤氏の作品は大好きだし、日本のモノづくりは今でも世界に誇るものだと思う。

でも、作家の村上龍氏曰く、本当に日本のモノづくりが世界を席巻していた時には、こういったモノづくりがメディアで喧伝されていなかったと。

戦後、日本はいいものを作れば売れる時流に乗り、持ち前の勤勉さもプラスに働いて世界有数の経済大国になった。

でもその時の成功体験がモノづくり信仰を生み、ITやAIの時代になっても、それを虚業と軽視し、頭の固さも邪魔して時流に乗りきれずにいる。

3.思うに艦隊決戦思想やモノづくり信仰自体は悪くない価値観だと思う。

でも問題なのは、その理念なり価値観に引っ張られて現実から目を背けたり軽視して、宗教的とも言える根拠なき精神論に走ってしまうことだと思う(同じことは9条信者の場合にも言えるのかもしれない)。

大切なのは「今」に向き合うということ。

それが本当の意味で自分の理念なり価値観を大切にすることだと思う。

下町ロケットの言いたいことはそういうことなのだと思う。

4.今、特に施設警備において自社に採用希望者がそれなりに現れている。

今までは人手不足もあって、広く人を入れてきた。

でも最近、採用段階で人を選別していく流れになってきつつある。

中には若い人もいるが、多くは高齢の方。

これからは真面目さの他に柔軟性があるかどうかも注目していきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?