自作詩『雨音』
『雨音』
しめった空に雨雲がぶらさがる
夏の午後
ネコのあくびひとつで
崩れ落ちそうな雨の気配に
急かされる家路
玄関を開けて明かりをつける
大気が溢れて空が鳴る
ほっとして坐って菓子パンをほおばる
ささやかな昼時
パンのくずがこぼれて落ちて
大きな雨粒が
ゆっくりと
地面をたたきはじめる
あぁ濡れずにすんだ……と
誇らしげにパンを齧る
薄墨の滲んだような町に
ふと
子どもたちの声が響く
不安も見栄も失敗もない声が
雨降りの路地で跳ねている
びしょ濡れになってもかまわない
いまは
雨なのだから
夏の午後
ネコは眠り
雨が降っているのに
パンを食べ終えた私は
なんだかもったいない気がして
満たされない音を聞いていた
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