警備の“レモン”化を防ぐには

1.  季節の変わり目だからだろうか。今風邪を引いている。経営者たるもの自己管理が大切なので情けない限り。せめて今週末の隊長会議までには直さなければ。

そんな風邪に悩まされている自分だがそんな時、ほっとレモンを飲むと落ち着く。風邪の時にレモンのビタミンCが体によいからというのもあるが、自分の中でレモンと今の止まっている感じをつなげるのが好きだから。

その連想の材料は梶井基次郎の「檸檬(レモン)」。この小説を読むと司法浪人時代を思い出す。社会にとけこめない停滞期が醸し出すある種の甘美さ。昔誰かが言っていたけど、この小説は意味じゃなくて匂いなんだろうなあ。

芥川龍之介の作品もそうだが、こういうクラシックな作品の良さと言うのはある程度、人生経験を積んでから分かるのかもしれない。学生時代は全く分からなかった。また学校のテストが悪くて分りたくもなかった(笑)。

2.  そんなレモンだが、経済学的にはあまりよい意味で使われないらしい。

質の悪いものは一般にレモンと呼ばれるが、それがレモンかどうかについて売り手よりも買い手の方が少ない情報しか有していないことを性質に関する情報の非対称性という。

そしてそれが存在する場合には、買い手はその商品についての善し悪しがつきにくい。なので例えば値段の高いA,値段の低いBという商品がある場合、Aがレモンかどうかを買い手は判断できないために、損を避けるためレモンだが、値段の安いBを選択しがちとなり、結果、市場には質の悪い商品が出回ってしまう現象である逆選択と呼ばれる問題が発生する。

この逆選択という状況はまさにここで何度も述べているようにかつての価格競争の中で警備業界で起きてきたことだし、現在もそれが解消されていない。

3. (1)これを防ぐにはまず、第3者の介入が必要。警備でいえば、警備協会が警備の善し悪しにつき、格付けを行うといったようなことが必要。

(2)次に情報を持っている主体が持っていない主体に、見える化を行う等して自ら情報を伝えるシグナリングが必要。警備でいえば、隊員に国家資格である警備検定をとらせて取引先のお客様に警備の質が保障されていることをアピールするといったことが必要。

(3)さらにセコムやアルソックのように大規模に商圏を広げ、広告をうつなどして世間的な知名度を上げる事でこの会社なら大丈夫と思わせる標準化が必要。

(4)あとは情報を持つ側が情報を開示したくなるようにいくつかコースを設定するなどしてその仕組みをつくる自己選択メカニズムも必要。

(5)さらには場合によっては、最低価格保証制度などの政府の規制も必要なのかもしれない。

こういった取り組みを地道に行うことで警備のレモン化を防止することができると思うのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?